月刊 ガバナンス 2024年8月号  特集1:自治体の水政策 特集2:「謝罪」考──心の仕組みからリスク・コミュニケーションまで|地方自治、法令・判例のぎょうせいオンライン
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月刊 ガバナンス 2024年8月号  特集1:自治体の水政策 特集2:「謝罪」考──心の仕組みからリスク・コミュニケーションまで

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編著者名
ぎょうせい
判型
A4変型
商品形態
雑誌・電子書籍
雑誌コード
13321-08
図書コード
7135001-24-080
8179040-24-080
ISBNコード
発行年月
2024/08
販売価格
1,320 円(税込み)

内容

●特集1 自治体の水政策

“水”は命の源である。降水量が多く、国土の多くが山林で自然豊かな日本は「水の国」である一方で、台風や集中豪雨による風水害や豪雪、また地域や時期によっては渇水にも悩まされてきた歴史がある。近代化以降、社会基盤の整備などにより、問題の解消が図られてきたが、今、新たな「水問題」に直面している。気候変動により気象災害が多発化・激甚化するとともに、人口減少が本格化する中で、上下水道などのインフラの老朽化が進み、その維持管理が大きな課題となっている。今年発生した能登半島地震では、耐震化が遅れていた地域などの断水が長期間に及び、その深刻さを露呈した。人が生きていくうえでなくてはならない“水”を巡るこうした課題に自治体はどう向き合っていくのか。今月は考えてみたい。

■水の未来と「水みんフラ」

沖 大幹
東京大学大学院教授
東京財団政策研究所研究主幹

日本では、水路や溜め池といった社会基盤施設だけではなく、自然生態系や人為的な生態系、人や組織といった要素が組み合わさったシステム全体が安全な水の安定供給を支えている。これらは「水のみんなのインフラ」である。この「水みんフラ」も不断の努力によって保持しなければ綻びが生じてしまう。

■水循環と自治体の課題/橋本淳司
農地の荒廃・農業水利施設の老朽化・損壊は、社会共通基盤の脆弱化であり、公共の不利益につながる。農地および農業水利施設は社会基盤施設に加え、自然生態系や人為的な生態系、そして人や組織といった要素が組み合わさった仕組み全体が、現代の安全な水供給を支え、水災害リスクを軽減している。農地や農業水利施設を農家が管理するのは当たり前と捉えるのではなく、地域の水循環を支えるこうした「水みんフラ」を地域で管理していくべきだ。

■流域治水と自治体の役割/加藤孝明
流域治水は、治水のあり方のパラダイムシフトである。これまで水害リスクは、いずれ「克服されるもの」と認識されてきたが、これからは河川の内側の対策に限界があることを前提として「共生すべきもの」としてとらえられるものとなった。今、私たちは、この共生のあり方を流域の関係者全員で創造していくスタートラインに立っているのである。

■水害リスクを踏まえたまちづくりをどう進めるか/馬場美智子
近年の気象災害の激甚化、頻発化は、多くの被害をもたらしている。河川整備等のハード整備を中心とした治水対策から、ソフト対策も合わせた総合的な流域治水へと転換されたが、事業中心の治水対策から脱却する必要がある。ここではその鍵となりうる、市民や民間セクターが行政と協働する流域ガバナンスと、水害リスクを踏まえたまちづくりについて考える。

■水道事業をどう未来に残すか/浦上拓也
国・地方自治体および水道事業体が目指すべきゴールは「水道の持続可能性」である。その「手法」はさまざまあり、それぞれの地域にどのような「手法」が「より望ましい」のか?あらゆる手段を排除せず、関係者全員が一丸となって知恵を出し合って解決に向けて議論し、スピード感をもって「実行」していかなければならない。

■水道・下水道事業のダウンサイジングと人材の確保・育成/菊池明敏
日本の水道・下水道事業は、収入が際限なく減っていくのに、投資に伴う費用は大幅に増大していく時代に突入している。これに対処する唯一の方策は「ダウンサイジング」しかない。水道事業では「施設のダウンサイジング」と「管路のダウンサイジング」が、下水道事業では、集合処理から個別浄化槽に切り替え、集合処理区域の縮小が求められる。そして、ダウンサイジングを実行していくための最重要かつ必須な要素が「技術力を持った人材の確保と育成」である。

 

●特集2 「謝罪」考──心の仕組みからリスク・コミュニケーションまで

組織や個人の不祥事、不正、不適切な行いが明るみになった時、対応の成否を握るのが危機管理広報です。しかし、実際には、組織のリーダーや当事者の“残念な会見”や“失敗コメント”の事例は枚挙に暇がありません。いざという時だけでなく、クレーム対応や職場内の人間関係においても、お詫びや謝罪の仕方が問題解決・関係円滑化の鍵となります。すみません、ごめんなさい、申し訳ございません──。たかが言葉、されど言葉。今号では、心の仕組みやリスク・コミュニケーション等の視点から、“組織”と“個人”を守る「謝罪」のあり方を考えます。

■謝罪とは本来、何であるべきか──「謝る」ことを哲学する/古田徹也
■“謝ったら死ぬ病”から抜け出すには──謝らない人と謝らせたい人/原井宏明
■いざという時に“組織”と“個人”を守る謝罪術/藤田尚弓
■自治体職員の「詫び」と「謝罪」/関根健夫

 

キャリアサポート連載

■管理職って面白い!公務員離れ(自治体のモラルハラスメント)/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
賢く収縮するまちづくり 岡山県美咲町の事例より/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇 ■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/廣瀬杏奈 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭 ■自治体職員なら知っておきたい!公務員の基礎知識/高嶋直人 ■今日から実践!すぐに役立つ!「公務員による研修」のススメ/堤 直規 ■カスタマーハラスメント対策Q&A/関根健夫 ■HOLG presents 本当にすごい公務員!のココだけの話 /阿部真行 ■〈リレー連載〉Z世代ズム~つれづれに想うこと/楢島杏奈 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/森田八雲 ■地域の“逸材”を探して/寺本英仁

 

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
都竹淳也・岐阜県飛騨市長
地域資源を掘り起こし、まちの空気を変え、人口減少に向き合う

都竹淳也・岐阜県飛騨市長(57)。人口減少の中でも市民が自信と誇りを持ち豊かに暮らせるまちづくりを進め、地域資源の掘り起こしに力を入れている。その一つが広葉樹。市役所の応接は、広葉樹を使った壁や家具、食器などが並び、温かく柔らかい雰囲気だ。

 

取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
被災から13年、見知らぬ町と化す理由【大熊町・帰還後のまちづくり】
原発事故、続く模索53
東京電力福島第1原発が立地する福島県大熊町。原発事故で全町避難を強いられたが、ようやく町中心部で帰還が始まり、「復興」のための工事が行われている。しかし、かつての商店街はほぼ取り壊されて、面影さえない。跡地では拠点となる施設の整備が進んでいるものの、あまりの変わりように「これが大熊町なのか」と驚く町民もいる。なぜ、「新しいまち」に変わらざるを得なかったのか。

□自治体政策最前線──地域からのイノベーション17
一般社団法人SUM──町職員有志で地域商社を設立し新商品開発や情報発信に取り組む(栃木県茂木町)
栃木県茂木町では、町職員有志が2020年に地域商社「一般社団法人Social Up Motegi(現SUM)」を立ち上げ、地元農林水産物のブランド化や新商品開発、地域情報の発信事業などに取り組んでいる。20年後の子どもたちに住みよい環境を引き継ぐことを目標に、12人のメンバーで休日など公務時間外に活動。間伐材を活用した商品のプロデュースや町有林間伐材の販売、放牧黒毛和牛のブランディングなどで成果をあげている。

 

●Governance Focus
□「解体できない」「仮設に入れない」「住む家がない」──能登半島地震、「一部損壊」の悲哀/葉上太郎
能登半島地震で目立つのは住家損壊の酷さだ。深刻なのは全壊だが、一部損壊の多さも別の問題を生んでいる。実質的に「住めない」という家がかなりあるのに、制度上は支援の手が届かないのだ。半壊以上でないと、公費解体の対象にならず、仮設住宅にも入れない。ライフラインが壊滅しているから、劣悪な環境のまま取り残される。大工が足りず、修理できないままだと損壊もどんどん進む。「住むところがない」と嘆く人が増えている。

●Governance Topics
□実情に合った将来像を議論──中山間地域フォーラムシンポジウム
「中山間地域」を支援するNPO法人中山間地域フォーラム(会長=生源寺眞一・東京大学名誉教授)は7月6日にシンポジウムを開催した。テーマは「人口減少下の農村ビジョンを考える~市町村消滅論を越えて」と題し、今年4月の人口戦略会議による「消滅可能性自治体」の公表を踏まえて、多様な立場から地域に関わるゲストを迎え、これからの中山間地域の将来を議論した。

□だれも取り残されない被災者支援制度を求める──311変える会緊急院内集会
3・11から未来の災害復興制度を提案する会(311変える会、阿部知幸代表)は、6月4日に衆議院第二議員会館で緊急院内集会「『一人ひとりを大事にし、だれも取り残さない被災者支援制度を求める』能登半島地震の現状と課題から」を開催し、国会議員らに災害法制の改正を要望した。

□非常事態への備えを2日間にわたり徹底議論──全国地方議会サミット2024
「全国地方議会サミット2024」(ローカル・マニフェスト(LM)推進連盟主催)は7月10日・11日、早稲田大学国際会議場井深大記念ホールを会場に、オンラインとのハイブリッド形式で開催された。今回は「非常事態への備え これからの議会」と題し、元日の能登半島地震の被災自治体の首長や議会関係者も登壇し、被災の経験を共有。また、東日本大震災、熊本地震などの被災自治体によるセッションも行われ、非常時に議会はどう機能すべきかを考える2日間となった。

□性風俗の世界で孤立・困窮する若年女性へのアウトリーチ/坂爪真吾(NPO法人風テラス)
今年4月に「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法)が施行されたが、「困難を抱えた若年女性が、自分たちの地域のどこに・どのくらいいるのか、そもそもわからない」「いつ・どこで・何をすれば、彼女たちにリーチできるのかわからない」といった悩みを抱えている自治体は少なくない。NPO法人風テラスでは、性風俗で働く若年女性へのアウトリーチ事業を実施した。

□縮小社会における合意形成のあり方などを議論──シンポジウム「人口減少時代の自治体政策」
関東学院大学法学会、関東学院大学地域創生実践研究所、自治体法務合同研究会の三者共催によるシンポジウム「人口減少時代の自治体政策」が7月14日に開催された。人口戦略会議が4月に744の消滅可能性自治体を公表するなど、人口や経済の規模が不可逆的に縮小していくなかで、地域の実情に即した政策をどう選択し、そのための地域での合意形成をどう進めていくのかは自治体の大きな課題だ。シンポでは、人口減少時代の実践的な自治体政策の方向性について議論した。

 

連載

□交差点~国×地方/人羅 格 □自治・分権改革を追う/青山彰久 □新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之 □地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ/釼持麻衣(関東学院大学地域創生実践研究所) □地域経済再生の現場から~Bizモデルの中小企業支援/松田知子(ひむか‒Biz) □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □地方議会シンカ論/中村 健 □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『アイアム・ア・コメディアン』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『組織不正はいつも正しい──ソーシャル・アバランチを防ぐには』中原 翔]

 

カラーグラビア

□つぶやく地図/芥川 仁
風の力で網を曳く打瀬網漁の明日──北海道別海町尾岱沼

□技の手ざわり/大西暢夫
土の持ち味と伝統の技が育む素朴で力強い風合い──【大谷焼】森陶器株式会社(徳島県鳴門市)

□わがまちDiary──風景・人・暮らし
星空のもと継がれてきた歴史と文化に出会えるまち(岡山県井原市)

□本日開園中 FUN!FUN!動物園
おたる水族館(北海道小樽市)

□クローズアップ
「石垣の博物館」が示した崩落の傾向──能登半島地震、金沢城の被災

 

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※美星天文台(岡山県井原市提供)

 

図書分類

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