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トラブルの芽を摘む管理職の直覚

中山大嘉俊

トラブルの芽を摘む管理職の直覚 [第12回] 「させられている…」

NEW学校マネジメント

2019.10.10

トラブルの芽を摘む管理職の直覚

[第12回] 「させられている…」

大阪市立堀江小学校長
中山大嘉俊

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.12

「させられている…」

 ここ20年に及ぶ一連の教育改革は、学校に自主性と自律性を持たせることが大きな狙いでした。しかし、現実は全国学力・学習状況調査の扱いにみられるように教育委員会が目標を下したり、市長が結果を校長・教員の評価や給与、学校予算の増減に反映させようとしたりという状況が起きています。このような中で、校長の閉塞感、教職員の「やらされ感」など、職場に疲弊感が募っているという指摘があります。学校が元気になるために、「自律的」な学校組織の再構築の必要性がますます高まっています。

問題意識のギャップを埋める

 今学校に何が求められているのかを教職員が理解し、自校の取組や教育活動の方向について議論を深めるには、教職員も鳥・魚・虫の目をもち思考の幅を広げて教育を取り巻く状況を理解する必要があります。しかし、教職員は日々多忙な中で教育に関する様々な情報を入手すること自体、難しい状況があります。

 このような実態をふまえて、A校長は、新聞の切り抜きを毎日、答申や教育関連の調査結果などは発表されて2、3日の内に配付、さらに教育施策等は教育委員会の説明を伝達に留めずに国の動向や市会の答弁などの背景も併せて説明しています。これは、校長自身がもつ情報を可能な限り教職員に提供することで多様な知識や視点を共有して同じ土俵で考えたいとの思いからです。教職員からは「他校の友人は知らされてないことが多い」や「ベターな判断ができるようにしてくれている」といった声が寄せられています。

ミドルリーダーに立ち位置を理解させる

 組織の状況が思わしくないときに、校長はリーダーシップを発揮して教職員とビジョンを共有しながら組織を変革していくことが求められます。このときにキーパーソンとなるのは、教頭や教務主任、研究主任といったミドルリーダーです。ミドルリーダーのリーダーシップは、校長のリーダーシップのベクトルと重なると一層促進されます。反面、そうでないと機能しません。特に教務主任のリーダーシップはその傾向が顕著だといわれています。学校全体の意思や活動の組織化は、校長のサポートがあればこそ可能だといえます。

 組織の変革が進んでいるB小学校では、ミドルリーダーが校長と一般教員をつなぐ役割を果たし組織として意思疎通が図られています。(大脇:「ミドル・アップダウン型組織論」)さらに教務主任や研究主任、学年主任やプロジェクトのリーダー、メンターとしての複数のリーダー、また、教員の相談役になっている最ベテランの主任や教頭など、多様なリーダーの存在が組織に活力を与えています。

成功体験を共有できる「しかけ」をつくる

 教職員が同じ目標に取り組み子供の成長を実感できれば、疲れも吹き飛びます。C校長は、教職員間の同じ目標に向けたコミュニケーションを活発にしようと考え、ICTの教育活用という研究モデル校を受けて、ミッションとして校内授業研究を外に問う状況をつくりました。研究推進は研究主任をトップにした研究組織に委ね、校長自身は人的・経済的・物的な支援の獲得を図るなどして研究活動が円滑に運ぶ環境づくりに努めています。

 その結果、協働性を重視した研究主任のリーダーシップのもとで、授業研究の内容・方法等を自分たちで主体的に改善しました。もともとその学校は同僚性が高く、協働性が加わったことで、運営面でも過去の成功や失敗から教員個々が学んだことが「組織としての経験」として生かされ、組織として成長しています。さらに、教員が子供の主体的な学びの様子から「やってよかった」等の実感を得、その実感が外部からの肯定的な意見を直接受け取ることや校内の「互いのよさを共有する場」等によって強まり、授業研究を発展させる良循環が生まれています。

前向きな学校文化を醸成する

 D小学校では教職経験10年以下の若手教員が、自主的な研修組織をつくっています。この組織は、当時の研究主任と若手教員との日常会話がきっかけで生まれましたが、土壌には学年業務、校務分掌、研究授業を通して、若手教員を応援し育てようというD校の雰囲気があったことは見逃せません。さらに、若手教員に自己マネジメントを通して、自分の立ち位置を考えさせるといった研修も土台になっています。

 D校では、ミドルリーダーが異口同音に「子供のために前向きに取り組む学校の伝統」を自校の良さに挙げており、その“伝統”に影響を受けたミドルリーダーの考え方や行動は、教員集団に反映されて教員文化が継承されています。自主的な研修組織のもとに若手教員がする研究授業の参観はフリーですが、ミドルリーダーの参加率は高いです。また、授業後に、討議会に参加できなかった先輩教員一人一人に自分の授業への意見や助言を聞いて回る姿は、ごく当たり前になっています。

 自分たちで目標を立て考えて実践したことが子供のためになれば、モチベーションは前向きに変わっていきます。「やらされ感」や「多忙感」も軽減します。併せて働き方改革を進めて長時間勤務を減らすことができれば、学校に活力が漲ると考えています。

 

Profile
大阪市立堀江小学校長
中山大嘉俊
なかやま・たかとし 大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。

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大阪市立堀江小学校長

大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。(2019年3月時点)

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