スクールリーダーの資料室

文部科学省

スクールリーダーの資料室 これまでの審議を踏まえた論点取りまとめ(素案)

トピック教育課題

2020.03.23

義務教育9年間を見通した教科担任制の在り方について

(論点)

1.小学校における教科担任制の導入により、教材研究の深化や授業準備の効率化による教科指導の専門性や授業の質の向上、教師の負担軽減が図られ、児童の学力の向上、複数教師による多面的な児童理解による児童の心の安定が図られるとともに、小中学校間の連携による小学校から中学校への円滑な接続などが実現できる。義務教育9年間を見通した指導体制の整備に向けて、小学校高学年の児童の発達の段階、外国語教育をはじめとした教育内容の専門性の向上などを踏まえ、小学校高学年からの教科担任制を本格的に導入すべきである。

2.このため、小学校から中学校までの義務教育9年間を見通した教育課程・指導体制の一体的な検討(教員定数、教員養成・免許・採用・研修、教育課程などの在り方を一体的にどう考えるか)が必要であり、特に以下の検討を行うべきである。その際、一律的な方式ではなく、学校規模の観点も含めて、各学校や地域の実情を踏まえ柔軟な教科担任制が実施できる在り方が必要である。

(1) 義務標準法の在り方も含めた教科担任制に必要な教員定数の確保の在り方

(2) より教科指導の専門性の高い教師が指導できる仕組みを作る観点から、小学校における教師間の分担の工夫に加え、中学校における担当授業時数や部活動指導時間等を踏まえた教師の在り方や小学校と中学校の行き来の在り方など、小学校間の連携や小中学校の連携の在り方

(3) 上記の点や教科指導の専門性を高める教員養成・研修の仕組みの構築や教科指導・探究活動等の専門性の高い教師の学校種を超えた配置の推進など、教育職員免許法の在り方も含め、義務教育9年間を見通した養成、採用、研修、免許制度、人事配置の在り方

(4) 小規模校においても高学年段階の教科担任制

 3.また、小学校高学年以降の専門性の高い教育を見据えて、小学校中学年までに基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させるための方策を含めた、義務教育9年間を見通した教育課程の在り方の検討を行うべきである。

⇒2.(3)については教員養成部会において検討を行い、特別部会に報告する。3.については教育課程部会と特別部会において連携して検討を行う。特別部会において、その他の検討事項について検討を行うとともに、両部会の検討結果とあわせて取りまとめを行う。

教育課程の在り方について

(論点)

I 学力について

1.児童生徒の学力向上に取り組むに当たっては、まず、児童生徒の学習の定着状況を丁寧に把握することが必要である。その際に、全国学力・学習状況調査や各地方公共団体が実施する学力調査等をより効果的に活用していくことが重要である。

 全国学力・学習状況調査は、一人一人の学習の過程を見取り、よりきめ細かな指導につなげるために全ての子供たちの学力・学習状況の把握を行うことを目的として実施しており、調査結果を活用した学校全体での指導改善の取組が定着している。一方、学校や設置管理者の平均得点以外のデータを用いた多角的な分析とその活用については、学校や設置管理者によって取組に大きな差ガ見られる。このため、各学校・教育委員会や保護者等の間において、全国学力・学習状況調査の趣旨や目的についての深い共通理解を図りつつ、より一層効果的に調査結果を活用し、一人一人のきめ細かい指導改善になげていく取組を促す必要がある。

 また現在、多くの各教育委員会がそれぞれの目的に照らして独自の学力調査等を実施している。調査は授業時間内に行われることが多いため、その対象学年や回数、全国学力・学習状況調査も含めた各調査間の役割分担などについて、調査の適切な実施の観点から設置管理者において検証し、必要な見直しを行う必要がある。

 なお、各調査等が把握できるのは新学習指導要領が育成を目指す資質・能力の一部のみであることに留意しつつも、学習の定着状況を示す客観的な指標の一つとして調査結果を活用することは、学力向上に関して客観的な根拠を重視した教育政策(EBPM)を推進する観点からも重要である。

2.児童生徒の学力向上は、学校がチームとして取り組むべきことである。そのためには、管理職である校長、教頭等の役割が重要であるが、それだけではなく、教師全員がカリキュラム・マネジメントに参画することが重要になる。1.で言及した各種調査等の活用をカリキュラム・マネジメントに位置付けることも、各学校の学力に関わる課題を解決するためには有効である。また、担任教師による良好な学級経営等も、学びの質を高める上で重要である。さらに、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)を導入することで、児童生徒の学力向上についても地域と学校が目標を共有し、連携して取り組むこと等も考えられる。

3.今般改訂された新学習指導要領では、各教科等の指導を通して育成を目指す資質・能力を3つの柱で再整理しており、この資質・能力の3つの柱は確かな学力に限らず、知・徳・体にわたる「生きる力」全体を捉えて、共通する重要な要素を示したものである。そのため、児童生徒の学力向上に取り組む際には、学校教育において児童生徒の資質・能力をバランスよく育成することが必要である。

4.各教科等において育成を目指す資質・能力を確実に育むためには、例えば、教科等を学ぶ本質的な意義を伝えることにより児童生徒の学習意欲を向上させることや、教科学習の主たる教材である教科書の記述や各種資料を適切に読み取る力を育成することも重要となる。また、教材自体についても、資料の内容を適切に読み取れるような工夫を施すべきである。

5.また、ステークホルダーが連携することも有効であり、例えば、国立大学の附属小学校が、自校の取組を地域の拠点として普及させることも考えられる。

6.以上に加え、各学校において児童生徒の資質・能力を育成するための取組を充実させるために、以下の検討を行うべきである。

(1) 全ての児童生徒にこれからの時代に求められる資質・能力を育むため、児童生徒一人一人を見ていくきめ細やかな対応策

(2) 小学校高学年以降の専門性の高い教育を見据え、小学校中学年までに、基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得させるための方策【一部再掲】

II STEAM教育の推進について

1.教育再生実行会議第11次提言において、STEAM教育の推進が挙げられた。本提言において、STEAM教育は「各教科での学習を実社会での問題発見・解決にいかしていくための教科横断的な教育」とされている。このSTEAM教育については、国際的に見ても、各国で定義が様々であり、STEAMのAの範囲をデザインや感性などと狭く捉えるものや、芸術、文化、経済、法律、生活、政治を含めた広い範囲で定義するものもある。

2.STEAM教育は、課題の選択や進め方によっては生徒の強力な学ぶ動機付けにもなるが、STEAM教育を推進する上では、高等学校の多様な実態を踏まえる必要がある。科学技術分野に特化した人材育成の側面のみに着目してSTEAM教育を推進すると、例えば、学習に困難を抱える生徒が在席する学校においては探究学習を実施することが難しい場合も考えられ、学校間の格差を拡大する可能性が懸念される一方、教科等横断的な学習を充実することは学習意欲に課題のある生徒たちにこそ、非常に重要である。

 このため一般市民として必要となる資質・能力の育成を志向するSTEAM教育の側面に着目し、STEAMのAの範囲を芸術、文化、経済、法律、生活、政治を含めた広い範囲で定義することとしてはどうか。

3.このような形で捉えれば、STEAM教育は高等学校の新学習指導要領に新たに位置づけられた「総合的な探究の時間」や「理数探究」と、

・実生活、実社会における複雑な文脈の中に存在する事象などを対象として教科等横断的な課題を設定する点

・課題の解決に際して、各教科・領域で学んだことを統合的に働かせながら、探究のプロセスを展開する点

など多くの共通点があり、各高等学校において、新学習指導要領に基づいた教育を着実に実施することが重要である。

 そのため、新学習指導要領の下、地域や高等教育機関、行政機関行政機関、民間企業等と連携・協働しつつ、各高等学校において生徒や地域の実態にあった探究学習を充実することが重要である。

4.なお、STEAM教育などの教科等横断的な学習の前提として、各教科等の学習が育成も重要であることは言うまでもない。各学校において各教科等において育成を目指す資質・能力を確実に育むとともに、小学校、中学校、高等学校などの各学校段階を通して、各教科等の学習を円滑に接続することが求められる。そのためには、教科学習の主たる教材である教科書の記述や各種資料を適切に読み取る力を育成するとともに、教材自体についても、資料の内容を適切に読み取れるような工夫を施すべきである。【一部再掲】

⇒引き続き、教育課程部会において、Iの6.について検討を行い、新しい時代の高等学校教育の在り方ワーキンググループとも検討状況を共有しつつ、検討結果を特別部会に報告する。

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