スクールリーダーの資料室

ライブラリ編集部

スクールリーダーの資料室 昭和26年学習指導要領を読んでみよう(上)

トピック教育課題

2019.10.11

(e)単元の作り方

 右に述べたように単元による学習においては、従来と異なって、児童・生徒の関心・欲求・問題などが重視され、それらが学習の計画において大きな役割を果していることが指摘される。このような学習に伴う一つの不安は、学習の過程において、あまりにも、児童・生徒の関心や欲求が重視されやすいので、指導が散漫となり、徹底しないということである。このような不安があればこそ、単元の作り方、あるいは単元の計画ということが、非常にたいせつな問題となってくるのである。

 単元の学習によって指導の目標が達成されるためには、学習指導に先立って教師は、事前の計画をじゅうぶんにたてておく必要がある。事前の計画として教師のなすべきこととしては、おおよそ次のようなことである。

(ⅰ)単元の学習によって、どのような重要な社会や自然についての諸概念を、児童・生徒に理解させるべきかについて、あらかじめ考えること。すなわち、単元の指導の目標をはっきりさせておくこと。

(ⅱ)単元の主題に関連して、児童・生徒は、どのような関心や、欲求や、問題をもっているかについて予備的な調査を行ない、それをはっきりとらておくこと。

(ⅲ)それに従って、児童・生徒のどのような欲求や問題をとらえて、その単元の学習に導いていくかという導入の方法についての計画をたてること。

(ⅳ)単元の学習がどのような順序で展開していくかについて予想する。すなわち、学習活動が展開していくおもな筋道を考えておくこと。それとともに有効な学習の指導法について、あらかじめ考えておくこと。

(ⅴ)学習活動の展開に伴って、必要になってくるさまざまな資料や見学場所や学習に利用しうる施設、その他参考になるものを、調査し用意しておくこと。

(ⅵ)学習活動の評価の方法や、その機会を考えておくこと。

 このような事前の計画をじゅうぶんたてた上で指導に望まなくてはならない。

 さて、このような単元の計画は、個々の教師が、その地域や学校の実情、自分の担任する児童や生徒の関心・欲求・問題・能力などを考慮に入れて具体的にたてていくべきものである。しかし、すべての教師が、独力で単元をその根底から作っていくということは、きわめて困難なしごとである。したがって計画が適切にたてられないために、往々にして、児童・生徒のうちに実現されなければならない重要な概念や理解も、皮相にとどまって、その根底に入り得ないということが考えられる。

 そこに、個々の教師が、よく検討された豊富な単元の計画をたてるのに役だつ手がかりとなるものが必要となってくる。このような教師の単元計画の仕事を助けるものとして、文部省や教育委員会で著作する学習指導要領、一定の地区で、教師や校長が協力して作る単元の基底や資料単元が役だつであろう。資料単元は、多くの教師や、校長、指導主事、その他教育についての有識者などの協力によって、単元指導を実施した経験を生かして作られるものである。個々の教師は、これらから有力な示唆を得ながら、しかもこれらにとらわれることなく、自分の受け持つ児童・生徒に最も適した単元を作らなくてはならない。

 それでは、教師は、単元を作るときに、どのような点を考慮に入れるべきであろうか。その基準を次に考えてみよう。

(ⅰ)単元は、いろいろな児童・生徒の断片的な経験の寄せ集めではなく、それ自体として、動的な構造をもっていること、すなわち全体性をもったものであること。

(ⅱ)児童・生徒を、学習の展開につれて、社会や自然の中でもっとも根本的であり、かつ重要な諸部面に、広く入りこませ、これとじゅうぶん接触させるものであること。そのためには、学習のための時間がじゅうぶん与えられていること、児童・生徒の理解能力に適した学習経験が用意されていることなどが考えられる。

(ⅲ)単元の目標が明確にとらえられていること。すなわち、単元の学習によって、どのような望ましい知識・理解・態度・習慣・技能・鑑賞が、児童・生徒の身につけられるべきかがはっきりと考えられていること。

(ⅳ)児童・生徒が、みずから、自主的に、目的をたて、計画し、実施し、その結果を評価するというような一連の活動-問題解決の活動-を常に促進するものであること。

(ⅴ)児童・生徒が、学習活動の諸場面で、建設的に協力していくことによって、みずから問題を解決していくことができるように、民主的なふんい気がじゅうぶんつくられていること。

(ⅵ)得た理解や知識をいっそう明らかにし、かつ深めていくために、個人的あるいは集団的な各種の表現活動の機会が多く用意されていること。

(ⅶ)多極多様な個人差を考慮して、多彩な学習活動が用意されていること。

 

次回は、年間計画・週計画のつくり方、学習指導と学習評価の在り方について掲載します。
https://shop.gyosei.jp/library/archives/cat01/0000004817

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