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トラブルの芽を摘む管理職の直覚

中山大嘉俊

トラブルの芽を摘む管理職の直覚 [第3回]「私は大丈夫…」個々の教員の日常に潜むリスク

NEW学校マネジメント

2019.03.18

 (『リーダーズ・ライブラリ』Vol.3、2018年

「私は大丈夫……」

 先日、教え子がやっている居酒屋で飲んでいると、隣にいた30歳前後の男女の会話が否応なく耳に入ってきました。二人とも「先生」で、お酒の勢いも手伝ってか、辺りを憚ることなく職場への不満や同僚の話などについて勢い込んで話しています。危うい!酔いもすっかり覚めてしまいました。

個人情報の紛失

時間をさかのぼって考える教員

 文部科学省は、個人情報の不適切な取扱いで、平成28年度は348人の教職員が懲戒処分を受け、別に監督責任で195人が懲戒処分を受けたと発表しています。内訳は、電子データの紛失が70人、書類の紛失が168人、インターネットを介した個人情報の流出が11人、その他個人情報の漏洩等が99人です。
 ところで、学校における個人情報の漏洩は、名簿をはじめ各種の資料を作成する年度始めや成績処理の時期である学期末に多いことが指摘されています。事故の発生場所は学校外とは限らず、種類で最も多いのは、書類やUSBメモリ、パソコンなどの「紛失・置き忘れ」、次いで「盗難」、三番目が「誤配付」とのことです。
 大阪市では、テレワークで教員が自宅から児童の個人情報にアクセスできるシステムがあるため、私物のUSBでの情報の持ち出しが禁止されています。しかし、児童名や成績情報、画像が記録されているUSBが入った鞄を車内に置き忘れるという事故が起きています。テレワークでなく私物のUSBを、管理職の許可を得ずに無断で持ち帰った結果です。
 持ち帰って仕事をするという気持ちは分かるものの、“ 人災”と言われても弁解の余地はありません。この件からは、テレワークも含め機械操作になじみにくい教職員の存在や、「情報漏洩は自分には関係ない。大丈夫」といった正常性バイアスに似た心理が働いて規則を軽視する教職員がいる事実を直視する必要があります。ほかにも情報の送り間違いや誤操作による情報漏洩もあり、それらは本質的にヒューマンエラーです。他人事ではなく自分の職場の誰にも起こす可能性があることを肝に銘じて対策を考えることです。
 一般に情報漏洩の8割は、内部の人間が引き起こすとされています。学校も例外ではなく、校内の教職員の認識不足や不注意を如何に解決するかが問われています。

個々の教員の日常を掴む

何気ない日常の中にリスクは潜む

 まずすべきは、校内の日常に個人情報に関してぞんざいな扱いが見られないか、絶えず注意を払うことです。そうすることが、教職員一人一人に反映し、情報漏洩対策の基盤となります。例えば、家庭調書や名簿、テストなどを職員室の自席に置きっぱなしにしていないか、コピーしたノートがそのままコピー機に残っていないかといったことです。個人情報が含まれている書類をシュレッダーで廃棄していないかもしれません。机上整理も紛失を防ぐ上で大切です。また、教室に、教務必携、成績や生活指導関係の資料などを持っていかない、教室が空になるときは施錠をするなどにも注意が必要です。こういった普段の心掛けを身に付けた教職員を増やして、情報のラフな扱いを見かけたら「それはダメ」と互いに注意できる職場にしたいものです。

主な防止策

USBケーブルとインターネット

 個人情報漏洩について、原因の大半はヒューマンエラーであること、重い社会的責任、被害とその拡大、学校組織へのダメージ等は最低限の共通理解事項です。また、規則等の周知・徹底は当然ですが、形骸化も懸念されます。
 研修方法にワークショップやケースメソッドなどを取り入れるのも一案です。教職員から、家庭訪問の際に子供の連絡先を持ち歩かなくても職場に聞けばよいといった意見も出てきます。
紛失についての主な防止策として、次のことがあげられます。

  • ❑ データは原則、持ち出させない。テストなどの持ち出しは、記録簿に種類・枚数だけでなく、誰の分がないかまで詳細な記入を求め、紛失、置き忘れ等の注意を徹底する。
  • ❑ 職場での私物のUSB の使用は禁止。学校指定のUSBを条件付きで使用する。
  • ❑ やむを得ずデータを持ち出す場合は、パスワードやロックをかける、関係のないデータは消去するなどを義務付ける。
  • ❑ 使用目的が終わった時点で個人情報データを消去する。保管期限の設定と明記、廃棄方法の明確化、廃棄の記録を残す。

 

 私は最初に同和教育推進校に勤めていましたが、電車やトイレ、居酒屋でも、職場の話、特に子供の不利益につながる話はするなと先輩から厳しく言われてきました。TwitterやFacebookなどのSNSも同じでしょう。個人情報に関係する話を職場以外ですることのリスクを皆で理解する必要があります。
「誤配付」は、メールやFAX 等で宛先や添付ファイルを間違える、保護者に別人の未納通知書を渡す、封筒の宛名と中身が違うなど、数え上げたらきりがありません。転出入の書類を「送った」「受け取っていない」と学校間でトラブルになったこともあります。必ず複数人で宛先、内容、添付ファイル等を確認することや、児童名を確認して手渡し、操作の手順づくりとその遵守などで、ミスの発生率を下げることはできます。
 最近の事件では、一人の違反者によって学校の存立が危うくなる事実がみられます。個人情報の管理を、規則の遵守というネガティブ面でなく、個々のメンバーや組織としての取組等の周知により保護者や地域等からの信頼を高めるという積極的な意義において捉えることが実践の質の担保につながると考えます。

中山校長の目

  • ❑ 「情報漏洩の主因はヒューマンエラーである」ことを教職員が理解しているか
  • ❑ 個人情報に関してぞんざいな扱いが見られないか
  • ❑ 送付や個人あて配付の際などに複数でチェックする習慣が教職員に根付いているか

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中山大嘉俊

大阪市立堀江小学校長

大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。(2019年3月時点)

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