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スクールリーダーの資料室 Education 2030 OECD Education 2030プロジェクトについて(日本語仮訳) 2018年2月 OECD(経済協力開発機構)

NEWトピック教育課題

2020.02.07

幅広い教育目標の必要性:個人のウェルビーイングと集団のウェルビーイング2

 無目的な行動を続けていれば、科学技術の急激な進歩は、格差や社会的不安定さを拡大し、資源の枯渇を加速させることになろう。21世紀に入り、こうした目的はウェルビーイングの観点から定義されることが増えてきた。しかしながら、ウェルビーイングは、所得や財産、職業、給料、住宅などの物質的な資源へのアクセス以上のものを含む概念であり、健康や市民としての社会参画、社会的関係、教育、安全、生活への満足度、環境などの、生活の質(QOL)にも関わるものである。これらへの公平なアクセスは、社会全体の包摂的な成長を下支えするものである。

 教育には、包摂的で持続的な未来を作り上げていくことに貢献し、またそこから恩恵を受けることがてきるような知識やスキル、態度及び価値を育成していくという極めて重要な役割がある。これからの数年で、明確で目的のはっきりした目標を立てるように学ぶこと、異なる考え方を持った人々と協働すること、まだ利用されていない機会を見つけること、重大な課題に対する複数の解決策を把握することなどが、不可欠な能力となるだろう。若者を教育するのは、働くための準備をすることだけが目的ではない。前向きで、責任ある行動をとることができる、積極的に社会参画することができる市民となっていくためのスキルをつけなければならないのである。

学習者のエージェンシー3:複雑で不確かな世界を歩んでいく力

 将来に向けて準備ができている生徒は、自らの教育や生活全体を通して、エージェンシーを発揮していく必要がある。エージェンシーは、社会参画を通じて人々や物事、環境がより良いものとなるように影響を与えるという責任感を持っていることを含意する。また、エージェンシーは、進んでいくべき方向性を設定する力や、目標を達成するために求められる行動を特定する力を必要とする。

 エージェンシーの発揮を可能としていくためには、教育者は学習者の個性を認めるだけではなく、例えば、教師や仲間たち、家族、コミュニティなど、彼らの学習に影響を与えているより幅広い関係性を認識する必要がある。この学習枠組みの基礎となる概念が、「共同エージェンシー」であり、すなわち、学習者が目指す目標に向かって進んでいくことを支える、双方向的で互恵的な協力関係のことである。この文脈では、誰もが学習者とみなされるのであり、それは生徒だけでなく、教師や学校管理職、保護者やコミュニティの人々も含むものである。

 学習者のエージェンシーの発揮を可能にするためには、二つの要素がある。一つは、生徒一人一人が自分の情熱を燃やし、別々の学習経験や機会をつなげて考えるようになり、他者と協働しながら自分自身の学習プロジェクトや学習過程を計画することを支援したり、そうする動機づけを与えたりするような、一人一人にカスタマイズされた学習環境である。もう一つは、しっかりとした基礎力をつけることであり、読解力や数学力は依然として極めて重要である。ビッグデータの活用が始まるデジタル情報の時代において、デジタル情報やデータを使いこなす力は、心身の健康と同じように、不可欠なものとなっている。

 OECD Education 2030のステークホルダーは、若者が、どのようにして自らの人生や世界を歩んでいくのかを示す「学びの羅針盤」を共同で作り上げてきた。

行動に移すことができるような、知識、スキル、態度及び価値の幅広いセットの必要性

 将来に向けて最も準備ができている生徒は、変革の主体となる生徒である。彼らは周囲に対してポジティブな影響を持ち、将来に影響を与え、他者の意図や行動、感情を理解し、自分たちが行うことの短期的及び長期的な帰結を予測することができる。コンピテンシーの概念は、単なる知識及びスキルの獲得以上のものであり、複雑な要求に応えるために知識やスキル、態度及び価値を動員することを含む。将来への準備ができている生徒になるためには、幅広い知識と専門的な知識の両方が必要とされる。新しい知識が創出される要素として、学問分野の知識は今後も引き続き重要であると考えられるが、同時に、学問分野を超えて考え、「点をつなぐ」能力も重要である。例えば、数学者や歴史学者、科学者のように考えるにはどのようにするかといった認識論的知識あるいは学問に関する知識も、学問分野の知識を拡張することを可能にするものとして、また重要になる。手続き的知識とは、物事がどのように行われたり作られるのかを理解したりすることによって獲得されるものであり、目的を達成するためにとられるべき連続したステップや行為のことである。手続き的知識の中には領域固有なものもあれば、領域を超えて転移可能なものもある。典型的には、デザイン思考やシステム思考のように、実践的な問題解決を通して育成される。

 獲得した知識は、未知な状況や変転する状況において適用されなければならない。そのためには、認知スキルやメタ認知スキル(例えば、批判的思考力、創造的思考力、学び方を学ぶ、自己調整)、社会的及び情意的スキル(例えば、共感、自己効力感、協働性)、実用的及び身体的スキル(例えば、新たなICT機器の利用)を含めた幅広いスキルが求められる。

 より幅広い知識とスキルの活用は、態度及び価値(例えば、意欲、信頼、多様性や美徳の尊重)によって媒介される。態度及び価値は、個人、地域、社会、世界の各レベルにおいて見られるものである。人々の生活は、異なる文化的展望や個人的な特性に由来する価値や態度の多様性によって豊かなものとなるが、その一方で、決して妥協することが許されない人間的価値も存在する。そうした例を二つだけ挙げるとすれば、生命や人間の尊厳の尊重、環境の尊重といったものである。

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