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何を学び、どう生かすか [小学校・質問紙] 寺崎千秋(一財・教育調査研究所研究部長)

NEWトピック教育課題

2019.05.21

新教育課程ライブラリ Vol.10 2016年

質問紙調査の内容

 平成28年度全国学力・学習状況調査における児童生徒に対する質問紙調査では、以下の調査結果を報告している。


(1)質問紙と学力のクロス分析及び質問紙間のクロス分析

  • ・主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善の取組状況
  • ・学習評価の在り方
  • ・カリキュラム・マネジメント
  • ・教職員の資質能力の向上
  • ・ユニバーサルデザイン、規範意識、道徳の時間
  • ・その他学校質問紙と児童生徒質問紙のクロス分析

(2)就学援助率と学校質問紙項目と学力の三重クロス分析

 今回の調査では、「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善の取組状況」に関する新たな項目を追加するとともに、その回答状況と学力との関係についての分析が報告されている。

児童の学習活動等と学力との関連

調査結果の概要

①「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善の取組状況」に関する〔児童生徒質問紙と学力のクロス分析〕の結果では、「以下と回答している児童の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られる」と報告している(以下に示す( )内の数値は問いについて「当てはまる」「どちらかといえば、当てはまる」などの肯定的な回答の数値の合計(%)である)。

  • ・「総合的な学習の時間」では、自分で課題を立てて情報を集め整理して、調べたことを発表するなどの学習活動に取り組んでいる(65.5)
  • ・5年生までに受けた授業では、先生から示される課題や、学級やグループの中で、自分たちで立てた課題に対して、自ら考え、自分から取り組んでいたと思う(77.8)
  • ・5年生までに受けた授業では、自分の考えを発表する機会が与えられていたと思う(85.2)
  • ・5年生までに受けた授業では、学級の友達との間で話し合う活動をよく行っていたと思う(83.3)
  • ・5年生までに受けた授業で、学級の友達との間で話し合う活動では、話し合う内容を理解して、相手の考えを最後まで聞き、自分の考えをしっかり伝えていたと思う(新規)(77.1)
  • ・5年生までに受けた授業で、自分の考えを発表する機会では、自分の考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組み立てなどを工夫して発表していたと思う(新規)(64.2)
  • ・学校の授業などで、自分の考えを他の人に説明したり、文章に書いたりすることは難しいと思う(54.7)
  • ・学級の友達との間で話し合う活動を通じて、自分の考えを深めたり、広げたりすることができていると思う(68.4)
  • ・国語の授業で目的に応じて資料を読み、自分の考えを話したり、書いたりしている(67.1)
  • ・国語の授業で意見などを発表するとき、うまく伝わるように話の組み立てを工夫している(62.4)
  • ・国語の授業で自分の考えを書くとき、考えの理由が分かるように気を付けて書いている(74.2)

②「学習評価のあり方」に関する〔児童生徒の質問紙と学力のクロス分析〕の結果では、「先生は、あなたのよいところを認めてくれていると回答している児童生徒の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られる」と報告している。

⑤「ユニバーサルデザイン、規範意識、道徳の時間」に関する〔児童生徒質問紙と学力のクロス分析〕の結果では、「以下と回答している児童の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られる」と報告している。

  • ・ものごとを最後までやり遂げて、うれしかったことがある(94.3)
  • ・学級みんなで協力して何かをやり遂げ、うれしかったことがある(86.2)
  • ・地域や社会で起こっている問題や出来事に関心がある(70.8)
  • ・学校のきまりを守っている(91.5)
  • ・人の役に立つ人間になりたいと思う(93.8)

平均正答率の高い取組

 「主体的・対話的で深い学びの視点」で学んでいると受け止めている児童の平均正答率が高い結果となっている。総合的な学習への取組、自分の考えを発表する機会の充実、話し合い活動の取り入れ、話し合う内容の理解と話し合い方の定着、自己の考えを伝える工夫、国語の授業の充実などが学力向上に資する結果となっている。

 「学習評価の在り方」では教師が児童の「よいところ」を把握し、それを児童に伝えることが大切であることを示している。

 「ユニバーサルデザイン、規範意識、道徳の時間」では、生徒指導、学級経営、道徳や特別活動の指導の重要性を改めて示唆していると思われる。学力向上の指導を支えるこれらの指導との関連を更に重視する必要があると言えよう。

学校の取組と学力との関連

調査結果の概要

①「主体的・対話的で深い学びの視点による学習指導の改善の取組状況」に関する〔学校質問紙と学力のクロス分析〕の結果では、調査対象の児童に関して、以下と回答している学校の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られる」と報告している。

  • ・学級やグループでの話合いなどの活動で、自分の考えを相手にしっかりと伝えることができている(74.8)
  • ・学級やグループでの話合いなどの活動で、相手の考えを最後まで聞くことができている(85.9)
  • ・学級やグループでの話合いなどの活動で、自分の考えを深めたり、広げたりすることができている(69.4)
  • ・自らが設定する課題や教員から設定される課題を理解して授業に取り組むことができている(新規)(91.0)
  • ・授業において、自らの考えがうまく伝わるよう、資料や文章、話の組立てなどを工夫して、発言や発表を行うことができている(新規)(61.5)
  • ・前年度までに、習得・活用及び探究の学習過程を見通した指導方法の改善及び工夫をした(新規)(90.1)
  • ・前年度までに、様々な考えを引き出したり、思考を深めたりするような発問や指導をした(94.8)
  • ・前年度までに、発言や活動の時間を確保して授業を進めた(97.7)
  • ・前年度までに、学級やグループで話し合う活動を授業などで行った(96.5)
  • ・前年度までに、総合的な学習の時間において、課題の設定からまとめ・表現に至る過程を意識した指導をした(83.7)
  • ・前年度までに、授業において、児童自ら学級やグループで課題を設定し、その解決に向けて話し合い、まとめ、表現するなどの学習活動を取り入れた(80.1)
  • ・前年度までに、本やインターネットなどを使った資料の調べ方が身に付くよう指導した(91.9)
  • ・前年度までに、資料を使って発表ができるよう指導した(90.5)
  • ・前年度までに、自分で調べたことや考えたことを分かりやすく文章に書かせる指導をした(93.9)
  • ・前年度までに、家庭学習の取組として、調べたり文章を書いたりしてくる宿題を与えた(82.2)

②「学習評価の在り方」に関する〔学校質問紙と学力のクロス分析」の結果では、調査対象学年の児童生徒に対して前年度までに「以下と回答している学校の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られる」と報告している。

  • ・国語や算数において、論述やレポートの作成、発表、グループでの話合い、作品の制作等の多様な活動に取り組ませることにより、ペーパーテストの評価に留まらない、多面的な評価を行った(新規)(91.3)
  • ・国語や算数・数学において、一人一人の学びの多様性に応じて、学習の過程における形成的な評価を行い、児童の資質・能力がどのように伸びているかを、児童自身が把握できるような評価を行った(新規)(76.1)

③「カリキュラム・マネジメント」に関する〔学校質問紙と学力のクロス分析〕の結果では、「以下と回答している学校の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られる」と報告している。

  • ・指導計画について、知識・技能の活用に重点を置いて作成している(90.5)
  • ・指導計画について、言語活動に重点を置いて作成している(93.7)
  • ・児童の姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立している(88.3)
  • ・前年度までに、各教科等のねらいを明確にした上で、言語活動を適切に位置付けた(92.7)
  • ・言語活動について、国語科だけでなく、各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間及び特別活動を通じて、学校全体として取り組んでいる(91.7)
  • ・学校全体の学力傾向や課題について、全教職員の間で共有している(98.6)

④「教職員の資質能力の向上」に関する〔学校質問紙と学力のクロス分析〕では、「教職員は、校内外の研修や研究会に参加し、その成果を教育活動に積極的に反映させていると回答している学校の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られる」と報告している(95.9)


⑤「ユニバーサルデザイン、規範意識、道徳の時間」に関する〔学校質問紙と学力のクロス分析〕では、調査対象の児童生徒に関して、「以下と回答している学校の方が、教科の平均正答率が高い傾向が見られる」と報告している。

  • ・児童は、熱意をもって勉強していると思う(93.5)
  • ・児童は、授業中の私語が少なく、落ち着いていると思う(90.5)
  • ・児童は、礼儀正しいと思う(89.1)
  • ・児童に対して、前年度までに、学級全員で取り組んだり挑戦したりする課題やテーマを与えた(90.6)
  • ・児童に対して、前年度までに、道徳の時間において、児童自らが考え、話し合う指導をした(90.5)
  • ・児童に対して、前年度までに、学習規律(私語をしない、話をしている人の方を向いて聞く、聞き手に向かって話をする、授業開始のチャイムを守るなど)の維持を徹底した(96.6)

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