トラブルの芽を摘む管理職の直覚
トラブルの芽を摘む管理職の直覚 [第4回]「子供を運動場の真ん中へ!」地震発生時の対応の実例から
学校マネジメント
2024.01.10
「子供を運動場の真ん中へ!」
6月18日(月)7時58分、大阪北部で大地震が発生しました。亡くなられた方々、大切な方を亡くされた皆様に心よりお悔み申し上げます。そして被災された多くの皆様に謹んでお見舞い申し上げます。ここでは、各校の安全対策に少しでも参考になればとの思いで本校の対応を以下に記述します。
地震発生時の対応
本校は大阪市の中心部にあり、児童数1150人、特別支援学級8を含む39学級の過大規模校です。約95%の児童がマンション居住です。併設幼稚園の在園児は103人です。
本校では、毎朝8時前に、校長、副校長、教頭、教務主任と併設幼稚園の主任とで、共通理解すべき事案について確認しています。その最中にスマートフォンの緊急地震速報もなく突然大きな揺れが起きました。地震発生時、小学校ではすでに登校している児童が70名程度。そのほかの児童のほとんどは登校途中であると思われました。
登校していた児童をすぐに運動場中央に集め学年・学級ごとに並ばせました。出勤していた教職員で手分けして、①登校してくる児童を学校前・校門 等で運動場に誘導、②運動場で児童を看護、③教室・校舎の安全確認、④通学路・地域を巡回、⑤職員室での電話対応とテレビからの情報収集などに当たりました。トランシーバーは管理職・養護教諭・学年主任等が、教室に備えていた非常災害用救急バッグは各担任が持ちました。幼稚園は9時始まりですので登園見合わせにしました。
難しかった判断
本校は、登校後に地震が発生した場合は、「児童は安全が確認されるまで学校で待機させる」という方針をこれまでに保護者にも伝えていました。8時15分に保護者メール(1回目)で、児童を運動場に待機させていることや怪我人はいないこと、休業にせずに児童を学校で安全確保することなどを伝えました。教職員・児童には学校に着いた時間差から生じる情報差があったので、その都度、地震の状況や交通機関が止まっているといった把握している情報と学校の対応などを伝えました。
難しかったのは、今後も大きな余震があるかもしれない中で児童を教室に入れるという判断でした。8時25分の時点で、教室や校舎に被害は認められないこと、登校児童や出勤している教職員、給食室の状況などを踏まえて、このまま8時45分まで運動場で待機し、担任不在の学級の看護体制や給食調理の再開の指示をし、安全指導後に児童を教室に順次入れることを決めました。8時36分に保護者に「現在の学校の状況、自宅待機の場合は学校に連絡」等をメール(2回目)しました。
児童の安否確認
本市の地域防災計画では休校判断等は校長が行う決まりになっており、9時5分に「4年社会見学延期、教室で授業」等を保護者メール(3回目)しました。職員室正面のホワイトボードに、連絡のない児童名を学級ごとに一覧的に記述し、新情報を書き足すようにしました。
最終的に、連絡がつかない児童宅を訪問し安全確認ができたのは10時過ぎでした。市教委より地震についての指示(メール)がきたのは、①9時7分、②10時、③11時4分でした。2回目までの指示内容は「児童の安否確認、余震に対する備え、施設・設備の状況確認、臨時休業措置等は校長判断」でしたが、3回目は「休校措置」でした。
いつ、どのように下校させるか判断に迷いましたが、「給食、5時限終了後、全児童を地域別班に編成し下校」を決め、正午の前後にほぼ同内容の保護者メール(4、5回目)をしました。「いきいき放課後事業」は中止の見込みでしたので該当児童や帰宅時に大人がいない児童の保護者に連絡を取りました。保護者と連絡が取れない児童は、学校で看護する等を決めました。また、明日からの対応等をプリントやホームページ、メール等で行いました。「迎えに切り替えたい」「子供はもう下校したか」、「ミマモルメ」の作動確認等の問い合わせは15件でした。
対応の検証
23年前の阪神・淡路大震災のときに教務主任をしていた私は、当時の混乱を今でも昨日のことのように覚えています。そのこともあって本校では、避難訓練を、休み時間や模擬の倒壊物を置いて実施することや、保護者・地域への防災教育の公開と引き取り訓練の実施など防災教育・防災対策に重点を置いて取り組んできました。また、防災基本計画では登校中の地震発生時の対応も想定していました。
しかし、実際には様々な課題が出てきました。当日、児童全員の安全確認を終えた後で、時系列に対応をまとめた表をもとに全教職員で振り返り改善点を考えました。その主な内容は「全保護者への情報発信手段の内、ホームページはフリーズしていたので、NTTの災害用伝言ダイヤルや地域ごとに掲示を行うなど手段の複線化に努める」「保護者と連絡が取れない、メール配信等ができない場合を想定し『学校に児童がいる間に地震が起きたら安全確保のために学校で預かる。その後、大人不在の隙間をつくらないため引き取り等を行う』ことを日常から周知徹底する」です。保護者には、学校のとった対応を時系列にしたもの、その点検、児童のケアや今後の対応等を周知しました。
「学校は安心できる」と言ってくださった保護者の声に、正直、責任の重さが身に染みました。今後、様々な非常事態を想定した訓練を重ねる所存です。
中山校長の目
- ❑ 日常の備えは十分にできているか
- ❑ 安全に関する点検・改善は、教職員だけでなく、保護者、地域、児童生徒、専門家など異なる視点をもつ人を取り入れてしているか
- ❑ 管理職不在でも、的確な危機対応ができる体制になっているか