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スクールリーダーの資料室 昭和26年学習指導要領を読んでみよう(上)

トピック教育課題

2019.10.11

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昭和26年学習指導要領を読んでみよう(上)

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.3 2019年7月

 今回の学習指導要領改訂に少なからず影響を与えたと言われる昭和26年「学習指導要領(試案)」。ここには、資質・能力の育成やアクティブ・ラーニング、「社会に開かれた教育課程」につながる多くの示唆が読み取れる。

 昭和26年は、サンフランシスコ平和条約が締結され、日本が主権を取り戻した年であり、日本初の民間放送ラジオ局の開局、第1回プロ野球オールスターや紅白歌合戦の開催、プロレスの力道山のデビューなど、新たな時代を感じさせる世相の中、新国家建設に向けた教育界からの提言として、文部省から出されたのが、この試案だ。

 今回は、「一般編」の中から「1.教育の目標を定める原理」と「Ⅲ 学校における教育課程の構成」の「1.教育課程とは何を意味しているか」「2.教育課程はどのように構成すべきであるか」を掲載する。

 「1. 教育課程とは何を意味しているか」では、教育課程は「教師と児童・生徒によって作られる」とし、「両親や地域社会の人々に直接間接に援助されて、児童・生徒とともに(中略)つくられなければならない」と、「社会に開かれた教育課程」につながる考えを提起している。

 また、「2.教育課程はどのように構成すべきであるか」では、教育目標に触れ、「児童・生徒の必要、社会の必要をとらえて、それぞれの学校の教育目標を具体的につくる必要がある」と述べている。

 「(2)児童生徒の学習経験の構成」では、「(a)望ましい経験の性格」で、児童・生徒は「既往の知識・経験を生かし、さらに、他の知識を求めたりすることによって、環境に働きかけることになる」とし、「他の知識は自分のものとなり、新たな経験が、自己の主体の中に再構成され、児童・生徒は成長発達していく」と述べている。また、「(b)学習経験の領域」では、学習を進める上で、「問題を分析すること、推理することなどの技能を学習する機会を用意すべき」として「これらの技能が高度に発達すればするほど、各個人は、豊かな知識を習得し、生活の問題についての理解を深めることができ」ると指摘する。

 実生活に基づいた真正の学習と、主体的・協働的な探究型の学習を求めたものといえよう。

 さらに、「(e)単元の作り方」では、「児童・生徒の関心・欲求・問題などが重視され、それらが学習の計画において大きな役割を果している」と述べ、単元計画をつくる上での重要なポイントとして、社会や自然についての諸概念を児童・生徒に理解させること、児童・生徒の欲求などについての事前調査をすること、それをもとにどのような単元構成を立てるかということ、学習活動の展開に合わせた活動場面を用意することを指摘。単元づくりのために考慮する点として、単元の目標を明確にし、単元の学習によってどのような望ましい知識・理解・態度・習慣・技能・鑑賞が身に付けられるべきかがはっきりと考えられていること、児童・生徒自らが主体的に目的を立て、計画・実施し評価する一連の学習過程を構成すること、児童・生徒が建設的に協力して問題解決する雰囲気をつくること、個人・集団での表現活動を数多く用意することなどを求めた。

 この試案は、現代に照らしても決して色褪せていないばかりか、新学習指導要領を読み解く上で、大いに参考になろう。

 次代には、Society5.0、シンギュラリティといった社会が待ち構えている。この予測のつかない新しい時代に向けて、子供たちに、どのように資質・能力を育てられるか。新国家建設に向けた26年版指導要領(試案)から、私たちが捉えておくべき課題やこれからの取組に向けたヒントを探りたい。(編集部)

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