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トラブルの芽を摘む管理職の直覚

中山大嘉俊

トラブルの芽を摘む管理職の直覚 [第11回] 「それぐらいのことで…」

NEW学校マネジメント

2019.10.09

トラブルの芽を摘む管理職の直覚

[第11回] 「それぐらいのことで…」

大阪市立堀江小学校長
中山大嘉俊

『リーダーズ・ライブラリ 』Vol.11

「それぐらいのことで…」

「これはいじめと違うんですか!」

 保護者からよくある苦情です。子供同士のトラブルでは、事情を丁寧に聞き取って事実を確認し指導やサポートをしていきます。ゼロ・トレランスではありませんが、それが“いじめ”に当たるか否かを学校として明確にしておかないと、その都度対応がぶれて混乱します。今は、子供が少しでも「嫌だ」(精神的な苦痛)と感じたのであれば、ふざけ合いであってもいじめだと判断するのが一般的です。

いじめを助長する担任の言動

「先生はひいきしている」

 担任には特別扱いしているつもりは毛頭なかったのですが、特定の子供を「~ちゃん」と下の名前で呼んでいたので、そう受け取る子供がいたのです。

 子供は、担任をはじめ教員をよく観察し、チェックし、時には真似ます。次のような担任の言動は、“スクールカースト”やいじめの温床になりかねず、「いじめに加担した」と言われても仕方がありません。教員に具体的な事例をもとに参加型の研修をするなどして、そのリスクを減らします。

○必要以上に子供を「いじる」…「先生もしている」と、クラスのお調子者を周りが「いじり」始め、それが繰り返されて本人が苦痛を感じる。

○レッテルを貼る…「自己チュー」「ダメな子」などと子供にレッテルを貼ったり、自分と合わない子供を遠ざけたりすることで、その子供が周りから疎んじられ孤立する。

○対応や扱いに「格差」がある…弱い子の味方をする、勉強ができない子につきっきり、などといった場合に、子供が感じる「格差」が原因でいじめが起きてしまう。

○他の子供と比べる、「競争」を強調する…何事にも「競争」させたり、「一番はA さん」、「B 君はできるのに」と比べることで“できない子”がいじめのターゲットになる。

○褒めるよりも小言や注意が多い…子供が個々のマイナス面にばかり着目するようになり、学級の雰囲気が殺伐とし楽しくなくなる。

いじめ調査にあたって

「私たちは信用されていない」

 ある子供の言葉です。調査の目的は言うまでもなくいじめの実態把握で、抑止力やいじめ対策の検証データになるといった意味合いもあります。一方で、子供は普段いじめと意識していないことでも無理に“答え”を探すために、負の感情が強化されたり、調査自体に不信感を抱いたりします。「なぜアンケートをするのか」、子供たちが納得する説明が必要です。

 いじめに関する内容があれば、些細なことであっても、当該の子供や関係の子供、必要に応じて保護者や第三者から聞き取るなどして状況や事実関係を正確に把握します。ただ、かなり前の出来事だと確認が難しいですし、虚偽の記述や加害で名指しされた子供がすっかり忘れている可能性もありますので、事前にそのような場合の対応を決めておきます。

 この過程でよくトラブルになるのが「皆の前で調べられた」「連絡は『○○さんをいじめた』だけ」といった“聞き取り方”と“保護者への知らせ方“です。教員が複数で聞き取ったことにも「犯人扱いだ」と怒る親もいます。保護者はいじめというだけで冷静でいられなくなるものです。あらかじめいじめの判断基準とともに、いじりやからかいから恐喝といった犯罪行為までいじめにはレベルがあることと、それに応じた指導があることを周知徹底しておく必要があります。なお、一連のプロセスを経ていじめが解決しても、子供や保護者は忘れてはいません。このことにも気を配る必要があります。

いじめ対応のNG

「訴えても何もしてくれなかった」

 いじめに対しては、被害者の側に立ち、把握した事実に基づいて迅速にチームで対処する等が大切ですが、キーパーソンはその入り口にいる担任です。次のように対応が拙いといじめがエスカレートしたり、被害者が不登校になったりしたりします。管理職にも初期の報告がなく対応が後手に回ります。保護者が管理職に直接いじめ被害を訴えてきた場合には、担任への不信がないか考えながら対応します。

•「見た限りいじめはありません」
…自分が気付かないのでいじめの存在を否定する。

•「このくらいはよくあるよ」
…子供は悩んでいるのに「些細なこと」と軽視する。

•「あなたも悪いんじゃないの」
…「被害者にも問題があるのでは」という見方をする。

•「○○をいじめただろう」
…加害者の言い分を聞かずに一方的に決め付けて責める。

•「お前たちも加害者だ」
…傍観者にも正論をふりかざして感情的に怒る。

•「さあ仲直り!」
…形式だけの話合いで当事者同士の握手で解決した気になる。 など

対応力を磨く

 いじめを見過ごさないためには、担任に余裕が必要です。そのため、管理職が働き方改革をリードして教員の業務分担や事務などの軽減に努めます。また、いじめ対応やソーシャルスキルなどの研修も必要ですが、実際に子供と関わる中での省察が見方・考え方を広げ、いじめを見抜く感性や観察力を磨きます。そのためにも、同僚や管理職からの多様な意見は欠かせません。トラブル対応で当該の教員と学年教員、管理職とが知恵を出し合うのは勿論ですが、子供に関する情報交換を学年会議に位置付ける、交換授業や合同授業などを増やし促進するなどして、他から学べる環境を校内につくることが大切です。

 

Profile
大阪市立堀江小学校長
中山大嘉俊
なかやま・たかとし 大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。

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大阪市立堀江小学校長

大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。(2019年3月時点)

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