「デカセギ」現象から四半世紀。ディアスポラ日系ブラジル人の生き方とは。
日系ブラジル人が就労者として来日するようになって四半世紀を迎え、この間に日本での滞在期間は長期化してきました。とはいえ、ホームランド(ブラジル)との関係を絶って日本で生活するのではなく、ホームランドとは何らか関係を保ちつつ、ホスト社会(日本)で生活するのが、日本のブラジル人就労者とその家族です。
本書では、ブラジル及びペルーで調査経験がある歴史学、経済学、教育学、社会学、宗教学、人類学の各研究者と、地方自治体の現場で外国人政策にかかわる担当者が、日本におけるブラジル人就労者の生活及び日本社会の多文化主義の実態について、多面的、かつわかりやすく解説しています。
輸送・情報・コミュニケーション手段の迅速化・低廉化が促した国際的な「人の移動」を通じて、国家という枠組みにとらわれない人の生き方や社会文化的様相を探ります。
目次
概観
1 ブラジル人のディアスポラと日本のブラジル人(三田千代子)
企業と地方自治体
2 日本企業の雇用政策と日系人労働(小池洋一)
3 地方自治体と日系ブラジル人―関東、東海、関西
〔1〕外国人集住率が一五%を超える大泉町(加藤博惠)
〔2〕多文化共生社会に資する地域の取り組み―浜松の事例(堀永乃)
〔3〕経済危機以降の日系人の就労と生活の変化―滋賀県の場合(高木和彦・松尾隆司)
学校と教会
4 在日ブラジル人の子どもたちの教育とブラジル人学校(拝野寿美子)
コラム 日系ブラジル人の移動とアイデンティティ形成―学校教育とのかかわりから(山ノ内裕子)
5 デカセギ・ブラジル人の宗教生活―エスニック・ネットワークの繋留点としてのブラジル系プロテスタント教会(山田政信)
コラム 到来したブラジルの宗教(三田千代子)
生活戦略
6 在日ペルー人の生活戦略―在日ブラジル人との比較を通じて(柳田利夫)
7 在日ブラジル人第二世代のホームランド―自ら選びとる「生きる場所」(拝野寿美子)
概括
8 ホスト社会とホームランドを生きる外国人就労者―アンケート調査を中心に(三田千代子)
編著者紹介(肩書は発刊当時、敬称略)
三田千代子/上智大学外国語学部教授・博士(社会人類学)
小池洋一/立命館大学経済学部教授
加藤博惠/群馬県大泉町役場企画部国際協働課主幹
堀永乃/公益財団法人浜松国際交流協会主任
高木和彦/(特活)多文化共生マネージャー全国協議会副代表
松尾隆司/群馬大学教育学部附属学校教育臨床総合センター助教・修士(国際文化学)
拝野寿美子/神田外語大学国際言語文化学科非常勤講師・博士(教育学)
山ノ内裕子/関西大学文学部准教授・博士(教育学)
山田政信/天理大学国際学部准教授
柳田利夫/慶應義塾大学文学部教授