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資質・能力を学校現場でどう捉え実践するか 村川雅弘(甲南女子大学教授)

NEWトピック教育課題

2019.05.21

新教育課程ライブラリ Vol.2 2016年

求められる資質・能力を改めて考える

 先行き不透明な時代を生き抜かなければならないこれからの子どもたちにどのような資質・能力を学校教育の中で育成すべきかを検討した「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」の論点整理(平成26年3月)及び次期学習指導要領改訂の方向性を明確に示した中央教育審議会教育課程企画特別部会の論点整理(平成27年8月)の概要については、本シリーズのパイロット版の中で概説した。未読の方は、「ぎょうせいオンライン」(http://shop.gyosei.jp/)の『新教育課程ライブラリ』のパイロット版を立ち読みしていただくことを勧める。

 この二つの論点整理の間で示されたのが、中教審に対する下村文科大臣(当時)諮問である。筆者が一番注目したのが、「自立した人間として多様な他者と協働しながら創造的に生きていくために必要な資質・能力」の中の「多様性を尊重する態度」である。

図1 大臣諮問で示された資質・能力の例

 いかなる難題課題に出くわしても決して諦めることなく、何とか解決しようとする意識・意欲が求められる。少子化の時代だからこそ、一人ひとりが持ち味を発揮し、互いの考えを出し合い、繋げ合うことで、正解が定まらない・答えが一つではない課題に対してのよりよい解を創出することができる。その際に大切なことは、多様性を尊重する態度である。異なる個性がぶつかり合うからこそ新しいアイデアが産み出される。チームワークはもちろんのこと、リーダーシップにおいてもメンバー一人ひとりの個性やよさを理解しているからこそ、それらをうまく引き出し、繋げ、カタチにし、組織としてよりよいものを作り出すことができる。互いに理解し合おうとするためにコミュニケーション能力が求められる。豊かな感性や優しさ、思いやりも他者を慮る気持ちからわき出るものである。

資質・能力論に振り回されない

 これまで「自ら考える力」「自己教育力」「生きる力」「確かな学力」などの様々な学力観が示され、学校現場はその度に理解や対応を余儀なくされてきた。それに呼応するかのようにこれらの文言が各学校の教育目標や研究課題に盛り込まれてきた。今回示された「資質・能力」に対して「またかっ!」と思われている先生方は少なくないのではないだろうか。

「資質・能力」という表記に戸惑いを感じている方も多いだろう。本来、「資質」とは「能力」を含む概念で、どちらかといえば先天的に備わっているものとされている。資質・能力検討会論点整理の中では、適切な教育活動によって「更に向上させること」や「一定の資質を後天的に身につけさせること」ができると捉えている。そこで、あえて両者を分けずに「育成すべき資質・能力」と一体的に扱っている。学校

現場においても「何が資質で、何が能力か」といった論争に時間やエネルギーを費やすことのないように配慮してほしい。

 筆者は整理を試みた(注)。実はこれまでの様々な学力観(今後は、資質・能力観と呼ぶべきか)には共通点が多い。表現や位置づけ(上位項目か下位項目か)は異なるが、おおよそ三つに整理できる。義務教育から高等学校段階で共通性が高いのは「問題解決力」と「対人関係形成力・協調性・コミュニケーション力」、「自律性・主体性」である。ほぼすべての資質・能力観に含まれる。本シリーズVol.1の特集であった

「アクティブ・ラーニング(課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習)」とほぼ同義と捉えることができる。まさに、先行き不透明な時代を生き抜く子どもたちに求められているものは「様々な課題に対して主体的かつ協同的に既有の知識や技能を活用して問題解決を図っていく力」である。

子どもの姿から具体的に考えてみる

 資質・能力に関する諸説に翻弄されるのではなく、まず、目の前の子どもたちをみてほしい。筆者が所属している鳴門教育大学教職大学院では、現職院生の場合、置籍校の課題を様々な学力調査や人間関係調査、学校評価などを踏まえつつも、日々かかわっている児童生徒の実態分析を同僚の教職員と行う。その上で、授業改善や学校改革の研究計画を立て、取り組む。例えば、図2はある中学校の生徒の実態分析の成果物である。縦軸は「よさ」と「課題」、横軸は「生活・行動」と「学力・学習」からなる「概念化シート」で整理している。同形式のアンケートを全教職員に配布し、自由に記述してもらい、それをまとめている。研修時間が確保できる場合には、5~6人のチームで各種調査結果を持ち寄り、読み解き、日々の子どもの様子を思い浮かべ、気づきを付箋に記述し、KJ法で分析・整理することを奨励している。このような作業を通すことで、子どもたちに何が足りないのかが明確になってくる。教育課程全体を通して育成すべき資質・能力が自ずと自分たちの言葉で明らかになってくる。

図2 概念化シートで自校の子どもの実態を整理

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