ここがポイント!学校現場の人材育成
ここがポイント!学校現場の人材育成[第7回]学校現場におけるOJTによる人材育成〈その4〉
学校マネジメント
2020.02.12
目次
ここがポイント!
学校現場の人材育成
[第7回]学校現場におけるOJTによる人材育成〈その4〉
明海大学副学長
高野敬三
(『学校教育・実践ライブラリ』Vol.7 2019年11月)
●本稿のめあて●
前号では、OJTを有効に進める場面ごとに、そのポイントを紹介しましたが、今回は、実際、どのようなOJTを行い、どのような成果があがったかについて、都教育委員会が作成したガイドブックに掲載されている事例をとりあげて、考えていきます。
学校現場におけるOJTによる人材育成について、前号では、先輩や上司の日常的な助言や仕事ぶりから学ばせる場面、新たな職務を経験させる場面及び教員相互で学び合う場面の3つに分けて、OJT実施上のポイントを紹介しました。
今回は、具体的なOJTの活用事例を校種別に見ていきます。
OJTの活用事例① 教員全員で組織的にOJT(小学校)
若手教員の割合が多いA小学校の校長は、人材育成を学校の重要な課題と捉え、副校長にOJTの積極的な導入を指示した。
そこで、副校長は全ての主任教諭をOJT担当者として指名し、主幹教諭にOJT対象者との組合せを指示した。さらにOJTシートを作成させ、各教員が自由に閲覧できるシステムをつくった。
主任教諭はOJTシートによってお互いのOJTの進行方法や内容を確認し合った。それにより、効率的なOJTやOJTの重複防止等を図ることができた。
一方、OJT責任者である主幹教諭や副校長は、OJTの実施状況を確実に把握できることで、OJT担当者からの相談に対しても適切な指導・助言をすることができた。
毎学期一回、OJT実施連絡会を開催し、実施状況を2?3名の主任教諭に報告させた。これによって、学校全体の意識が高まり、組織的なOJTを実施することができた。
この事例は、全ての主任教諭をOJT担当者として指名して、どのOJT担当者がどの教員(OJT対象者)に対する指導助言をするかマッチングを主幹教諭であるOJT責任者に作成させたものです。また、OJTシートを作成させ、一人一人の教員だけではなく、OJT担当者間で、OJTの実施状況や内容などを共有することにより、組織的にOJTを行うことができた取組です。
OJTの活用事例② OJTの意識を高める「一人一課題研修」の導入(中学校)
ベテラン教員が生徒指導を行う際に、若手教員とともに指導に当たることによって生徒指導のノウハウを伝達することができる。情報処理の技術をもった教員はパソコンによる成績処理の方法や情報セキュリティについて初任者教員等に伝達できる。A中学校では、このように教員が得意とする技能やもっている技術を「課題研修の項目」(指導させたい内容)として設定した。
その中から、研修を受けたい内容を「一人一課題研修」として選択させ、OJTの一環として位置付けた。必要に応じて複数の課題を選択することも可能にした。
教員が自ら課題を選択し、OJT担当者が自己の得意分野の研修講師を務めるため、研修そのものが活性化され、全教員のOJTに対する意識が高まった。
この事例は、教員自身が得意とする技能や技術を、OJTの全体責任者である校長や推進責任者である副校長が、所属職員である教員に、自分であれば何をOJTのテーマとして指導できるか、自己の得意とする技能や技術をまとめさせます。その上で、教員一人一人に研修課題(一人一課題研修)として選ばせOJTを実施したものです。OJT担当者となった教員は自己の「十八番」を如何なく発揮して指導に当たることができるとともに、OJTを受ける側も自己が主体的に選択した内容であることから参加意欲も高まるOJTの取組といえます。