【特別インタビュー】教員の新たな働き方の創造を答申から読み解く 小川正人(放送大学教授・中央教育審議会働き方改革特別部会長)
各種答申・報告・調査
2019.03.22
目次
確かな業務改善と客観データの収集が必要 ■これからの学校・教委の対応課題
―働き方改革に関する今後の動きは。
今後、ガイドラインを参考にして、2019年度内に各教育委員会は方針の検討や策定作業を進め、2020年4月から施行できるよう取り組むことが求められてきます。
ここでの取組の中心はやはり業務の明確化・適正化です。地域や他の専門・支援・サポートスタッフに業務を移すとしても、地域や学校で条件が異なるので、教育委員会が中心となって目標やスケジュール、段取りを検討し、それに沿って各学校に計画や取組を求めていくことが肝要です。
また、これには地域や保護者の理解と協力が不可欠ですので、教育委員会が率先して理解と協力を得る取組やメッセージ発信を行い、学校を後方からバックアップしていく必要があります。学校ごとの条件が異なるため、教育委員会は必要な個別の支援等を丁寧に行っていくことが求められてきます。
―勤務時間管理のポイントは。
客観的で適切な方法で勤務時間管理をしっかりと行い、教職員個々の勤務状況を正確に把握することが非常に大事になってきます。きちんとした客観的なデータを残すことが大切なポイントです。
そのため、時間外勤務の抑制が評価の対象にされるようなことがあっても、不正な記録の強要や記録の改ざん・隠ぺいは絶対にしないよう、教育委員会も校長等に指示する必要があります。学校評価や管理職評価に縛られて、校長が行き過ぎた管理をさせられないように配慮することも大切です。
勤務時間のデータの整理・分析に関しては、その結果を、教育委員会だけで検証するだけでなく、人事委員会や市町村長(総務課人事)と共有し、場合によっては事後検証などの作業をすることも必要になります。
―変形労働時間制への動きは。
1年単位変形労働時間制は、自治体が2021年4月から導入できるよう、国の法整備が進んでいきますが、地方では、任命権者の都道府県・政令市が公立学校教職員の勤務条件を条例で定めることになっているため、1年単位変形労働時間制においても、都道府県・政令市が導入できる旨の条例を制定し、その下で、服務監督者の市町村の判断で導入するかどうかを決定していくような仕組みになると考えられます。
都道府県・政令市は、ガイドラインを参考にした方針の策定とともに、1年単位変形労働時間制への対応も求められることになるでしょう。
このように、教職員の働き方改革は、国・地方(首長、教育委員会)・学校が連携・協働して進めていくものです。業務の仕分け・軽減を図る取組を進める一方、勤務実態のエビデンスを得ていくことが、次の施策に向けての大切なポイントとなります。
新教育課程の実現を図る環境整備を ■現場へのメッセージ
―働き方改革を現場で進めていくための視点は。
基本的には、2020年度からの新教育課程の取組が充実したものになることが、働き方改革の目的でもあります。新教育課程のねらいを考えれば、教員が授業のプロとして学習指導や教材研究に打ち込んでいけるエネルギーと時間を最大限に注入できる仕組みや環境をつくることは、決して外せない課題です。そのためには相当な業務改善が必要ですし、教育委員会や校長は、そこが最大の取組課題として、できることは何でもやること、そのために、これまでの慣習や伝統を白紙から組み替えていくぐらいの覚悟が必要です。
今回の答申・ガイドラインのねらいを読み取り、教職員のために行政と学校現場が連携して知恵を出し合い、新教育課程の実現に向けて取組を進めていってほしいと思います。
(取材/編集部 萩原和夫・インタビュー写真/島峰 譲)