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トラブルの芽を摘む管理職の直覚

中山大嘉俊

トラブルの芽を摘む管理職の直覚 [第2回]「私のクラスになって、可哀想…」新転任の教職員にありがちなトラブル

NEW学校マネジメント

2019.03.18

 (『リーダーズ・ライブラリ』Vol.2、2018年

「私のクラスになって、可哀想……」

 新年度が始まって管理職にとっていちばん気になるのは、新転任の教職員が職場に馴染んで、学校としてうまく機能しているかということでしょう。ここでは、新任教員について考えてみます。
 慌しい4月が過ぎたあたりから、あんなに張り切っていた新任教員に元気がないと感じることが往々にしてあります。また、学年主任から「あの先生は言うことを聞かない」という不満が聞こえてくることもあります。前者の場合は、よく言われる「5(6)月病」といったメンタル面の心配がありますし、後者の場合は教員間の不調和が組織全体の活 力に影響を及ぼすことが危惧されます。

なんだかはっきりしない

「これまでと何か違う」という違和感を大切にする

 体育会系で何にでも一生懸命に取り組んでいた新任のA先生が、突然、体調不良とのことで年次休暇をとりました。同僚の先生も「最近あまり寝ていないようです」と心配顔です。振り返ってみると、A先生の出勤がこれまでと比べて月曜日だけ10分ほど遅くなり、次第に始業時刻ぎりぎりになることが増えていました。
 次の日に出勤したA先生に最近の体調を尋ねると、「子供たちに悪い。辞めたい」と泣き出しそうに言います。授業が思いどおりにならない。ドリルを見るのに手間取ってしまう。ほかの先生の授業を見ても自分はとってもああはなれないと感じる。「新任のときは皆そうだよ」と言われても、ずっと続くかと思うとつらい。周りに迷惑をかけている……。
 順調に育っていると捉えていたA先生が、教師としての自分を否定的に捉えていて、大きなストレスを抱え込んでいたことが分かります。ここまでくると、まずはA先生の話をじっくり聴き、受け容れるところから始め、自分の考えを押し付けるのではなしに、A先生が受け取りやすいようにして言葉を届けるしかありません。

新任だからと見逃していなかったか

お悩み中の教師

 4月は繁忙期で管理職も様々な仕事に忙殺されています。A先生の例で言えば、出勤が遅くなっていたという兆候を見逃してしまった、気が付いていたのに、聴く、フォローする余裕が自分になく見過ごしてしまったといったことが悔やまれます。
 このほかにも、次のようなサインがあったかもしれません。疲れ気味で顔色がさえない、先生方との会話が少なくなってきている、連絡ミスなどが増える、職員室や教室の机の上が山積み、子供に対して険しい表情になっている、何かするときに戸惑う様子が見られる、身だしなみが乱れてきたなどです。これらの、いつもと違う“何か”に最初に気付くのは同僚です。そして、その声に耳を傾ける管理職です。日ごろからのコミュニケーションと風通しのよさ、SOSを見逃さない職場体制の大切さを痛感します。

 

アドバイスに耳を貸さない新任

 学年主任のB先生が、新任のC先生に苛立った口調で何やら指示をしています。C先生は、先輩教員へぞんざいな口のきき方をすることがあったり、周りの先生方に聞かずに勝手に解釈をして学年での取り決めと違ったことをしてしまったりすることがあるということに思い当たります。この前、「トラブルを起こしたC先生のクラスの子供を私が指導していたのを横目に、C先生がテストの採点をし出したのでさすがに怒ってしまった」とB先生がこぼしていたことも思い出されます。信じ難いことですが、C先生は人がやってくれているからと、自分は別な仕事をしようとしたらしい……。
 このように、新任教員によっては、直接関係する学年の教員や指導教員と人間関係がうまくかみ合わなくなっている状況が表れるときがあります。
 B先生に尋ねると「C先生はプライドが高くて何を言っても通じない」「ああ言えばこう言うし、すぐ言い訳をする」とのこと。このままでは、学年運営に支障が出てきますし、子供にも教員間の不協和音が伝わります。何よりC先生が孤立してしまうこと、本人の成長も危ぶまれることが現実味を帯びてきます。

伝え方を振り返り、変える

考え中の教師

 最近、例えば、指導教員も人間関係を気にして厳しい指導ができなかったり、管理職も、パワハラと言われるのを気にして当たり障りのない指導に終わったりということも聞こえてきます。
 しかし、前述のような場合、C先生にきちんと指導をするのが当たり前です。そのときに“察する”といったことを相手に期待するのではなくて、よく言われるように、相手のポジションに立って、次のように5W1Hをもとにした伝え方をしていたか振り返ってみることです。[Why]なぜそうしないといけないのか、[What]何が問題なのか、何をすればよいか、[When]いつすればいいのか、[Where]どんな場面ですればよいのか、してはいけないのか、[Who]誰とすればいいのか、[How]どのような具体的な方法ですればよいのか。
 さらに、自分が話す内容を自分で聞くことで、自分の現実の姿や考えに気付くことがあります。新任教員が自分の置かれている状況を自ら整理し、解決に向けた具体的な行動へのコミットメントを行うような対話を心がけたいものです。同じような意味をこめて、本校では若手教員が「マナー・心得」を分担して書いて研修用冊子としてまとめるなどしています。
 管理職は豊かな経験に裏打ちされていますので「最近何か様子がおかしい」と感じたら、やはり何らかの異変があることが多いものです。私は“空振りでも見逃すよりいい”を基本に、水面下にある兆候らしき何かに気付いたら見過ごさずにすぐに手を打つように努めています。

中山校長の目

  • ❑ 新任教員を支える体制は柔軟で風通しがよいか
  • ❑ 任教員の言動に普段と異なる変化が見られないか
  • ❑ 新任教員と他の教員に摩擦や溝ができていないか

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中山大嘉俊

大阪市立堀江小学校長

大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。(2019年3月時点)

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