コルネイユは、ラシーヌ、モリエールと並び称される17世紀フランス古典主義の劇作家です。
2006年11月11〜12日の二日間にわたっておこなわれたソフィア国際シンポジウム「コルネイユと古典主義演劇」は、ピエール・コルネイユという作家と、フランス古典主義演劇の魅力を多様な面から浮き彫りにしました。
本書は、このシンポジウムに沿って、作品を同時代的文脈から読み解くこと、他国の文学が劇作家に及ぼした影響と彼らの他国における受容の問題を扱うこと、そしてさらには劇作品上演の問題と新たな解釈の可能性についての三つの側面から、コルネイユを検証するものです。
さらに、全体を俯瞰しコルネイユという作家を考察する意義を説く巻頭論文等をつけ、これらを通してコルネイユの劇作品は「規範と自由」について常に斬新な問題提起をしていることを明らかにします。
目次
・まえがき
1 フランス古典主義とコルネイユ
・コルネイユと諸矛盾の問題
・コルネイユと仕掛け芝居
・コルネイユと教会──倫理と劇作法
・コルネイユの「小さな悲劇」──『舞台は夢』五幕三場の分析
・燃える洪水──『ティットとベレニス』について
2 世界とコルネイユ
・コルネイユ──イタリアの影響、またはアリストテレスをめぐる大混乱
・舞台における死──コルネイユと絶対悲劇
・怪物的なもの、常軌を逸したもの──レッシングによるコルネイユ像、レッシング後のコルネイユ像
・日本最初の『ル・シッド』翻案『鎌倉武鑑』について
3 現代のコルネイユ
・フランスにおけるピエール・コルネイユの劇作品の演出
・コルネイユ・フランス古典主義演劇と日本
・資料・日本におけるコルネイユ受容──フランス古典劇の翻訳――コルネイユを中心に
・あとがき
・コルネイユ年譜・関連年表
・コルネイユ関係主要参考文献
・編者・執筆者紹介
・索引
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編者紹介(肩書は発刊当時、敬称略)
小倉博孝…おぐら・ひろたか/上智大学文学部フランス文学科教授