シリーズ・学びを変える新しい学習評価
【新刊紹介】『新しい学びに向けた新指導要録・通知表〈中学校〉』(ぎょうせい)――指導要録の意義と役割
授業づくりと評価
2019.12.05
(株)ぎょうせいはこのたび、『2019年改訂指導要録対応 シリーズ・学びを変える新しい学習評価』(全5巻)を一斉刊行いたします。新しい指導要録にもとづく学習評価は、新学習指導要領の完全実施と同じく、小学校は2020年度、中学校は2021年度スタートします。
ここでは、特に『シリーズ・学びを変える新しい学習評価 文例編 新しい学びに向けた新指導要録・通知表〈中学校〉』の巻から内容の一部を抜粋してお届けいたします。(編集部)
指導要録の法的位置付け
① 指導要録とは
◇指導要録はその作成が法的に義務付けられている公文書である。
・校長は、その学校に在学する児童等の指導要録(学校教育法施行令第31条に規定する児童等の学習及び健康の状況を記録した書類の原本をいう。以下同じ。)を作成しなければならない。
・校長は、児童等が進学した場合においては、その作成に係る当該児童等の指導要録の抄本又は写しを作成し、これを進学先の校長に送付しなければならない。
・校長は、児童等が転学した場合においては、その作成に係る当該児童等の指導要録の写しを作成し、その写し(転学してきた児童等については転学により送付を受けた指導要録(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律施行令(平成26年政令第203号)第8条に規定する園児の学習及び健康の状況を記録した書類の原本を含む。)の写しを含む。)及び前校の抄本又は写しを転学先の校長、保育所の長又は認定こども園の長に送付しなければならない。(学校教育法施行規則第24条)
② 様式の決定者と作成主体
◇指導要録の様式を決めるのは学校設置者の教育委員会である。
現実には文部科学省が学習指導要領の改訂ごとにその趣旨を踏まえた「指導要録の様式の参考案」を提示し、それをもとにして自治体が様式を作成している。それは児童生徒が自治体を転出・転入する場合に学籍等の記録として指導要録も移動するが、その様式が自治体ごとに大きく異なると不便が生じるという事情を踏まえたものである。
◇指導要録の作成は各学校の校長の責任の下に行われる。
③ 保存期間
◇ 指導要録及びその写しのうち入学、卒業等の学籍に関する記録については20年間、その他の記録は5年間、保存しなければならない。
指導要録の機能
◇指導要録は指導機能と証明機能という二つの機能を持つ。
指導要録は、学校が在学する児童生徒の学習及び健康の状態を記録した書類の原本で、児童生徒の学習及び健康の記録であると同時に、進学や転校・転学の際にそれ以前に児童生徒が教育を受けていたことを証明するものである。
指導要録の活用(中学校)
◇ 指導要録に記述されている観点別評価と各教科の評定は、一人一人の児童生徒についての次の学年や学校段階における指導の改善に活用されるべきものである。
一人一人の児童生徒の発達や成長をつなぐ視点で資質・能力を育成し、学習内容を確実に身に付ける観点から、個に応じた指導を一層重視する必要がある。観点別評価は学習の達成状況を分析的に捉えることによって学習の改善を要する点がどこにあるかをきめ細かに示すもの、評定は学習指導要領に定める目標に照らしてその実現状況を総括的に評価するものである。それらの評価を結果として見るのではなくて、次の段階の指導へとつなげていくことが求められている。
◇高等学校入学者選抜において利用される調査書の原簿となる。
しかし、本来中学校における学習評価は学習や指導の改善を目的として行われているものである。評価の目的が高校入学者選抜に用いることであってはならない。
「新しい学習指導要領の趣旨を踏まえた各高等学校の教育目標の実現に向け、入学者選抜の質的改善を図るため、改めて入学者選抜の方針や選抜方法の組合わせ、調査書の利用方法、学力検査の内容等について見直しを図ることが必要である」(「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」p.22)