遺伝子解析やクローン技術など、ヒト由来試料を用いた研究から生じる「倫理的問題」とは何か。
法学からのアプローチにより、現実的な規制枠組みの確立を目指すシリーズ第二弾。
第一弾(「ヒト由来試料の研究利用」2009年5月発刊)は、先進外国のバイオバンク事業を俯瞰した総論的なものでした。
それを踏まえ、本書は、ヒト由来試料の取得・保管・分配という具体的な問題に焦点を絞り、特に移植用臓器提供の際のバイオバンク事業の構想について医学研究・倫理・法など各界専門家の意見をまとめたものとして発刊します。
バイオバンクとは…
オーダーメイド医療の実現化に向けた研究を目的として、約30万人のDNAおよび血清試料を集めるプロジェクトのこと。
2003年に文部科学省の「オーダーメイド医療実現化プロジェクト」が発足し、実施にあたっている。
集められた遺伝子情報は生活習慣病などの病気と、遺伝子の個人差との関係の解明を目的に分析研究されているが、遺伝子情報を集めることによるプライバシー保護の問題や、倫理的問題などが議論となっている。
目次
・はしがき(雨宮浩)
・バイオバンクの研究─序説に代えて(町野朔)
1 特定非営利活動法人HAB研究機構――移植用臓器提供の際の研究用組織の提供・分配システムの構想に関する準備委員会報告書
2 意見書集
・実験動物の法的・倫理的位置と実験目的によるヒト由来物の利用(嶋津格)
・ヒト組織研究利用の法的・倫理的背景(町野朔)
・移植用臓器提供の際の研究用組織の提供・分配システムの構想(雨宮浩)
・製薬企業でのヒト組織研究利用の現状と将来展望(池田敏彦)
・研究用組織の提供・使用に関わる法令、ガイドライン(辰井聡子)
・心停止後の移植用臓器提供時における研究用組織提供にかかる諸問題(絵野沢伸)
・病理学検体、法医学検体組織提供の可能性(木内政寛)
・組織のバンキングとディストリビューション(小幡裕一、中村幸夫)
・提供組織の法的性格(丸山英二、宇都木伸、隅藏康一)
3 研究用組織提供作業手順
4 資料編
・あとがき(鈴木聡)
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編者等紹介(肩書は発刊当時、敬称略)
町野朔…まちの・さく/上智大学法学研究科教授
雨宮浩…あめみや・ひろし/国立小児病院名誉センター長
嶋津格…しまづ・いたる/千葉大学理事、大学院専門法務研究科教授
池田敏彦…いけだ・としひこ/三共株式会社薬剤動態研究所元所長
辰井聡子…たつい・さとこ/明治学院大学法学部准教授
絵野沢伸…えのさわ・しん/国立成育医療センター研究所室長
木内政寛…きうち・まさひろ/千葉大学名誉教授
小幡裕一…おばた・ゆういち/(独)理化学研究所筑波研究所所長
中村幸夫…なかむら・ゆきお/(独)理化学研究所筑波研究所バイオリソースセンター室長
丸山英二…まるやま・えいじ/神戸大学大学院法学研究科教授
宇都木伸…うつぎ・しん/東海大学大学院実務法学研究科教授
隅藏康一…すみくら・こういち/政策研究大学院大学准教授