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ここがポイント!学校現場の人材育成

高野敬三

ここがポイント!学校現場の人材育成[第11回]指導主事の確保・育成

NEW学校マネジメント

2020.04.28

ここがポイント!
学校現場の人材育成

[第11回]指導主事の確保・育成

明海大学副学長
高野敬三

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.11 2020年3月

●本稿のめあて●
法令上、教育委員会に配置が義務付けられている指導主事について考えていきます。指導主事は、学校現場にとっては頼もしい存在であるとともに、その職務を、多くの指導主事は遣り甲斐のあるものと考えてきました。ところが、現在、指導主事に魅力を感じない教員が多くなっており、また、指導主事の力量不足に困惑している学校現場からの声が聞こえてきます。今回は、その指導主事の選考・任用上の課題についてみていきます。

 これまで、新任教員の育成、学校におけるOJTによる人材育成や学校管理職の確保・育成についてみてきました。今回は、指導主事に焦点を当てて、その人材確保と育成について考えていきます。昨今、多くの自治体において、指導主事のなり手がいない、指導主事の力量が従前とくらべて劣っているなどの声を聞きます。指導主事は教育委員会の看板を背負って各学校に対する指導・助言をする上で、極めて重要な職務を有しています。学校にとっても、指導主事の高い専門性に期待をしているわけです。

指導主事とは

 そもそも、指導主事の配置の根拠は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第18条で規定されています。そこでは、都道府県及び市町村の教育委員会事務局に置くとされていますが、その職務内容等は同法第18条の第3項と4項で規定されています。第3項では、「指導主事は、上司の命を受け、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項の指導に関する事務に従事する」とし、第4項では、「指導主事は、教育に関し識見を有し、かつ、学校における教育課程、学習指導その他学校教育に関する専門的事項について教養と経験がある者でなければならない。指導主事は、大学以外の公立学校の教員をもつて充てることができる」としています。

 つまり、指導主事は学校に対して教育全般に関する指導助言を行うこととなっており、このことから、学校教育に関する教養と経験を有している者としているわけです。なお、公立学校の教員をもって充てるとは、現場をよく知っているものでなければその職務は務まらないことからの規定と考えられます。言い換えれば、指導主事は「先生の先生」と言っても過言ではありません。

 筆者自身は、当時の校長の勧めがあり、平成元年度に東京都の指導主事選考(高校・英語)を受け、翌平成2年度から東京都教育庁の高等学校教育指導課の指導主事となりました。高等学校の英語という種別で指導主事になったのですが、法律に規定されているような職務が待ち受けていました。多くの日々は、自分が受け持つ学校に対して、教育課程、学習指導、生徒指導や進路指導等の指導助言を行うため、直接、学校現場に赴き、校長、教頭との協議や各分掌の先生方との間の研究協議において、都教育委員会の考え方に基づき指導・助言をすることとなりました。当時の課長からは、「指導主事は教育行商人だ」と言われており、教育委員会と学校とのパイプ役の重責を実感していました。また、在庁のときは、課内業務の遂行や他課の行政職の方々との間で行政施策の立案の検討や資料作成、また、月2回開催される定例の教育委員会用の資料作成や年4回開催される都議会定例会等に関しての資料作成・答弁書の作成などがあり、教員から事務職に「トラバーユ」したような気分となりました。

指導主事選考

 法律で規定されている指導主事ではありますが、その選考方法・任用方法などは、各自治体に任されています。ある県では、指導主事選考を実施して、求める水準に達した教員を指導主事に充てています。東京都の場合は、平成12年度に、それまでの教頭選考と指導主事選考とを一本化して、「教育管理職選考」としたことはすでに紹介したところです。他方、こうした指導主事選考を実施せず、教員の異動の一環として教育委員会の指導主事に充てる、いわゆる「一本釣り」をしている場合もあります。筆者が調べた限りでは、この後者の場合が圧倒的に多くありました。

指導主事選考・任用上の課題

 選考を実施するといっても、多くの自治体では、その応募者が例年少なくて課題となっています。その理由は、指導主事の職務が激務であること、さらには、職責に見合った処遇がなされていないことにあるとされています。東京都は平成11年度までは、校種・教科等別に指導主事の需要数に見合う合格予定者数を示し、指導主事選考を実施していました。このころまでは、多くの教科で10倍を超える倍率があり選抜は適切に機能していました。「教育管理職選考」に一本化し4、5年は良かったのですが、その後、倍率が下がり、現在では、校種によっては2倍を切っており選抜機能を果たせない危機的状況が続いています。こうしたことから、任用されている指導主事の資質能力を問題にする学校からの評価はおのずと低くなっています。

(1)課題の解決方策①
 低倍率が任用される指導主事の資質能力の低下に少なからず影響を与え、学校からの評価が下がるという悪循環に陥っている状況を解決するには、まずは選考方法の見直しです。選考に当たっては、やはり、候補者の教科専門性をまず第一にみるべきです。卓越した教科専門性のある指導主事の指導助言については、現場の教員は従うものです。次にみるべきは、学級経営、生徒指導や進路指導の実績です。こうした教科外の専門性のある指導主事からの指導助言は学校経営にも役立てることができます。やはり、学校現場のプロ教師は、自己の専門性が生かされるならば、違う立場で、多くの教員に指導助言を行うことに魅力を感じるものです。

(2)課題の解決方策②
 学校現場から充てられる指導主事は、実は教員の身分のままです。教育行政と学校とのパイプ役で、教育委員会の看板を背負って職務を遂行するのですが、管理職ではありません。指導主事選考を実施する自治体では、指導主事が学校現場に出るときは、教頭等管理職に任用していますが、教員異動の一環として指導主事に充てられた者は、学校現場に戻るときは、教諭のままと聞きます。管理職手当も付かないし、教職調整手当の4%が付いているので、教育委員会で勤務する他の事務職とは異なり超過勤務手当は付きません。指導主事の勤務時間は、かつて「7-11(セブンイレブン)」と言われていましたが、今では、多様な教育課題に対する要請から、「7-12(セブントゥエレブ)」の状況ではないのでしょうか。給与等の面、そして、学校現場に戻るときの職層等の処遇の改善について、本腰を挙げて教育委員会は乗り出すべきです。

 

Profile
明海大学副学長
高野敬三 たかの・けいぞう
昭和29年新潟県生まれ。東京都立京橋高校教諭、東京都教育庁指導部高等学校教育指導課長、都立飛鳥高等学校長、東京都教育庁指導部長、東京都教育監・東京都教職員研修センター所長を歴任。平成27年から明海大学教授(教職課程担当)、平成28年度から現職、平成30年より明海大学外国語学部長、明海大学教職課程センター長、明海大学地域学校教育センター長を兼ねる。「不登校に関する調査研究協力者会議」委員、「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会議」委員、「中央教育審議会教員養成部会」委員(以上、文部科学省)を歴任。

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