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スクールリーダーの資料室 誰一人取り残すことのない「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~多様な子供たちの資質・能力を育成するための、個別最適な学びと、社会とつながる協働的な学びの実現~(中間まとめ)【素案】

NEWトピック教育課題

2020.11.07

3.2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」の姿

○ 2(2)で挙げた子供たちの多様化、教師の長時間勤務による疲弊、情報化の加速度的な進展、少子高齢化・人口減少、感染症等の直面する課題を乗り越え、1で述べたように、Society5.0時代を見据え、一人一人の児童生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるよう、その資質・能力を育成することが求められている。

○ このためには「我が国の学校教育の在り方を根本から見直さなければならないのか」という疑問が生まれ得るが、そうではない。むしろ、2(1)で述べてきた明治から続く我が国の学校教育の蓄積である「日本型学校教育」の良さを受け継ぎながら更に発展させ、学校における働き方改革とGIGA スクール構想を強力に推進しながら、新学習指導要領を着実に実施することが必要である。

○ その際、従来の社会構造の中で行われてきた「正解主義」や「同調圧力」への偏りから脱却し、本来の日本型学校教育の持つ、授業において子供たちの思考を深める「発問」を重視してきたことや、子供たち一人一人の多様性と向き合いながら一つのチーム(集団)としての学びに高めていく、という強みを最大限に生かしていくことが重要である。

○ 誰一人取り残すことのない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現に向け、学習指導要領前文において「持続可能な社会の創り手」を求める我が国を含めた世界全体で、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいる中で、ツールとしてのICTを基盤としつつ、日本型学校教育を発展させ、2020年代を通じて実現を目指す学校教育を「令和の日本型学校教育」と名付け、まずその姿を以下のとおり描くことで、目指すべき方向性を社会と共有することとしたい。

(1)子供の学び

○ 我が国ではこれまでも、学習指導要領において、児童生徒の興味・関心を生かした自主的、主体的な学習が促されるよう工夫することを求めるなど、「個に応じた指導」が重視されてきた。

○ 子供たちの多様化が一層進む中で、全ての子供たちに基礎的・基本的な知識・技能等を確実に修得させるためには、ICT も活用して教師の負担を抑えつつ、専門性の高い教師がより支援が必要な児童生徒により重点的な指導を行うことなどにより効果的な指導を実現し、子供たち一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うとともに、子供たちに自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら粘り強く取り組む態度を育成すること、つまり「指導の個別化」が必要である。

○ また、基礎的・基本的な知識・技能や言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習の基盤となる資質・能力等を土台として、専門性の高い教師が個々の子供に応じた学習活動を提供することで、幼児期からの様々な場を通じての体験活動から得た子供たちの興味・関心等に応じ、ICTも活用し、自ら学習を調整するなどしながら、その子供ならではの課題の設定、子供自身による情報の収集、整理・分析、まとめ・表現を行う等、主体的に学習を最適化することを教師が促す「学習の個性化」も重要である。

○ 以上の「指導の個別化」と「学習の個性化」を教師視点から整理した概念が「個に応じた指導」であり、学習者視点から整理した概念が「個別最適な学び」と考えられる。

○ なお、「指導の個別化」による基礎的・基本的な知識・技能等の修得が終わってからでないと、「学習の個性化」が行えないというものではない。各学校段階や発達の段階に応じて、教師の関わりの中で学習者が自らの学習の調整を図る度合を高めていきながら、教科等の特質に応じて「指導の個別化」と「学習の個性化」を適切に組み合わせ、多様な子供たちを誰一人取り残さず、必要な資質・能力を育成し、個性を生かしていくことが重要である。

○ また、これまでも「日本型学校教育」において重視されてきた、学校ならではの協働的な学び合いや、地域の方々をはじめ多様な他者と協働して主体的に実社会に関わる課題を解決しようとする探究的な学び、様々な体験活動などを通じ、持続可能な社会の創り手として必要な資質・能力を育成する「協働的な学び」も重要である。その際、「協働的な学び」においては、集団の学習効率化に重きを置きすぎるおそれもあるが、むしろ集団の中で児童生徒一人一人のよい点や可能性をいかに生かしていくかを考えていくことが大切である。

○ 「協働的な学び」は、同一学年・学級はもとより、異学年間の学びや他の学校の子供たちとの学び合いなども含むものである。ICT の活用により空間的・時間的制約を緩和することができるようになることから、「協働的な学び」もまた発展させることができるようになる。同時に、同じ空間で時間をともにすることで感覚を働かせながらお互いに刺激し合うことの重要性も改めて認識する必要がある。人間同士のリアルな関係づくりは社会を形成していくうえで不可欠であり、知・徳・体を一体的に育むためには、教師と児童生徒の関わり合いや児童生徒同士の関わり合い、自分の感覚や行為を通して理解する実習・実験、地域社会での多様な体験活動など、様々な場面でリアルな体験を通じて学ぶことの重要性が、AI技術が高度に発達するSociety5.0時代にこそ一層高まるものである。

○ 個別最適な学びの充実に当たっては、それが孤立した学びに陥らないよう、留意する必要がある。個別最適な学びの成果を協働的な学びに生かし、さらにその成果を個別最適な学びに還元するなど、個別最適な学びと協働的な学びの往還を実現することが必要である。

○ したがって、目指すべき学びの在り方を「多様な子供たちの資質・能力を育成するための、個別最適な学びと、社会とつながる協働的な学びの実現」とする。

○ 以上のことを踏まえ、各学校段階において以下のような学びの姿が実現することを目指す。

① 幼児教育

○ 幼稚園等の幼児教育が行われる場において、小学校教育との円滑な接続や特別な配慮を必要とする幼児への個別支援、質の評価を通じたPDCAサイクルの構築が図られるなど、質の高い教育が提供され、良好な環境の下、身近な環境に主体的に関わり様々な活動を楽しむ中で達成感を味わいながら、全ての幼児が健やかに育つことができる。

② 義務教育

○ 児童生徒一人一人の資質・能力を伸ばすという観点から、教師を支援するツールとして先端技術を有効に活用することなどにより、基礎的・基本的な知識・技能や言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力等の学習などの基盤となる資質・能力の確実な習得が行われるとともに、多様な児童生徒一人一人の興味・関心等に応じ、その意欲を高めやりたいことを深められる学びが提供されている。

○ 個々の児童生徒の学習状況を教師が一元的に把握できる中で、それに基づき特別な支援が必要な者に対する個別支援が充実され、多様な児童生徒がお互いを理解しながら共に学び、特定分野に特異な才能を持つ児童生徒が、その才能を存分に伸ばせる高度な学びの機会にアクセスすることができる。

○ 学校ならではの協働的な学び合いや、多様な他者と協働して主体的に課題を解決しようとする探究的な学び、様々な体験活動、地域の資源を活用した教育活動などを通じ、身近な地域の魅力や課題などを知り、地域の構成員の一人としての意識が育まれている。

○ 生涯を通じて心身ともに健康な生活を送るために必要な資質・能力を育成するとともに、児童生徒の生活や学びにわたる課題(貧困、虐待等)が早期に発見され、外国人児童生徒等の社会的少数者としての課題を有する者を含めた全ての児童生徒が安全・安心に学ぶことができる。

③ 高等学校教育

○ 各高等学校においては、選挙権年齢や成年年齢が18歳に引き下げられるなど、生徒が高等学校在学中に一人の自立した「大人」として振る舞えるようになることが期待されていることも踏まえ、学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力や、地域の課題等についての認識を深め、主体的に生き、社会の形成に参画するために必要な資質・能力を身に付けられるよう、初等中等教育段階最後の教育機関として、高等教育機関や実社会との接続機能を果たしている。

○ そのなかで、各高等学校においては、多様な生徒の興味・関心や特性、背景を踏まえて、特色・魅力ある教育活動が行われるとともに、特別な支援が必要な生徒に対する個別支援が充実しており、また、地方公共団体、企業、高等教育機関、国際機関、NPO 等と連携・協働することによって地域・社会の抱える課題の解決に向けた学びが学校内外で行われ、生徒が自立した学習者として自己の将来のイメージを持ち、高い学習意欲を持って学びに向かっている。

○ 学校と社会とが連携・協働することにより、多様な子供たち一人一人に応じた探究的な学びが実現されるとともに、STEAM 教育などの実社会での課題解決に生かしていくための教科等横断的な学びが提供されている。

④ 各学校段階を通じた学び

○ 幼児教育から小学校、中学校、高等学校、大学・社会といった段階を通じ、一貫して、自らの将来を見通し、社会の変化を踏まえながら、自己のキャリア形成と関連付けて学び続けている。

(2)教職員の姿

○ 教師が技術の発達や新たなニーズなど学校教育を取り巻く環境の変化を前向きに受け止め、教職生涯を通じて探究心を持ちつつ自律的かつ継続的に新しい知識・技能を学び続け、子供たち一人一人の学びを最大限に引き出す教師としての役割を果たしている。その際、子供の主体的な学びを支援する伴走者としての能力も備えている。

○ 教員養成、採用、免許制度も含めた方策を通じ、多様な人材の教育界内外からの確保や教師の資質・能力の向上により、質の高い教職員集団が実現されるとともに、教職員と多様な専門スタッフ等とがチームとなり、個々の教職員がチームの一員として組織的・協働的に取り組む力を発揮しつつ、校長のリーダーシップの下、共通の学校教育目標に向かって学校が運営されている。

○ さらに、学校における働き方改革の実現により、教師が創造的で魅力ある仕事であることが再認識され、教師を目指そうとする者が増加し、教師自身も志気を高め、誇りを持って働くことができている。

(3)子供の学びや教職員を支える環境

○ 小学校、中学校、高等学校段階における1人1台端末環境の実現や端末の持ち帰り、デジタル教科書・教材等の先端技術や教育ビッグデータを効果的に活用できる環境の整備、統合型校務支援システムの導入などにより、全国津々浦々の学校において指導・支援の充実、校務の効率化、教育政策の改善・充実等がなされている。なお、特に高等学校段階においては、個人端末の持ち込み(BringYour Own Device:BYOD)が進んでいることに留意しつつ、実態を踏まえて整備を進めていく必要がある。

○ 平常時はもとより、災害や感染症の発生等による学校の臨時休業等の緊急時においても、不安なく学習を継続できるよう、老朽化対策やバリアフリー化、トイレの乾式化・洋式化、空調設備の設置等の学校施設の整備等により安全・安心な教育環境を確保しつつ、教職員配置の在り方を含め、新しい時代の学びを支える学校教育の環境が整備されている。

○ 人口減少が加速する地域においても、小学校と中学校との連携、学校施設の複合化・共用化等の促進などを通じて、魅力的な教育環境が実現されている。

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