2015年の難民のEUへの移動とそれをめぐる困難に顕著に見られるように、グローバル化した世界では人権問題がこれまで以上に深刻なかたちで提起されている。
国際貢献には自己犠牲がともなうが、人権を擁護するために日本人はどのくらいの犠牲を払う準備があるだろうか
本書は、「人権と人間の尊厳」「法と道徳」「人権と政治」という観点から、
人権概念を哲学的に問い直す、意欲的な一冊。
目次
第一部 人権と人間の尊厳
第一章 人間の尊厳の媒体としての人権 /寺田 俊郎
「水平社宣言」から百年近く
「権利」という訳語
人権のプラグマティクな正当化
人権と人間の尊厳の関係
人権と世界市民の哲学
第二章 人間の尊厳と人権 /マティアス・ルッツ=バッハマン(浜野喬士/訳)
〈人間の尊厳〉の二つの次元
〈人間の尊厳〉原理に対する、カントの
寄与
今日の議論に向けて
第二部 人権をめぐる法と道徳
第三章 人権は道徳的権利か /アンドレアス・ニーダーベルガー(中村信隆/訳)
人権の哲学的理論と既存の人権体制
人権の道徳的理論と修正主義の
問題
人権のより包括的な概念とその不確定性の問題
人権のために
哲学は何ができるか
第四章 道徳的権利ではなく、法的権利としての人権について /舟場 保之
道徳的自己承認と人権への権利
ヘッフェへの反論/ケーラーへの反論
アーぺルによる批判とハーバーマスによるEU論の射程
第五章 カントにおける法と強制 /石田 京子
動機としての強制
法の概念と矛盾律に従って結びついている強制
法と相互強制
法の概念の構成
第三部 人権と政治
第六章 共和国、あるいは人間であるための空間
――カントの「甘い夢」とその影―― /隠岐 理貴
はじめに
「共和国」という「夢」?
「消し去ることができない不死の犯罪」
真理の試金石としての思考伝達の自由
公衆とともに見続ける夢
第七章 カントと「改革」の問題 /御子柴 善之
はじめに
『宗教論』第一編における「革命」と「改革」
政治における
「改革」の概念
適法性と道徳性との区別を再考する
政治における信頼の意義