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トラブルの芽を摘む管理職の直覚

中山大嘉俊

トラブルの芽を摘む管理職の直覚 [第1回]「先生がこわい…」叱ると怒るの違いとトラブルの予防

NEW学校マネジメント

2019.03.18

 (『リーダーズ・ライブラリ』Vol.1、2018年

「先生がこわい……」

 「肩の荷がスッと下りたよ」と退職直後の校長がよく言われます。リスクを避けたい、その芽を少しでも摘みたい、そう願わない管理職はいないでしょう。
 ところで「始めが大事」とよく言われます。新学期、担任と子供は新しいクラスで出会い、つき合い始めたばかりです。この時期にどんな印象を持ち合うかは、後々まで影響します。好感が信頼につながり良循環サイクルが回り出せば、無用なストレスを経験しないで済みます。そういったことから、私は年度当初に、「問題行動には毅然と」という方針とともに、ドロシー・ロー・ノルト博士の「子は親の鏡」を例に、私たちもまた、子供にとって最大の環境であることの理解と言動を教職員に求めるようにしています。

「叱る」と「怒る」

1人でサッカーをする子どものシルエット

 しかし実際には、スタートして1か月も経たないうちに、子供と教員との間でミスマッチが起こり、その溝が次第に大きくなる場合が、往々にしてあります。

 ここでは叱り方を例に考えてみましょう。例えば、教員に余裕がなかったり、指導力が十分でなかったり、冷静になれなかったりした場合に、つい「頭ごなしに」叱るということがあります。さらに子供が「自分の思い通りにならない」ときには「叱る」を通り越して「怒りを爆発させ」声を荒げてしまいがちです。体罰に至ることも考えられます。また、大声でなく反省を促したものの、子供が何も言わないので結果として長時間立たせてしまったという事例もあります。
 このような場合、叱られた内容は心に残らず怒られたという印象だけが強く残り、担任の機嫌を気にしてビクビクする子供が出てきます。さらに、自分でなく同級生が怒られているのを間近に見て、「先生がこわい」と言う子供も出てきます。そして、保護者間でLINEやメールが回っていたりします。
 こうなると保護者から、担任の指導が厳しすぎる、話を聞いてくれない、不公平といった理由で、子供が「学校へ行きたくない」と言っているといった内容の苦情が寄せられます。これらは、子供の感情や言い分が保護者に反映されたものです。裏を返せば、担任が子供受けのよい態度ばかりするといった問題は、同僚からの苦言が多く、保護者からは殆どありません。

現状の把握から

 管理職として着任したてか否かでは事情が異なりますが、いずれにしても、このような事態になるとアンガーマネジメントの全体研修をしておけばよかった、4月の目標設定面談時に注意を促しておけばよかったなどと忸怩たる思いに駆られます。ただ一番の鍵は、個々の教職員の勤務等の実状、教職員と子供、教職員同士の関係性などの把握と判断にあることは確かです。

 

若手の場合

生徒を教える新任の先生

 若手教員の場合には、指導教員や学年主任、先輩教員も含め多くの目があり、色々な情報が管理職の耳にも入ってきます。「○○先生、どう?」と尋ねるとより多くの情報が得られます。人前で叱りすぎる、子供をきちんとさせなければというプレッシャーが強すぎるといったことです。それらをもとに、管理職が直接指導したり、学年主任やメンターの教員などに声掛けや助言を依頼したりします。
 指導のポイントとして、(1)「叱る」行為を「してはいけないことをした」と「すべきことをしなかった」に整理させる、(2)理由をきちんと説明する、冷静に、子供の言い分を聞くなど望ましい叱り方を具体的に示す、(3)叱っている自分自身やそのときの子供の気持ちを振り返らせる、(4)「先に伝えれば説明、後になったら言い訳」など保護者への伝え方を考えさせるなどがあります。若手教員のその後を見て、よくなった点は認めるようにすることも大切です。

若手以外の場合

 若手以外の教員の場合は、周りの気兼ねもあり情報がなかなか入らないことがあります。校長と教頭、ミドルリーダー等との風通しのよさが必要です。
さらに、管理職による全校朝会時や日頃の授業、遠足等での観察が欠かせません。子供と教員との応答などは勿論ですが、例えば、教室に鉛筆やゴミが落ちている、黒板が汚いなど教室環境の変化も要注意です。何かおかしいと感じたらその教員に声をかけることです。そして、叱り方が問題だと感じたらためらわずに指導してミスマッチに気付いてもらうしかありません。教職経験に応じて自負をもっておられるので、そのキャリアに応じた教員としての在り方、若手のモデルとなる役割や立場等の理解を求めることが必要です。親の意識の変化やコンプライアンスの強化、悪循環に陥ってしまった具体的な事例も提示しながら共に考えるようにします。
 「まさかと想像もしていないときにトラブルは起こる。意識しているときには、案外起こらないもの」との先輩校長の言葉を思い出します。ありきたりですがリスク管理は日頃の備えと、事が起こってからの迅速で真摯な対応に尽きます。

中山校長の目

  • ❑ 「私たちは子供にとって最大の環境である」ことを教職員が理解しているか
  • ❑ 管理職が、個々の教職員の実状や教職員同士・子供との関係を把握しているか
  • ❑ 校長・教頭とミドルリーダーとの風通しは良いか

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中山大嘉俊

中山大嘉俊

大阪市立堀江小学校長

大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。(2019年3月時点)

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