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ここがポイント!学校現場の人材育成

高野敬三

ここがポイント!学校現場の人材育成[第4回]学校現場におけるOJTによる人材育成〈その1〉

NEW学校マネジメント

2019.11.15

ここがポイント!
学校現場の人材育成

[第4回]学校現場におけるOJTによる人材育成〈その1〉

明海大学副学長
高野敬三

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.4 2019年8月

●本稿のめあて●
これまでは、新任教員の即戦力化による人材育成をみてきましたが、学校の働き方改革が叫ばれる中、学校現場のOn the Job Training(OJT)に視点を当てて、いわば、普段着でできる人材育成の方法について考えていきます。

先輩教員vs後輩教員の切磋琢磨

 前号では、「教員は学校現場で成長するもの」と記述いたしました。まさに、教員は学校現場で、他の教員との切磋琢磨で自己の指導技術を磨いてきた歴史があります。筆者が教員であった昭和50、60年代は、よく職員室で先輩の教員から教科指導、生徒指導、進路指導、保護者への対応方法などについて教え合う風土がありました。筆者も、初任者であった頃は教えていただき、少し経験を積んでからは、後輩の教員に、今度は逆に助言したりしたものです。あるいは同世代の教員同士でよく教育の在り方をめぐって激論して自己の「子供との接し方、教え方」などをより良くしていったものです。その当時はOJTなどといった言葉も使っていなかったかと思いますが、これこそが、今で言うOJTそのものであったと考えます。必ずしも組織的あるいは計画的なものではありませんでしたが、先輩教員が語る指導技術・教育実践に唸り、自己を更に高めていこう、そして、何よりも子供たちに対して、どんな指導が最適なのか試行錯誤を通して、自分の「教え方」を確立していったものです。奇妙な言い方ですが、経験を積んで円熟味が増した年齢となったときでも、経験の浅い教員から最新の指導方法について学ぶことも多くありました。

 筆者がまだ、駆け出しの都立高校の教員時代に先輩から教えていただいた、「子供には、逃げ道を作ってやれ、理詰めで子供を追い詰めてはだめだ」や「子供を褒めるときは、本当に誠心誠意褒めてやれ、褒められて反発する子供はいない」などという諫言は、その後の教員生活に役に立ちました。

 しかしながら、今の教育現場はどうでしょうか。職員室などで、先輩教員が後輩教員に対して、経験から裏打ちされた指導技術などを伝授していく風景はほとんどなくなったと聞いています。また、「先輩教員の話などは、若い教員が真剣に聞かなくなっている」あるいは、「うちの学校の年配の先生方からは、何も教育に関する話などを聞いたことはない」など、教員同士が切磋琢磨して成長するような現場がなくなりつつあるのを実感します。

 こうした状況について、東京都教育委員会は、「都内公立学校全体で、毎年1500名前後の教員が定年退職を迎え、経験豊かで優秀な教員が教育現場から去る一方、教職経験の少ない若手教員が増加し、採用後10年以内の教員が全教員の4割以上を占めています。このことにより、優れた指導技術や教育実践が十分に伝わらず、教育の質の低下につながることが危惧される」として、優れた指導技術や教育実践を確実に継承するために、人材育成の核に意図的かつ組織的なOJTを位置付けることにしました。

課題解決のための視点と方策

 平成20年10月に、東京都教育委員会は、「OJTガイドライン―学校におけるOJTの実践」と題する人材育成の基本を示しました。ここでは、これまでの人材育成では、学校内の研修会や研究会、教育センターなどでの研修や自己啓発による研修などの取組が主であり、教員個人の研修への意欲、育成する側の意識、学校の取組体制などに頼ってきた面が多々あるとして、次の課題を指摘しています。

〇 学校に所属するすべての教員が、必ずしも着実に力を身に付けているとは限らない。

〇 だれに対してどのような育成をするか、だれが育成を担当するかが明確になっていない。

〇 一人一人の教員の成長が、学校全体の教育力の向上や学校が抱える課題解決に十分につながっていない。

 こうした教員の育成上の課題を解決し、教員の人材育成を着実に行っていくために、学校内においてOJTを組織的に推進することとしました。いうまでもなく、OJTは職務を通した人材育成であり、すべての教員を対象として、身に付けるべき力を意識的、計画的、継続的に高めていく取組です。一定の時間の中で行うことができ、即効性があります。また、一人一人の教員の職務遂行能力を向上させることができ、学校全体として質の高い教育を提供し、学校が抱える課題の解決にもつながります。

 職務を通じて行うOJTには、次のような実効性があるとしています。

(1)新たに時間や場所を確保することなく、学校の職務を遂行する中で育成できる。必要なときにできるので、育成の機会を多くもつことができる。

(2)一人一人の教員の課題に応じた具体的な指導が可能であり、個別に最も有効な方法で育成することによって成長が早まる。

(3)OJTの実施状況や目標の達成状況に応じて、OJTの方法を適宜改善することができる。

(4)OJTを受ける側だけでなく、行う側にとってもOJTの機会となる。人に教えながら自分の教育指導や校務分掌遂行の在り方を見直したり、見本となることで職務への意識が向上する。

(5)育成される側が、いずれは育成する側になるという、育成機能の連続性を学校内に確立できる。

 左の図は、OJTの組織体制の例です。

 次号においては、もう少し詳しく、東京都が示した学校現場におけるOJTによる人材育成をみていきます。

 

Profile
明海大学副学長
高野敬三

たかの・けいぞう 昭和29年新潟県生まれ。東京都立京橋高校教諭、東京都教育庁指導部高等学校教育指導課長、都立飛鳥高等学校長、東京都教育庁指導部長、東京都教育監・東京都教職員研修センター所長を歴任。平成27年から明海大学教授(教職課程担当)、平成28年度から現職、平成30年より明海大学外国語学部長、明海大学教職課程センター長、明海大学地域学校教育センター長を兼ねる。「不登校に関する調査研究協力者会議」委員、「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会議」委員、「中央教育審議会教員養成部会」委員(以上、文部科学省)を歴任。

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