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スクールリーダーの資料室 誰一人取り残すことのない「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~多様な子供たちの資質・能力を育成するための、個別最適な学びと、社会とつながる協働的な学びの実現~(中間まとめ)【素案】

NEWトピック教育課題

2020.11.07

4.「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性

○ 家庭の経済状況や地域差、本人の特性等に関わらず、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、知・徳・体を一体的に育むため、これまで日本型学校教育が果たしてきた、①学習機会と学力の保障、②社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障、③安全安心な居場所・セーフティネットとしての身体的、精神的な健康の保障、という3つの保障を学校教育の本質的な役割として重視し、これを継承していくことが必要である。

○ その上で、「令和の日本型学校教育」を、社会構造の変化や感染症・災害等をも乗り越えて発展するものとし、「多様な子供たちの資質・能力を育成するための、個別最適な学びと、社会とつながる協働的学び」を実現するためには、今後、以下の方向性で改革を進める必要がある。

○ その際、学校現場に対して新しい業務を次から次へと付加するという姿勢であってはならない。学校現場が力を存分に発揮できるよう、学校や教師がすべき業務・役割・指導の範囲・内容・量を、精選・縮減・重点化するとともに、教職員定数、専門スタッフの拡充等の人的資源、ICT 環境や学校施設の整備等の物的資源を十分に供給・支援することが、国に求められる役割である。

○ また、一斉授業か個別学習か、履修主義か修得主義か、デジタルかアナログか、遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった、いわゆる「二項対立」の陥穽に陥らないことに留意すべきである。どちらかだけを選ぶのではなく、教育の質の向上のために、発達の段階や学習場面等により、どちらの良さも適切に組み合わせて活かしていくという考え方に立つべきである。

(1)学校教育の質と多様性、包摂性を高め、教育の機会均等を実現する

○ 新しい時代を生きる子供たちに必要となる資質・能力をより一層確実に育むため、子供たちの基礎学力を保障してその才能を十分に伸ばし、また社会性等を育むことができるよう、学校教育の質を高めることが重要である。その際、様々な背景により多様な子供たちが、実態として学校教育の外に置かれることのないようにするべきである。特に、憲法や教育基本法に基づき、全ての児童生徒に対し、社会において自立的に生きる基礎や、国家や社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的とする義務教育段階においては、このことが強く求められる。

○ このため、学校に十分な人的配置を実現し、1人1台端末や先端技術を活用しつつ、通常の学級に在籍する発達障害のある児童生徒数の増加、生徒指導上の課題の増加、外国人児童生徒数の増加、子供の貧困の問題等により多様化する子供たちに対応して個別最適な学びを実現しながら、学校の多様性と包摂性を高めることが必要である。その際、現状の学校教育における個の確立と異質な他者との対話を促すことに弱さがあるとの指摘も踏まえ、一人一人の内的なニーズや自発性に応じた多様化を軸にした学校文化となり、子供たちの個性が生きるよう、個別化と協働化を適切に組み合わせた学習を実施していくべきである。

○ 性同一性障害や性的指向・性自認に係る児童生徒が少なからず存在しているとの指摘もある。こうした児童生徒が、安心して学校で学べるようにするため、性同一性障害や性的指向・性自認について、研修を通じて教職員への正しい理解を促進するとともに、学校における適切な教育相談の実施等を促すことが重要である。

○ また、ICT の活用や関係機関との連携を含め、現に学校教育に馴染めないでいる子供に対して実質的に学びの機会を保障していくとともに、離島、中山間地域等の地理的条件に関わらず、教育の質と機会均等を確保することが重要である。

○ このような取組を含め、憲法第14条及び第26条、教育基本法第4条の規定に基づく教育の機会均等を真の意味で実現していくことが必要である。なお、ここでいう機会均等とは、教育水準を下げる方向での均等を図るものではなく、教育水準を上げる方向で均等を実現すべきであることは言うまでもない。

○ 例えば、新型コロナウイルス感染症による学校の臨時休業期間において、一部では「全ての家庭にICT環境が整っていないので、学びの保障のためにICTは活用しない」という判断がなされたという事例や、域内の一部の学校がICTを活用した取組を実施しようとしても他の学校が対応できない場合には、域内全体としてICTの活用を控えてしまった事例もあるが、このように消極的な配慮ではなく、「ICT環境が整っている家庭を対象にまず実施し、そうでない家庭をどう支援するか考える」という積極的な配慮を行うといったように、教育水準の向上に向けた機会均等であるべきである。

○ また、国内外の学力調査では、家庭の社会経済的背景が児童生徒の学力に影響を与えている状況が確認されている。学力格差を是正するためには、社会経済的指標の低い層を幼少期から支援することが重要である。このため、国は、家庭の経済事情に左右されることなく、誰もが希望する質の高い教育を受けられるよう、幼児期から高等教育段階までの切れ目のない形での教育の無償化・負担軽減や、教育の質の向上のための施策を着実に実施することが求められる。

(2)連携・分担による学校マネジメントを実現する

○ 学校が様々な課題に対処し、学校における働き方改革を推進するためには、従来型のマネジメントの下、学校の有するリソースだけで対処するには限界がある。校長のリーダーシップの下、組織として教育活動に取り組む体制を整備することが必要である。その際、校長を中心に学校組織のマネジメント力の強化を図るとともに、学校内、あるいは学校外との関係で、「連携と分担」による学校マネジメントを実現することが重要となる。

○ 学校内においては、教師とは異なる知見を持つ外部人材や、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の専門スタッフなど、多様な人材が指導に携わることができる学校を実現するとともに、教師同士の関係においても、学級担任、教科担任等の役割を適切に分担していくことが求められる。

○ また、コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の導入や地域学校協働本部の整備により、学校が保護者や地域住民等と教育目標を共有し、その理解・協力を得ながら学校運営を行うことができる体制を構築し、地域全体で子供たちの成長を支えていくことが必要である。

○ その他、学校が家庭や地域社会と連携することで、社会とつながる協働的な学びを実現するとともに、働き方改革の観点からも、保護者や地域住民、児童相談所等の福祉機関、NPO、地域スポーツクラブ、図書館・公民館等の社会教育施設など地域の関係機関と学校との連携・協働を進め、学校・家庭・地域の役割分担を文部科学省が前面に立って強力に推進することで、多様性のあるチームによる学校とし、「孤立」した学校から「自立」した学校への変革を実現することが必要である。

○ その実現に向けては、教育課程と関連付けることが求められており、新学習指導要領を踏まえ、教育課程に基づき組織的かつ計画的に各学校の教育活動の質の向上を図ること(カリキュラム・マネジメント)が重要である。

(3)これまでの実践とICTとの最適な組合せを実現する

○ 教師を支援するツールとしてのICT環境や先端技術を効果的に活用することにより、以下のようなことに寄与することが可能となると考えられる。

・ 新学習指導要領の着実な実施(例えば、一人一人の考えをリアルタイムで共有できるなど「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を行うこと、学びと社会をつなげることにより「社会に開かれた教育課程」を実現すること、プログラミング教育や情報モラル教育などの情報教育を充実すること)

・ 学びにおける時間・距離などの制約を取り払うこと(例えば、遠隔教育により、学びの幅が広がる、多様な考えに触れる機会が充実する、様々な状況の子供たちの学習機会が確保されるなど、場面に応じた学びの支援を行うこと)

・ 多様な子供たちを誰一人取り残すことのない個別に最適な学びや支援(例えば、子供の学習状況に応じた教材等の提供により、知識・技能の習得等に効果的な学びを行うこと、子供の学習や生活、学校健康診断結果を含む心身の健康状況等に関する様々な情報を把握・分析し、抱える問題を早期発見・解決すること、障害のある子供たちにとっての情報保障やコミュニケーションツールとなること)

・ 可視化が難しかった学びの知見の共有やこれまでにない知見の生成(例えば、教育データの収集・分析により、各教師の実践知や暗黙知の可視化・定式化や新たな知見を生成すること、経験的な仮説の検証や個々の子供の効果的な学習方法等を特定すること)

・ 学校における働き方改革の推進(例えば、教材研究・教材作成等の授業準備にかかる時間・労力を削減すること、書類作成や会議等を効率的・効果的に実施すること、遠隔技術を活用して教員研修や各種会議を実施すること)

・ 災害や感染症等の発生等による学校の臨時休業等の緊急時における教育活動の継続(例えば、同時双方向型のオンライン指導を通じた家庭学習や、オンラインを活用して学校・教師・子供同士の繋がりを維持すること)

○ 令和時代における学校の「スタンダード」として、GIGA スクール構想により児童生徒1人1台端末環境と高速大容量の通信ネットワーク環境が実現されることを最大限生かし、教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育とを使いこなす(ハイブリッド化)など、これまでの実践とICTとを最適に組み合わせることで、学びの質を向上させるとともに、学校教育における様々な課題の解決につなげていくことが必要である。

○ なお、ICT はこれからの学校教育に必要不可欠なものであるが、あくまでツールであり、その活用自体が目的でないことに留意が必要である。AI技術が高度に発達するSociety5.0時代にこそ、教師による対面指導や児童生徒同士による学び合い、地域社会での多様な体験活動の重要性がより一層高まっていくものであり、教師には、ICT を活用しながら、協働的な学びを実現し、多様な他者と共に問題の発見や解決に挑む資質・能力を育成することが求められる。

(4)履修主義・修得主義等を適切に組み合わせる

○ 現行の日本の学校教育制度では、所定の教育課程を一定年限の間に履修することでもって足りるとする履修主義、履修した内容に照らして一定の学習の実現状況が期待される修得主義、進学・卒業要件として一定年限の在学を要する年齢主義、進学・卒業要件として一定の課程の修了を要求する課程主義の考え方がそれぞれ取り入れられている。

○ 修得主義や課程主義は、一定の期間における個々人の学習の状況や成果を問い、それぞれの学習状況に応じた学習内容を提供するという性格を有する。個人の学習状況に着目するため、個に応じた指導、能力別・異年齢編成に対する寛容さ、知識の習得の場面におけるICTの活用との親和性の高さという特徴が指摘される一方で、個別での学習が強調された場合、多様な他者との協働を通した社会性の涵養など集団としての教育のあり方が問われる面は少なくなる。

○ 一方で、履修主義や年齢主義は、対象とする集団に対して、ある一定の期間をかけて共通に教育を行う性格を有する。このため修得主義や課程主義のように学習の速度は問われず、ある一定の期間の中で、個々人の成長に必要な時間のかかり方を多様に許容し包含する側面がある一方で、過度の同調性や画一性をもたらすことについての指摘もある。

○ 全児童生徒への基礎・基本の確実な定着への要請が強い義務教育段階においては、進級や卒業の要件としては年齢主義を基本に置きつつも、教育課程を履修したと判断するための基準については、履修主義と修得主義を適切に組み合わせ、それぞれの長所を取り入れる教育課程の在り方を目指すべきである。高等学校においては、これまでも履修の成果を確認して単位の修得を認定する制度がとられ、また原級留置の運用もなされており、修得主義・課程主義の要素がより多く取り入れられていることから、このような高等学校教育の特質を踏まえて教育課程の在り方を検討していく必要がある。

○ その際、これまで以上に多様性を尊重し、ICTも活用しつつカリキュラム・マネジメントを充実させ、多様な子供たちを誰一人取り残すことのないよう、個別最適な学びと社会とつながる協働的な学びを実現していくことが重要である。

(5)感染症や災害の発生等を乗り越えて学びを保障する

○ 今般の新型コロナウイルス感染症対応の経験を踏まえ、新たな感染症や災害の発生等の緊急事態であっても必要な教育活動を継続することが重要である。このため、「新しい生活様式」も踏まえ健やかに学習できる衛生環境の整備や、新しい時代の教室環境に応じた指導体制や必要な施設・設備の整備を図ることが必要である。

○ また、やむを得ず学校の臨時休業等が行われる場合であっても、子供たちと学校との関係を継続することで、心のケアや虐待の防止を図り、子供たちの学びを保障していくための方策を講じることが必要である。

(6)社会構造の変化の中で、持続的で魅力ある学校教育を実現する

○ 少子高齢化や人口減少などにより社会構造が変化する中にあって、学校教育の持続可能性を確保しながら魅力ある学校教育を実現するため、幼児教育、義務教育、高校教育、特別支援教育において、必要な制度改正や運用改善を行うことが必要である。

○ 特に「団塊ジュニア世代」が65歳以上となる令和22(2040)年頃にかけて、我が国全体の人口構造は大きく変容していくと言われている。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、今後人口減少は加速し、令和22(2040)年頃には毎年約90万人が減少する。生産年齢人口(15~64歳)の減少幅は増大する一方、高齢者人口(65歳以上)はピークを迎える。既に多くの市町村が人口減少と高齢化に直面しているが、今後は、大都市圏を含め、全国的に進行することが予想されている。

○ このような時代の到来を見据えつつ、魅力的で質の高い学校教育を地方においても実現するため、高齢者など地域の人材が学校教育に関わるとともに、学校の配置やその施設の維持管理、学校間の連携の在り方を検討していくことが必要である。

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