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【特集】ユニバーサルデザインとしての特別支援教育を生かした指導を 小栗正幸(特別支援教育ネット)

NEW特別支援教育・生徒指導

2019.03.22

ユニバーサルデザインとしての特別支援教育を生かした指導を 小栗正幸

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.9 2019年1月

小栗正幸(おぐり・まさゆき)

岐阜県多治見市出身。法務省の心理学の専門家(法務技官)として各地の矯正施設に勤務。宮川医療少年院長を経て退官。三重県教育委員会発達障がい支援員スーパーバイザー、同四日市市教育委員会スーパーバイザー。(一社)日本LD 学会名誉会員。専門は犯罪心理学、思春期から青年期の逸脱行動への対応。主著に『発達障害児の思春期と二次障害予防のシナリオ』『ファンタジーマネジメント』など。

子どもへの指導観は変わっているか

帰宅する男子生徒

 問題を抱えた子ども、問題を起こす子どもにどう対応するかについては、まず、子どもへの指導観を変えていかなければなりません。

 そのうえで、学校の体質はまだ古いのではないかと感じています。極端にいえば、学校は『坊ちゃん』のころから変わっているでしょうか。例えば、現在は特別支援教育について教職課程で学ぶことにはなっていますが、特別支援教育を学んで入ってきた若い先生たちに対し、学校内で影響力のある年配の先生の指導観を押し付けられて、学んだことが現場で生かされないということはないでしょうか。

 また、学習指導要領そのものにも古さを感じることがあります。例えば、性教育については、性行為など具体的なことを教えることがほとんどありません。子どもの切実な問題に対して十分に教えることが難しいものとなっているのです。

 さらに、特別支援教育については、小学校・中学校には特別支援学級がありますが、たいていの高校にはなく、ようやく今回の学習指導要領改訂によって通級指導ができるようになった状況です。そうすると、特に自閉状況の子などは、中学校までに普通学級に戻せるようにならなければ、その子の卒業後を保証していくことが難しくなっていくわけです。

 こうしたことを考え合わせると、今回の新学習指導要領にあるように、すべての教科・領域で特別支援教育の考えが根付いていけるかということが、子どもの指導にとって大事なポイントになってくると思います。

 

「いじめは犯罪」を徹底する

学校としての姿勢が問われる

 文部科学省から、平成29年度のいじめの件数が過去最高になったことが報告されましたが、いじめについても考えを改めていく必要があると思っています。

 人間は、人が嫌がったり困ったりすることを喜ぶという本性がありますし、3人集まればいじめが起こるといわれます。その意味で、学校にいじめが「ある」か「ないか」という議論ではなく、いじめは「ある」ということを前提に対応を考えていかなければなりません。

 そもそも、「いじめ」という言葉は、問題の本質を隠してしまいます。いじめはすべて犯罪なのです。無理強いをすれば強要、お金を要求すれば強請、頭を叩けば暴行、行く手を阻むことだって軽犯罪になるのです。したがって、いかなる理由があっても、いじめは犯罪だということをしっかりと子どもたちに伝える必要があります。

 各省庁などで出されているいじめの定義には、それが犯罪であることには触れていますが、あまり鮮明には打ち出されていません。「いじめ」の定義は「犯罪」だけで十分なのです。ですから、学校のスローガンも、「校内から『いじめ』をなくそう」ではなく、「校内から『犯罪』をなくそう」とするべきだと思っています。

 また、いじめをした子どもに指導をする場合、子どもは言い訳をしますし、隠しだてもします。そのときには、いじめが犯罪であることを教え諭すことは大事ですが、起こってしまったことをただすだけでは指導の効果は上がりません。例えば、「君がいじめを続けていくのと、いじめをやめるのとでは、これからの君自身や周囲との関係はどう変わっていくだろう」と、これからの自分自身のことや友達・家族のことなどを考えさせることを勧めます。

 いじめをする子どもは、自分自身や周囲との関係に問題をもっていることが多いのです。自分自身の問題を解決する一歩としていじめをやめる指導をすることには、効果が期待できると思います。

 

心の問題から脱却した不登校対応を

未来への可能性

 不登校についても増加傾向にあることが報告されていますが、その原因の一つに対応の仕方の問題があるのではないかと思っています。

 不登校は長く心の問題として扱われてきましたが、私の経験からいえば、心の問題以前でつまずいている子どもが多いのです。つまり、こだわり、言語の問題など対人的なコミュニケーション能力に問題があることが多いということです。不登校をしたくてする子どもはいません。不登校には様々な理由がありますが、対応としては、信頼関係を築くこと、納得性のあるかかわりをすること、そして、友達は減らしていいということ、などです。信頼関係は、子どもと肯定的にかかわることによって築いていけます。例えば、「何もしてほしくない」という子どもには、「そっとしてほしいんだね。自分の意見をいうことは大事だよ」と肯定的にフィードバックしていくのです。納得性のあるかかわりとは、例えば、「そこのゴミを捨てて」と指示して、ゴミを捨ててくれたら「ありがとう」と言います。簡単なことですが、指示されたことと「ありがとう」が結び付くことで納得性が生まれ、お互いの関係性を築くことができます。また、学校は友達が多くできることばかりを肯定しますが、「ともだちひゃくにん」つくるよりも、大事な友(あるいは恋人)が一人できればいいのです。幅広い社会適応でなく、その子にとって最善の居場所探しを促していくというのも不登校対応の一つなのです。

 このようにみていくと、子どもたちが抱える問題に対して、新しい発想や方法論が必要であるということがわかると思います。そのためのカギは、特別支援教育にあります。学校においては、新学習指導要領が特別支援教育を重視した意味合いを吟味し、具体的な実践として取組を進めていってほしいと思います。つまり、これからの特別支援教育はユニバーサルデザインとして扱っていくべきなのです。(談)

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特集:子供の危機管理 いじめ・不登校・虐待・暴力にどう向き合うか

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