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ユーモア詩でつづる学級歳時記

増田修治

ユーモア詩でつづる学級歳時記[第5回]

NEW特別支援教育・生徒指導

2020.10.14

ユーモア詩でつづる学級歳時記[第5回]

白梅学園大学教授 増田修治

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.5 2019年9

笑顔で子どもを育てる秘訣が満載!子どものココロが見えるユーモア詩の世界 親・保護者・教師のための子ども理解ガイド』(ぎょうせい、2020年9月刊)の著者 増田修治氏が、埼玉県の小学校教諭時代から長年取り組んできた「ユーモア詩」。珠玉の75編と増田氏の的を射たアドバイスは、笑いながら子どもの思い・願い・成長が理解でき、今日からの子育て、保育、教育に生かせること請け合いです。ここでは、『学校教育・実践ライブラリ』(2019-2020年)の連載「ユーモア詩でつづる学級歳時記」をご紹介します。(編集部)

■今月の「ユーモア詩」

一人
佐藤 綾香(4年)

日曜日に、
一人でチーズケーキをやいた。
ほあんほあんにできた。
この前に、
クッキーもやった。
クッキーもじょうずにできた。
わたしも、
大人の仲間入りに
一歩近づいたかなぁ。

■人生支える体験に

 「ほあんほあん」にできたチーズケーキなんていいですね。しっとりなめらかで、ちょっと口にしただけでうっとりしそうな気分になるすてきな表現です。綾香は、チーズケーキを自分の力だけで焼けたことが、よほどうれしかったのでしょう。

 なにしろ、詩の題名が「一人」なのです。いろいろお母さんから教えてもらったかもしれませんが、この日は「一人でやいた」のです。しかも「ほあんほあんにできた」のです。

 どうだ、と胸を張る綾香の得意満面の顔が、詩の中から飛び出してきそうです。

 それだけではありません。

 「この前に、クッキーもやった」「クッキーもじょうずにできた」のです。

 「わたしも、大人の仲間入りに一歩近づいたかなぁ」

 という最後のひと言に綾香の高揚した心情が詰まっています。

 どの親も子どもに生きる力をつけてほしいと願っていますが、そうした力は、子ども自身が自らの体験を通して獲得するのが基本です。

 綾香のように一人でできたという経験が自信となり、また次の挑戦に向かうことができるようになるのです。子どもにとって、自分でできた、わかったという体験は、人生を支える大切な力になるのです。

■9月の学級づくり・学級経営のポイント

夏休みにできたこと・できるようになったこと

 子どもたちは、自分ができるようになることが大好きです。9月になると、私は子どもたちに「夏休みになってできたこと・できるようになったこと」という作文や詩を書いてもらうようにしていました。

 「水泳で二十五m泳げるようになった」「鉄棒で逆上がりができるようになった」「勉強を自分で進んでやれた」「お手伝いを一杯やれた」「ゴミ出しをするようになった」「料理が一人でできた」などと、自分がやれるようになったことを嬉しそうに書いてくれます。

 1年生を担任したときには、「お風呂のふたをあげられるようになった」ことを書いてきた子どももいました。人によっては、「なんだ、そんなことぐらいで」と思うかもしれません。体の小さい1年生の子どもにとっては、風呂のふたを一人で持ち上げられるようになるというのは、大変なことだったのです。自分で「できない」と思い込んでいたことが、できるようになることほど、嬉しいことはありません。

 こうした詩や作文には、子どもが自力で脱皮し前進する姿が見られます。思い起こしてみてください。何回も転びながらもはじめて歩けるようになったときのことを。自力で茶わんとハシを持って、ご飯を食べ始めたときのことを。すでに忘れてしまってなんら記憶の跡をとどめずとも、人はそうした自力で何かをやり出しやりとげた、という一つひとつの事実の積み重ねの力によって生きてきたのだし、生きていくのだと思うのです。

 人間が自立し、一人の人格を確立していくとは、こうした自力を出し切ること、自分の中に存在する自己変革の可能性を、自らが信じることから始まるのだと思うのです。教育とは、そうしたことを内と外とで実証していく営みである、とも言えるのではないでしょうか。

 子どもを変える――などとよく言いますが、それほどむずかしいことはありません。子どもが変わったように見えても、その姿ははかなく、キラキラと瞬間的に輝いて、また石のように沈黙する。そうしたことの繰り返しのように思うのです。

 教育とは、そうした瞬間的な輝きを子どもたちから引き出し、少しでもいいから定着させていくといった取組なのではないかと思うのです。

 私たち大人に必要なのは、本当に失敗しても怒らないで、その失敗の原因を的確に指摘してあげるという寛容さと鋭い洞察力なのです。

 そうしたことのくり返しで、「失敗から正しく学ぶ」という大切さを知り、その方法を身に付けていくのだと思うのです。

 夏休みにできたことは、「これができるようになりたい」と思って挑戦したことというより、「試しにやってみたらできた」ということの方が多いと思います。そうした無意識にできたことを認め、励まし、意識してできるようになっていくように働きかけていく。これを2学期の始めに取り組んでみてください。必ず、子どもの大きな成長が見られるはずです。

 人は、自分の今いる位置を確かめ、そこを土台としてジャンプして成長していくことができるのです。「今のあなたの踏み台はここだよ!」と示してあげてほしいのです。

 

Profile
増田修治 ますだ・しゅうじ
1980年埼玉大学教育学部卒。子育てや教育にもっとユーモアを!と提唱し、小学校でユーモア詩の実践にチャレンジ。メディアからも注目され、『徹子の部屋』にも出演。著書に『話を聞いてよ。お父さん!比べないでね、お母さん!』『笑って伸ばす子どもの力』(主婦の友社)、『ユーモアいっぱい!小学生の笑える話』(PHP研究所)、『子どもが伸びる!親のユーモア練習帳』(新紀元社)、『「ホンネ」が響き合う教室』(ミネルヴァ書房)他多数。

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白梅学園大学教授

1980年埼玉大学教育学部卒。子育てや教育にもっとユーモアを!と提唱し、小学校でユーモア詩の実践にチャレンジ。メディアからも注目され、『徹子の部屋』にも出演。著書に『話を聞いてよ。お父さん!比べないでね、お母さん!』『笑って伸ばす子どもの力』(主婦の友社)、『ユーモアいっぱい!小学生の笑える話』(PHP研究所)、『子どもが伸びる!親のユーモア練習帳』(新紀元社)、『「ホンネ」が響き合う教室』(ミネルヴァ書房)他多数。

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