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授業力を上げるためにリーダーは?

寺崎千秋

授業力を上げるためにリーダーは?[第2回] 児童生徒理解の重視と生かし方

NEWトピック教育課題

2020.10.16

授業力を上げるためにリーダーは?[第2回]
児童生徒理解の重視と生かし方

一般財団法人教育調査研究所研究部長
寺崎千秋

『新教育ライブラリ Premier』Vol.2 2020年8月

児童生徒理解の重要性の確認

 子供たちの教育は、教育課程に基づく指導計画に沿い、各学級の子供の実態に応じた授業として実施され積み上げられる。改訂された学習指導要領では資質・能力の三つの柱の育成を重視し、そのために「主体的・対話的で深い学び」を一人一人の子供に実現する授業改善を重視している。授業は、「教師と子供と教材の関係で成立する」と言われてきた。子供の主体的な学習を重視し、これを的確・適切に指導し実現するためには、子供すなわち児童生徒理解を欠かすことができない。児童生徒理解なしに授業は成立しないとも言えよう。

 スクールリーダーは、育成する教員が児童生徒理解をどのように捉え、どのように自己の教育・指導に位置付けているかを対話の中で把握し、今後の指導支援の出発点とする。大学においてその基本は学んできていると思われるが、これをどのように捉え、実際の授業や生徒指導に生かしているか、例を聞いて確認する。また、児童生徒理解がうまくできなかったり困難を感じたりする例、理解したことを指導等に生かせなかったりする例などがなかったかについて聞き取るようにする。その際、リーダー自身がこれまでに経験した児童生徒理解不足による学習指導・生徒指導の行き詰まりや困ったときの例等も挙げて述懐し、育成する教員が具体的に相談しやすくなるように配慮することを大切にしたい。

児童生徒理解の内容と方法の確認

 一人一人の児童生徒理解をどのような観点から把握するかを確認する。原点は子供一人一人をかけがえのない存在として尊重することである。その上で、一人一人の個性(知的側面、上位的側面、社会性の側面)、ものの見方・考え方、集団の中での行為・行動の特性、身体や健康面の特徴、障害等の状況、今日までの育ち方・育てられ方(家庭の教育方針、保護者の子供の見方・捉え方等)、家庭状況、生活習慣、友達関係等々を把握する。これらは、学級経営案にも学級の全体の傾向として記載されるが、その基になるものとして一人一人の理解状況を可能な限り把握することに努め記録することが必要である。

 把握の方法としては、以下の事項が考えられる。

 ア 日常の学習や生活の行動観察により個々の特徴や特性を把握する。
 イ 日常の学習や生活の集団活動の観察により行動や関わり方の特徴や特性を把握する。
 ウ 家庭との連絡や対話等により諸事実を把握する。状況によっては聞き取りをする。
 エ 学力・学習状況調査等の諸調査により諸事実を把握する。
 オ 指導要録の記載事項から個性、特性、資質・能力、よさや進歩等の状況を把握する。

 こうした多面的な観点から把握し総合的に理解することが大切であることを確認する。

児童生徒理解の生かし方

 児童生徒理解はその子のことが分かったということで終わりではない。始まりである。これをどのように学習指導や生徒指導に生かしていくかが重要であることを確認したい。

 学習指導では、子供の理解は十把一絡げではない。大まかに分けてもこれまでの学習結果を「十分に理解している子」「概ね理解している子」「努力を要する子」の差が見られる。一人一人の状況はさらに違っている。これらを踏まえて、学習の導入を工夫しなくてはならない。どの子供も本学習内容に興味・関心をもち、学習意欲が湧き、学習の見通しが立つようにするには、導入でどのような工夫をするか、これを話し合うことである。学習の過程では、教師の話を聞いて分かる子、教材や板書を見て分かる子、実際に体験して分かる子などの特性もある。教師の発問にすぐ反応する子、黙って聞いている子の差もある。一人一人の特性を把握して配慮することも必要であることを確認する。

 生徒指導では、特に子供たちの人間関係の中での個性や特性の発揮が一層表出する。教師の指導を受け止め素直に受け入れる子がいれば、聞いているだけで受け流している子もいる、さらには反発して跳ね返してくる子もいる。これらを理解して個々に応じた対応をどのように行っているか、行っていけばよいかを話し合い、共に考えるようにする。

実際場面を通した指導・助言

 把握した児童生徒理解をどのように生かしているかを実際の授業場面で観察する。多様な子供が存在することを意識した発問となっているか、一人一人の目を見つめたり、全体をよく見渡したりして子供と向き合っているか、板書が見て分かりやすくなっているか、学習活動に体験を取り入れているか、グループ活動により個々の考えを出し合い生かされるようになっているか、友達の考えを学んで自分の考えを広げたり深めたりするようになっているか、個性豊かな発言やその子なりの発言などを引き出して子供たちと対話しながら学習を進めているか、振り返りでは個々のよさや学びの意義を伝えているか、等々の観点から授業を観察する。

 授業後の指導助言では、まず、これらについての自己評価を聞き取り、それについてよさをしっかりと評価し、課題については必要なアドバイスをする。アドバイスの視点は、把握した児童生徒理解を生かしているか、子供自身が「先生は自分のことを理解し育もうとしてくれている」と実感しているかということである。

 児童生徒理解は結果ではなく、常に過程であることを確認したい。今の子供を理解し適切に指導や支援をすることで子供が成長していく。その姿を新たな今として理解し見守る。その連続が児童生徒理解であることを共有し、協働する同僚でありたい。

 

Profile
寺崎千秋(てらさき・ちあき)
 全国連合小学校長会会長、東京学芸大学教職大学院特任教授等を歴任。現在、一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長、教育新聞論説委員、公立小学校2校の学校運営協議会委員、小中学校の校内研究・研修の講師、教育委員会主催の教員研修講師等を務めている。

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寺崎千秋

一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長

全国連合小学校長会会長、東京学芸大学教職大学院特任教授等を歴任。現在、一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長、教育新聞論説委員、公立小学校2校の学校運営協議会委員、小中学校の校内研究・研修の講師、教育委員会主催の教員研修講師等を務めている。

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