複雑怪奇な「史料の森」を探索する歴史家の営みと、
その醍醐味を伝える「歴史家シリーズ」第四弾!
史学研究者15名が、碑文、伝承、書簡、古地図、絵画、建造物など様々な史料を取り上げ、歴史探究の基本となる史料との向き合い方、読み取り方をひもときます。
■本シリーズの既刊書ラインナップ
・『歴史家の工房』[本体1,600円/2003年]
・『歴史家の散歩道(プロムナード)』[本体1,524円/2008年]
・『歴史家の窓辺』[本体1,600円/2013年]
■書名に込めたメッセージ
「調弦」の辞書的な意味は、演奏家が本番前に曲目の性格や特徴に合わせて、弦楽器の音律や音色を整える行為を指します。歴史家の仕事にもこれとよく似た側面を含んでいます。歴史家が作品を紡ぎ出す過程、あるいはその前段階で実はさまざまな工夫や配慮、つまり下ごしらえを行っています。使用する史料の有効性と限界を慎重に見極める地道な作業もその一つです。……本書では、そこに光をあて、初学者や一般読者にも分かりやすく、歴史家の最先端の仕事を題材にして手の内を明かしながら解説しています。……本番を前にした舞台裏で、「調弦」に集中する演奏家たちの緊張した面持ちを想像しながら、本書を読んでいただければ幸いです。(「序にかえて」より)
■目次
〈日本史〉
●せめぎあう環境/文化―伊豆稲取八百比丘尼の深層へ(北條勝貴)
●『狩詞記』の史的位置―故実書から探る室町時代の武家文化(中澤克昭)
●大航海時代の日本認識―未知の国から16世紀グローバル経済の主役へ(川村信三)
●台湾の「親日」の源流を探る―日本の台湾統治50年とその後の再考察(長田彰文)
●第二代、第七代上智学院理事長クラウス・ルーメルの見た学生運動
―上智大学史資料室所蔵資料を用いた学生運動研究の可能性(堅田智子)
〈東洋史〉
●「酢を飲む」妻と恐妻家―唐・宋時代の「小説」史料から(大澤正昭)
●清末中国の公使接見儀礼―皇帝権威の誇示と失墜(宮古文尋)
●国民の義務として兵士になるという憂鬱―1950年代半ば、義務兵役制の導入と上海の青年たち(笹川裕史)
●地域・時代のなかの巡礼経験/地域・時代を超える巡礼経験
―リチャード・バートンの『アル=マディーナとマッカへの巡礼私記』を読む(安田 慎)
〈西洋史〉
●人間アウグスティヌスを『告白』から探る(豊田浩志)
●「記憶の断罪damnatio memoriae」―史料から見る古代ローマの名誉と不名誉(中川亜希)
●祈りを必要とする教皇たち―中世における教皇の死とメモリア(藤崎 衛)
●絵画から読み解くフランス宗教戦争(坂野正則)
●ドイツ人かユダヤ人か
―ヴァルター・ラーテナウ「聴け、イスラエルよ!」に見るアイデンティティの衝突(吉野恭一郎)
●両世界大戦における開戦の契機をめぐって(中井晶夫)
■編著者プロフィール
上智大学文学部史学科/編