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トラブルの芽を摘む管理職の直覚

中山大嘉俊

トラブルの芽を摘む管理職の直覚 [第7回] 「あれほど言ったのに・・・・・・」

NEW学校マネジメント

2019.10.01

トラブルの芽を摘む管理職の直覚

[第7回] 「あれほど言ったのに・・・・・・」

大阪市立堀江小学校長
中山大嘉俊

『リーダーズ・ライブラリ 』Vol.7

「あれほど言ったのに……」

 「普段、言うとおりにしないのに、困ったときにだけ“校長”と言う」といった愚痴をよく耳にします。こうしてほしいという気持ちで言葉をかけても、思ったとおりに動かないといった悩みは多いものです。校長として不甲斐無い自分に腹を立てることもあるでしょう。何だか、新任教員が子供への指示が通らなくて悩んでいる姿と似ています。決定的な違いは、学校は組織でありその責任者が校長、相手は給料が支払われている“部下職員”だということです。「言うことを聞かない」原因には、①納得がいかない、②理解していない、③力不足でできない等のことが考えられます。こんなときこそ、気になる教職員のタイプに応じて、校長から距離を縮める必要があります。

「納得できない」背景

 教員になった教え子から「目一杯しているのに、さらにしんどい仕事を校長が押し付けてくる」という相談を受けました。溜まっている不満を聞くだけ聞いて「校長に話をしたら」と言う他ありませんでした。また、「こうあるべき」との思いが強く仕事に意欲的な教職員ほど、筋が通らないと感じた指示には「おかしい」と反発するきらいがあります。頼もしくも思うのですが節度ある発言も大切です。扱いに迷います。

 直接的な反発は、教職員と校長との関係改善の端緒となります。まずは、そうさせた原因を自分に求め、日頃の仕事ぶりに「有難う」や「大変だったでしょう」といった感謝やねぎらいを伝えていたかなどを振り返ることです。次に、何がひっかかるのか、何が不満なのかを、私なら直接尋ねます。反感があれば頭から否定的に受け取るので、正論であっても話は入りにくいでしょうし、「先生の考えは理解している」と言っても疑うだけでしょう。言うことを聞かないだけの理由があるはずなので、それを聞きながら正当な部分は認め、「でもね……」と対話をつなげて溝を少しでも埋めるようにします。反省に基づいたその後の声掛けは欠かせません。

「分かったつもり」「伝えたつもり」

 指示や助言、共通の作業などに対して、理解しないまま仕事を進める教職員がいます。何度か重なると「言ったとおりにしない」と周りから烙印を押され孤立化が進みます。このような傾向のある教職員には、指示を出すときに「今お願いした内容を具体的に言ってみて」と、自分の言葉で説明させるのも一案です。分かっていなかった箇所が互いに分かるので、そこを再度、確認し合えばよいのです。その後の「進んでいる?」「何か困っていない?」といったフォローが大切です。

 ところで、研究発表のプレゼンを作った教員が校長に「おもしろくない。ダメ」と一蹴されたとしたら、その教員はどこをどう改善してよいのか分からないままです。こういった酷な扱いは別として、実は自分の説明が十分でないのに「伝えたつもり」になっていたことも考えられます。また、聞き手は自分なりの理解をしますので、伝えたかったこととは違った解釈がされていることもあります。イメージや考えなどを共有してもらうためには、具体的な事例や見本を示して「こういうものを」と明確に伝えたか、5W1Hに基づいて伝えたかなどの自己点検が必須です。

多くの力を借りる

 若手教員の「できない」を校長だけではなかなかカバーできません。そこで、ミドルリーダーなどの力を借ります。「やってみせ……」という山本五十六の名言がありますが、「やってみせ」てもらう、経験談も交えてその仕事の意義や価値を「言って聞かせて」もらう、ファシリテートして「させて」みながらフォローしてもらう……。教える側も理解が深まりますので相乗効果が期待できます。

 また、校長が授業研究の内容に口を出さず教員に任せて、自身は予算や外部人材の確保などの環境づくりに徹したICTの研究モデル校の事例では、参画意識が高まる、目標達成に向かっての教職員間の意思疎通が活発になる、ベテラン教員が授業のデザインをし若手がICTに関する知識やアイデアを述べて指導案を作るという相補的な関係が促進する、外部とのネットワークが生まれるなどの成果がみられます。互いの実践のよさの交流、教員の頑張りの“見える化”も図られており、人事異動により主要メンバーが交代しても自律的な授業研究が進められています。

人は簡単には変わらない

 面談で私の話に「うんうん」と相槌をする若手教員がいました。不快に感じる人もいるだろうから「はい」か「ええ」だと指導したのですが、数日後、保護者との電話でも変わっていませんでした。また、ミスしたり、注意されたりしたときに、言い訳ばかりで「すみません」が言えない教員がいます。言い訳をしてしまう子供の指導を例にゆっくりと考えさせたのですが、期待した結果には至っていません。

 校長として「ゆったりと構えよう」と自戒しています。校長がカリカリすると、それが教職員全体に広がり、マイナスが大きいからです。教職員一人一人と意思疎通を欠かさず、期待を込めて、指導・助言する、励ます、見守る、力を借りて育てる……。仕事や人間関係のスキルの積み重ねができる環境を整えて、その教職員が周りに認められる、子供が変容するといった成功体験を味わい、自身の変化を自覚することで資質も変わっていくのでしょう。根競べです。

 

Profile
大阪市立堀江小学校長
中山大嘉俊
なかやま・たかとし 大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。

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大阪市立堀江小学校長

大阪市立小学校に40年間勤務。教頭、総括指導主事等を経て校長に。首席指導主事を挟み現任校は3校目。幼稚園長兼務。大阪教育大学連合教職大学院修了。スクールリーダー研究会所属。(2019年3月時点)

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