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スクールリーダーの資料室 新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)〈抜粋〉

NEWトピック教育課題

2019.12.09

スクールリーダーの資料室
新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)〈抜粋〉

令和元年6月25日 文部科学省

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.5 2019年9月

1.新時代における先端技術・教育ビッグデータを効果的に活用した学びの在り方

(2)新時代に求められる教育とは

【新時代の教育の方向性】

 上記のようにAI等の技術革新が進んでいく新たな時代においては、人間ならではの強み、すなわち、高い志をもちつつ、技術革新と価値創造の源となる飛躍的な知の発見・創造など新たな社会を牽引する能力が求められる。また、そのような能力の前提として、文章の意味を正確に理解する読解力、計算力や数学的思考力などの基盤的な学力の確実な習得も必要である。

そのためには、

① 膨大な情報から何が重要かを主体的に判断し、自ら問いを立ててその解決を目指し、他者と協働しながら新たな価値を創造できる資質・能力の育成

② ①を前提として、これからの時代を生きていく上で基盤となる言語能力や情報活用能力、AI活用の前提となる数学的思考力をはじめとした資質・能力の育成

につながる教育が必要不可欠である。

【公正に個別最適化された学び〜誰一人取り残すことなく子供の力を最大限引き出す学び〜】

 また、子供の多様化に正面から向き合うことが、新たな時代においてはますます重要となる。

 現状においても、不登校等の理由によって、他の子供とともに学習することが困難な子供の増加、自閉症スペクトラム(ASD)、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)といった発達障害の可能性のある子供や、特定分野に特異な才能を持つ子供など、多様な特性を持った子供が同じ教室にいることが見受けられる。また、国内に在留する外国人の増加に伴い、日本の公立学校(小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校)に在籍する子供の中で、日本語指導が必要な子供も大きく増えている。

 このような多様な子供が誰一人取り残されることなく未来の社会で羽ばたく前提となる基礎学力を確実に身に付けるととともに、社会性・文化的価値観を醸成していくことが必要である。このためには、知・徳・体を一体的に育む日本の学校教育の強みを維持・発展させつつ、多様な子供の一人一人の個性や置かれている状況に最適な学びを可能にしていくこと、つまり、「公正に個別最適化された学び」を進めていくことが重要である。

(3)教育現場でICT環境を基盤とした先端技術・教育ビッグデータを活用することの意義

 (2)で記載した教育を実現する上で、学校でICT環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータを活用することは、これまで得られなかった学びの効果が生まれるなど、学びを変革していく大きな可能性がある。

 ICT環境を基盤とした先端技術や教育ビッグデータを活用することで得られる具体的な効果として期待できるものを類型化すると以下のとおりである。

【学びにおける時間・距離などの制約を取り払う】
 先端技術を活用することで、時間や距離の制約から自由になることが増え、各場面における最適で良質な授業・コンテンツを活用することができる。

【個別に最適で効果的な学びや支援】
・個々の子供の状況に応じた問題を提供するAIを活用したドリル教材等の先端技術を活用した教材を活用することで、繰り返しが必要な知識・技能の習得等に関して効果的な学びを行うことが可能になる。

・子供の多様で大量の発言等の学びに関する情報を即時に収集、整理・分析することで、他者との議論が可視化できるようになり、より深い学びを行うことが可能になる。

・センサ(感知器)等を使用して様々な情報を計測する技術(センシング技術)を活用することで、子供の個々の状況がこれまでにない精度で客観的かつ継続的に把握できるようになり、子供の抱える問題の早期発見・解決が可能になる。

【可視化が難しかった学びの知見の共有やこれまでにない知見の生成〜教師の経験知と科学的視点のベストミックス(EBPMの促進)〜】
 これまでにない詳細さと規模で学びの記録が技術的に可能となることで、教育の根幹をなす学習の認知プロセスが見えて、これまで経験的にしか行えなかった指導と評価等が、学習のプロセスと成果に対する最大限正確な推定を根拠に行えるようになる可能性がある。

【校務の効率化〜学校における事務を迅速かつ便利、効率的に〜】
 先端技術を活用することにより自動的かつ継続的なデータの取得や、情報共有の即時化が可能となり、校務の効率が手作業の時より圧倒的に向上する。これにより、教員の事務仕事にかける時間を減少し、子供と触れ合う時間を増加させることが可能となる。教員勤務実態調査(平成28年度)において、小・中学校教師の勤務時間は、平成18年度に実施した同じ調査と比較しても増加しているところである。また、OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018において、小・中学校ともに日本の教師の1週間当たりの仕事時間の合計は参加国の中で最長で、「一般的な事務業務(教員として行う連絡業務、書類作成その他の事務業務を含む)」に係る時間が参加国の平均と比べて長い傾向にあることから、ICT環境を基盤とした先端技術・教育ビッグデータを活用することは、こうした課題を解決し、教師の働き方改革につながることが見込まれる。

 上記の効果は現時点の技術から想定される効果を示しているものであり、今後の技術の進展によって更に現在想像もされていない効果が次々と加わることが想定される。このため、子供の学びの質を高めていくために学びに先端技術を導入することは、“あった方がよい”という存在ではなく、“なくてはならない”存在となっていくことが考えられる。

 なお、学校に先端技術を導入することで、「教師がAI等の機械に代替されるのではないか」との意見もあるが、AI等を活用して行える場合は上手に活用し、むしろ人間にしかできないことに教師の役割はシフトしていくことになると考えられる。つまり、知識・技能と思考力・判断力・表現力等を関連付け、教育の専門家たる教師が見取りながら効果的に学ぶことや、学校や学級という集団のメリットを生かし、教師の発問等を通じて何が重要かを主体的に考えたり、地域や民間企業・NPO等をはじめとした多様な主体との関わり合いの中で課題の解決や新たな価値の創造に挑んだりすることは、いかに先端技術が進展しても人が人からしか学び得ないことである。このような、人が人から直接学ぶことができる希少性から、教師はこれまで以上に重要性が増すと考えられる。

 

2.学校現場における先端技術・教育ビッグデータの効果的な活用

遠隔・オンライン教育
(機能)遠隔システムを用いて、同時双方向で学校同士をつないだ合同授業の実施や、専門家等の活用などを行う。また、授業の一部や家庭学習等において学びをより効果的にする動画等の素材を活用する。
(効果)学習の幅を広げる、学習機会の確保
(留意点)受信側の子供たちへの配慮など

デジタル教科書・教材
(機能)これまで紙によって提供されてきた教科書や教材がデジタル化され、大型提示装置やタブレット端末等で活用できるようになる。また、動画やアニメーション等のデジタル環境ならではの多様な表現により効果的な学習が可能となる。
(効果)動画・アニメーション等の活用による興味・関心の喚起
(留意点)効果的な授業への組み込み

協働学習支援ツール
(機能)協働学習支援ツールとは、子供の端末と教師の端末・電子黒板等を連携し、文書・画像ファイル等の教材・課題の一斉配付のほか、画面共有・制御等を行うことにより、個々の子供の考えをリアルタイムで教師と子供間、子供同士、学級全体で共有することを可能とするものである。
(効果)個々の状況に応じた声がけ等子供同士の考えの比較・議論活性化
(留意点)アクセス集中に対応する代替策の用意

AR・VR
(機能)AR(Augmented Reality:拡張現実)技術を活用し、現実世界に追加情報を付加することで、情報をリアルタイムで提供することができる。また、VR(Virtual Reality:仮想現実)技術を活用し、様々な形で作られた現実のような世界に、ユーザー自身が入り込む感覚になることで、現実では体験できないことに関して、リアルな疑似体験をすることができる。
(効果)調べ学習等への効果的活用(AR)、疑似体験による効果的な指導(VR)
(留意点)機器操作中の事故に留意等

AIを活用したドリル
(機能)AIを活用したドリルは、各自の習熟度や状況に応じた問題を出題・自動採点するものである。
(効果)習熟度に応じた学習、自動採点による教師の負担軽減
(留意点)学習分野、使う場面が限定

センシング
(機能)センサ(感知器(マイクも含む。)を用いて、意見交換を行う子供の会話等の情報を計測・数値化し、学びの状況の分析に活用する。
(効果)発話量や視線、教師の指導内容などのデータ収集。収集したデータに基づく指導
(留意点)従来の見取りを通じた観察を補強するために活用

統合型校務支援システム
(機能)統合型校務支援システムとは、「教務系(成績処理、出欠管理、時数管理等)、保健系(健康診断票、保健室来室管理等)、学籍系(指導要録等)、学校事務系などを統合した機能を有しているシステム」であり、教職員の校務を電子化し、効率的に処理するためのものである。
(効果)蓄積した情報による書類作成の負担軽減、情報共有によるきめ細やかな指導
(留意点)システム活用を前提とした業務改善が必要

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