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【特別インタビュー】教員の新たな働き方の創造を答申から読み解く 小川正人(放送大学教授・中央教育審議会働き方改革特別部会長)

NEW各種答申・報告・調査

2019.03.22

学校・教委の連携で新たな働き方改革を―答申から読み解くこれからの職場環境。

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.11、2019年3月

小川正人(おがわ・まさと)

東京大学大学院教授を経て2008年から放送大学教授。中教審副会長・初等中等教育分科会長等を歴任。主著に『教育改革のゆくえ』(ちくま新書)、『教育行政と学校経営』(放送大学教育振興会)など。

 

 1月25日、中央教育審議会は「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な施策について(答申)」を公表した。
 いわゆる「超勤4項目」以外の過労働にも焦点を当て、学校・教師が担う業務の明確化、学校の組織運営体制の在り方などを提言。さらに、「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を同日示し、国・学校・教職員のこれからの働き方の意識と制度などの転換を求めた。今後、学校における働き方はどう変わるのか。答申を取りまとめた、学校における働き方改革特別部会の部会長を務めた小川正人氏に聞いた。

長時間勤務改善に向けた初の答申 ■特別部会答申の意義

小川正人氏1

―今回の答申がもつ意味合いは。
 今年1月25日に公表された「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」(以下、「答申」)は、戦後の中央教育審議会答申の中でも、初めて教員の長時間勤務問題を中心に学校、教員の働き方をテーマにしたもので、これまで踏み込んでこなかったテーマに一歩踏み込んだという意味で画期的な答申といえるでしょう。
 日本の教員は、授業のみならず、子供の生活全般にわたって責任を引き受け、広範囲にわたる多様な教育活動に取り組んできたことは国内外で高く評価されてきました。しかし、その一方で、そうした職務内容が無限定な働き方はバーンアウトや長時間勤務等の問題も生じさせていました。
 およそ40年ぶりに実施された2006年の文部科学省の勤務実態調査で長時間勤務の実態が実証的に明らかにされましたが、当時は、未だ長時間勤務を是正する論議というより、会議の精選など業務改善を中心にした取組が先行して進められました。
 また、その勤務実態調査を受け、文部科学省内に設置された「学校の組織運営の在り方を踏まえた教職調整額の見直し等に関する検討会議」が、学校・教員の勤務問題を取り上げ、検討を行いましたが、その中心的な課題は、当時の行財政改革を背景に、官邸や財務省から強く迫られていた人材確保法(注1)の特別手当の廃止を含めた給与削減策に対抗する方策として、教職調整額を廃止して時間外勤務手当化の可能性を検討したものでした。
 さらに、その後の「チーム学校」の検討では、学校における教育活動の多様化、複雑化、困難化の中で、教員が「多能化」するだけでは対応しきれない状況が生まれてきているということから、他の専門・支援スタッフの導入と連携を進めることが提言されますが、ここでも、長時間勤務問題の改善が主な対象とされてきたわけではありませんでした。
 こうした中、2016年の勤務実態調査では、この10年間で業務改善の取組が図られたにもかかわらず授業及びそれに関係した本来的業務を中心に勤務時間が増え、その実態が一層深刻化していることが明らかになるに至り、労働問題としても教育問題としても、もはやこのまま放置できないと認識されたこと、その追い風として、政府全体の働き方改革もあって、文科省の最重要課題の一つとして取り組まれたことは確認されてよいと思います。

勤務時間管理を抜本的に見直す ■答申のポイント

―答申のポイントは。
 今回のポイントは大きく4つあると思います。第1に、「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」(1月25日、以下、「ガイドライン」)に月45時間、年360時間を時間外勤務の上限と明示したことです。これまで学校には時間外勤務の上限規制もなく、勤務時間を管理するという意識も希薄でした。今回、労基法(注2)や労働安全衛生法施行規則の改正を踏まえ、学校にも上限規制と勤務時間を客観的で適切な方法で管理することが強く要請されました。それを受けて、文部科学省が、上限に関するガイドラインを策定することになりました。
 第2に、ガイドラインの上限まで時間外勤務を削減する方策として、慣習的に行われてきた業務を含め、学校や教員が担うべき業務を大胆に見直し、学校や教員が担う業務の明確化、適正化を図ったことです。
 第3に、勤務時間を「在校時間」という外形で把握し、その「在校時間」を対象にガイドラインの上限まで削減することを求めたことです。これまで、限定4項目(「超勤4項目」、以下、「限定4項目」)以外の業務については、それが校務分掌に係る業務であるにもかかわらず、勤務時間外にやらざるを得ない場合には、職務命令下での業務ではないという理由から、教員の「自発的行為」と扱われてきました。これを見直し、土日の業務も含め、「在校時間」で勤務時間を管理することとしたことです。
 第4に、1年単位変形労働時間制の導入が、自治体の判断で可能になることとしたことです。

超勤規定とその実効性 ■ガイドラインのポイント

―ガイドラインのポイントは。
 ガイドラインのポイントについては、先にお話ししたとおりですが、ただし、これには実効性が伴わなくてはなりません。そこで、実効性を担保するため、給特法(注3)にガイドラインの法的位置付けと、自治体(教委)に、ガイドラインを参考にした方針等を条例、規則等で策定することを義務付ける予定となっており、方針等の上限の目安時間を超えた場合には、事後的に検証を行うことを求めることになります。
 また、都道府県・政令市では、地方公務員の労働基準監督機関ともいえる人事委員会と連携を密にして監督体制を整え、人事委員会がない市町村の場合には、市町村長が監督機関として教育委員会と連携し、方針等を共有しつつ首長の求めに応じて必要な報告などを行うことを盛り込みました。
 さらに、ガイドラインに罰則を求める声もありますが、これについては、国家公務員や地方公務員と同様に、例えば自然災害時の対応など、勤務時間の上限規定を超えて公務員として取り組まなければならない業務があります。
 教職員は、災害時はもとより子供の危機対応など、上限規定を超える対応業務もあることから、上限の特例的扱いを認めています。自然災害等への対応を考えると一律に上限違反に罰則を科すことは現時点では難しいと思いますが、その検討は地方公務員を所管する総務省の所掌権限ですのでその動向を見守りたいと思います。
 いずれにしても、ガイドラインの実効性を担保する法的な要として給特法等が位置付けられていることは確認しておきたいと思います。

[注]

1 学校教育の水準の維持向上のための義務教育諸学校の教育職員の人材確保に関する特別措置法(昭和49年2月25日法律第2号)
2 労働基準法(昭和22年4月7日法律第49号)
3 公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(昭和46年5月28日法律第77号)

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