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実践・カリキュラムマネジメント講座

NEW学校マネジメント

2019.07.29

実践・カリキュラムマネジメント講座

田村知子(岐阜大学大学院准教授)/監修

『新教育課程ライブラリ Vol.5』2016年5月)

 

  本稿では、わが校の強み・弱み、教育資源、実践課題などを分析し、わが校を知り改善を図る手法として、田村知子・岐阜大学大学院准教授によるカリキュラムマネジメント・モデルを活用して、リーダーが、または教職員が協働して行う分析手法を解説します。文部科学省の中央研修や各地の教育委員会・学校で実際に取り組まれているものです。今年度の学校経営や授業改善などにお役立てください。(編集部)

 

各要素についての解説

1[要素ア]教育目標の具現化

 学校のミッション(使命)は、各家庭・地域から預かる子どもたちを、よりよく成長させることです。どのような教育的成長を目指すのか、法令や学習指導要領、子どもや学校、地域の実態を踏まえ、学校としての教育目標を設定します。そのため、「ア」の左に補助的に「法令や学習指導要領等、実態把握、課題設定」の要素を設けました。

 

2[要素イ]カリキュラムのPDCA(Plan-Do-Check-Act)

 目標を具現化するための具体的な手段(教育の内容・方法)が「イ.カリキュラムのPDCA」です。したがって、教育目標はカリキュラムに反映されます(図中、矢印「①反映」)。また、カリキュラム実施の成果は目標の達成度です(図中、矢印「②成果」)。「何のために(ア.目標)」と「何をするのか(イ.カリキュラム)」を対応させて考えます。

 年間のPDCAサイクルにおいては、一般的には、年間指導計画作成までがP(計画)段階です。D(実施)段階とは、単元や授業レベルです。単元レベルや授業レベルにおいても、短期スパンのPDCAサイクルを繰り返すことを表すため、年間レベルの「D」段階に「単元や授業のPDCA」を補助的に位置づけました。

3[要素ウ]組織構造

 カリキュラムマネジメント理論の特徴のひとつは、教育の目標・内容・方法系列の要素(図中「ア」「イ」)と条件整備系列の要素(図中「ウ」「エ」「オ」「カ」「キ」)を対応させ一体的に捉える点にあります。カリキュラムを実際につくり動かしていくためには、「人(人材育成を含む)、物(時間や情報を含む)、財、組織と運営」が必要です。これらを「ウ.組織構造」としました。

 

4[要素エ]学校文化(教員の組織文化と児童生徒の文化、校風文化等の集合)

 ここでいう学校文化は、単位学校の教職員が共有している「組織文化」、児童生徒が共有している「生徒文化」、学校に定着した「校風文化」の集合です。

「組織文化」は「カリキュラム文化」と狭義の「組織文化」に分類できます。文化的要因は、目に見えにくいものですが、カリキュラムに関わる決定や実施、評価に当たって重要な規定要因です。

「文化」は継続的に共有された考え方や行動様式を差しますが、組織内には当然、共有化には至っていないけれど、少なからず組織に影響を及ぼす個人的な価値観も存在します。

 

5[要素オ]リーダー

 マネジメントには「他者を通じてパフォーマンスする」という面があります。校長や副校長、教頭、教務主任、研究主任などのリーダー層は、直接、自分がすべての授業をするわけにはいきません。しかも、ひとたび教室に入れば教師一人ひとりの裁量が大きいのが学校の組織特性です。だからこそ学校では、一人ひとりの教師が、学校としての目標やカリキュラムを十分に理解し納得した上で、主体的自律的に実践に取り組めるようマネジメントすることが求められます。リーダーシップには、授業研究の際に指導・助言するなど、直接的に教育活動に働きかける矢印「⑦リーダーシップ」もあれば、人的・物的環境を整備することで間接的に教育活動を支援する矢印「⑧リーダーシップ」や、学校内の人間関係や校風、さらには共有されている教育観や学習観をポジティブなものに変えることで教育活動を活性化する矢印「⑨リーダーシップ」もあります。

 

6[要素カ]家庭・地域社会等

 「社会に開かれた教育課程」の実現のためには、保護者や地域社会、企業といった外部関係者は、カリキュラムマネジメントに不可欠の要素です。積極的にコミュニケーションを図りながら、教育活動への協力・支援を得て、教育活動の質の向上を目指します。

 

7[要素キ]教育課程行政

 学校の予算権・人事権の拡大や、学校選択制導入など、各学校や各地方自治体の裁量に任される部分が増えています。そのような裁量を前提として、各学校には、目の前の児童生徒にとって最適な教育活動を創造していく営みが求められています。「キ.教育課程行政」は文部科学省や教育委員会を指します。学校として、どのような支援が必要なのか明らかにして、積極的に支援を得たいものです。そのような双方向の関係性を矢印「⑩連携・協働」「⑪規定・支援」で示しました。

 

8 全体について

 このカリキュラムマネジメント・モデルは、教育課程経営論やカリキュラムマネジメント論の先行研究の検討と、監修者自身による量的調査と質的調査による検証を経て開発されたものです。カリキュラムマネジメントを捉える際に考慮すべき要素を示しただけでなく、要素間の関係性が示されている点が特徴的です。分析をする際も、ぜひ、要素間の関係性、相互の影響関係を意識してください。


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(1)勤務校の実践を分析する手法

○ワークシートは、勤務校の実践を分析し、「強み」や「課題」を明らかにすることにお役立てください。

○ワークシートの完成イメージは、分析例(p.54)をご参照ください。

○ワークシートへの記入に際しては、「よくできている点」「達成している点」「強み」については○印をつけ、「不十分な点」「これから取り組みたい課題」については▲印をつける、といった方法で書き分けるとわかりやすくなります(2色のペンで色分けする、または、後で課題に蛍光ペンでラインを引く、という方法もあります)。

○大切なことは「つながり」を見つけることです。何が問題の要因でしょうか。どこを変えれば全体が改善されるでしょうか。矢印を書き込んでいきましょう。

 

(2)勤務校の実践を複数の教職員が共同で分析する手法

○校内の複数の先生方による共同分析を行う場合は、右の分析例のように、ワークシートを模造紙大に拡大し、2色の付箋を使用しながら、KJ法を応用して行うとよいでしょう(よくできている点〈例えばピンク〉と不十分で変えたい点〈例えばブルー〉を異なる色で書き分ける)。

○記入のコツ

①1枚の付箋には1つの事実や考えを書く。

②単語ではなく、単文で書く。

③できるだけ具体的な記述を心がける。

④鉛筆やボールペンではなく、サインペンを使うと後で見やすい。

○学校評価のデータ、学力調査の結果、学校要覧等の資料を準備し、データに基づいて分析するとより正確な分析ができます。

○分析するプロセスにおいて、学校の現状や課題、取り組むべき優先順位等について共有化が進むはずです。一通り分析が終わった段階で、ファシリテーターが、「では、どれから取り組みましょうか」とメンバーに問いかけるとよいでしょう。時間があれば、整理するときに、ワークシートを使用して再びワークショップを行うとよいでしょう。ワークシートの軸は、①緊急性(大←→小)、②重要性(大←→小)、③効果(大←→小)、④取り組みやすさ(大←→小)などを組み合わせるとよいでしょう。

○人数が多い場合は、4~6人程度を1組としたグループを編成しましょう。その場合、グループ編成は、①学年ごと(学級数が多い場合)、②教育課題別(例:言語活動の充実化、総合的な学習の時間、教科、食育、道徳など)などが考えられます。

 

*本ワークシートは、「カリキュラムマネジメント・モデル」が示す要素・要因についてご理解いただいた上で使用されることを想定したものです。「カリキュラムマネジメント・モデル」についての説明は、p50-51を参照ください。

より詳しくは、次の文献をご覧ください。
・田村知子・村川雅弘・吉冨芳正・西岡加名恵編著『カリキュラムマネジメント・ハンドブック』ぎょうせい、2016年(5月下旬刊行)。
・田村知子編著『実践・カリキュラムマネジメント』ぎょうせい、2011年..田村知子「カリキュラムマネジメントのモデル開発」『日本教育工学会論文集』29巻Supple号、2005年、pp.137-140。

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