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これからの不登校対応の在り方 高野敬三(明海大学副学長)

NEWトピック教育課題

2019.05.21

新教育課程ライブラリ Vol.9 2016年

我が国の不登校児童生徒数の現状

 我が国の小・中学校の不登校児童生徒数は平成25年度に6年振りに増加し、不登校児童生徒数が高い水準で推移するなど、憂慮すべき状況である。具体的には、のとおり、国・公・私立の小・中学校で平成26年度に不登校を理由として30日以上欠席した児童生徒数は、小学生は25,866人、中学生は97,036人の合計122,902人となっている。これを全体の児童生徒数との割合で見ると、小学生は0.39%、中学生は2.76%となっており、小・中学生の合計では全児童生徒の約1.21%を占めている。


 ここでは、今年7月にまとめられた、不登校に関する調査研究協力者会議の最終報告である「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」の特徴と、その中で、特に、不登校児童生徒の支援に対する基本的な考え方と重点方策について、その概要を紹介する。

不登校に関する調査研究協力者会議の設置と本会議報告の特徴

 不登校に関する調査研究については、平成4年の学校不適応対策調査研究協力者会議以降、幾度となく設置されてきた。しかしながら、不登校児童生徒数が依然として高い水準で推移してきていることから、今一度、時代の変化とともに、新たに付加すべき点など見直すべき点がないかどうか調査するため、平成27年1月に、本会議が設置された。この間、14回にも及ぶ議論を重ねて、今般、その最終報告がまとめられたところである。

 今次、設置された本会議においては、ややもすれば、学校復帰を最終目標とすることに力点を置くこれまでの議論とは異なり、不登校児童生徒の社会的自立に、その支援の最終目標を置いた議論を中心としたことにある。

 言い換えれば、学校は、多様化・複雑化する不登校児童生徒の要因・背景を的確に把握し、共感的理解と寄り添う姿勢をもつとともに、児童生徒に対する社会性の育成や生涯を通じた学びの基礎となる学力の育成を果たす役割を担うとした点にある。その上で、最終報告の副題にもあるとおり、一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援を推進することが重要であるとして、関係機関との「横」の連携を進めるとともに、学校間の「縦」の連携を行うことを指摘したことは、本会議の最終報告の特徴となるものである。

不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方

 不登校児童生徒への支援の目標は、児童生徒が将来的に精神的にも経済的にも自立し、豊かな人生を送れるよう、その社会的自立に向けて支援することが重要である。このような視点に立てば、自ずと、その支援は、学校に登校するといった結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを支援の目標とすることが不可欠である。

(1)学校教育の意義・役割—「社会への橋渡し」と「学習支援」

 児童生徒の社会的自立を目指す上では、対人関係に係る能力や集団における社会性の育成などの「社会への橋渡し」を図るとともに、学びへの意欲や学ぶ習慣を含む生涯を通じた学びの基礎となる力を育てる「学習支援」の視点が重要である。特に、義務教育段階の学校は、子供たちの有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要な基本的資質を養うことを目的としていることから、その役割は極めて大きいといえる。こうした視点に立ち、学校は、個別の児童生徒に応じたきめ細かい組織的・計画的な支援を行うため、家庭や関係機関と情報を共有して、「社会への橋渡し」と「学習支援」を行うことが重要である。なお、既存の学校教育になじめない児童生徒に対しては才能や能力に応じて、例えば、フリースクールやNPO等の活用により、それぞれの可能性を伸ばせるような支援を行うことも必要である。

(2)家庭への支援

 不登校支援を行う上では、不登校の要因を一部の保護者の固有の事情のみに見出そうとするのではなく、子育てを支える環境に変化が生じている社会全体の状況にも目を向け、不登校児童生徒の保護者の個々の状況に応じた働きかけをすることが大切である。不登校の要因・背景は多様化しており、場合によっては、福祉機関と連携して家庭の状況を的確に把握した上で支援策を講じることが必要である。その際、スクールカウンセラーに加え、スクールソーシャルワーカーの活用により、家庭と、学校を含めた関係機関等との連携を図り、保護者との信頼関係を築くことが重要である。

不登校児童生徒に対する支援における重点方策

 本会議では、不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方に基づき、今後の不登校施策の中で、重点的に取り組むべき方策として、次の3つのことが重要であるとした。

(1)「児童生徒理解・教育支援シート」を活用した組織的・計画的支援

 一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援を推進することが重要であるとした本会議の提言に沿って、東京都や横浜市などの自治体における先行事例を参考にして作成したものが、「児童生徒理解・教育支援シート(試案)である。この「児童生徒理解・教育支援シート」は、不登校児童生徒一人一人の状況を的確に把握し、当該児童生徒の置かれている状況を学校内や関係機関等で情報共有し、組織的・計画的に支援を行うことを目的として、学級担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等が中心となって学校が組織として作成するものである。

 「児童生徒理解・教育支援シート」には、学年ごとに作成する「学年別シート」(図1参照)と上級学年や上級学校に引き継ぐための「共通シート」(図2参照)とがある。

 「学年別シート」は、不登校児童生徒ごとに、その不登校となった理由、月別の出欠席状況を記載する欄、学期別に記載する「本人の状況・意向」「保護者の状況・意向」「具体的な支援方針」(目標、学校・関係機関の具体的支援内容、経過・評価)や「次年度への引継事項」の欄で構成している。

 「共通シート」は、不登校児童生徒ごとに、小学校1学年から高等学校4学年までの学年別出欠状況を記入する欄、支援を継続する上での基本的な情報の欄、家族関係の欄(生育歴や本人を取り巻く状況など)の欄を設け、例えば、小学校1学年から2学年といった上級学年、小学校から中学校への上級学校への引継ぎが円滑にできるよう工夫をしている。作成に関しての基本的な考え方についてであるが、特に、「学年別シート」の作成時期は、不登校の定義である年度間で30日以上の欠席に至った時点では確実に作成することとしたが、前年度の欠席や遅刻・早退、保健室登校等の状況をみて、欠席等が連続してみられたら、早期の段階から作成することが望まれる。また、作成に当たっては、学校関係者が中心となり、保護者等と話し合うなどして理解を深めておくことも重要である。

 なお、「児童生徒理解・教育支援シート」は、組織的・計画的な支援を行うために必要最低限の情報を記載できるようにモデル試案として考案したものであるが、今後、各学校において、カスタマイズして使用することや項目の見直しなども定期的に行うことが望まれる。

 特に大切なことは、「児童生徒理解・教育支援シート」は、関係者間で共有・活用されて、初めて支援の効果が期待されるのであって、担当者が作成したままにしておいたり、共有しなかったり、アセスメントを行わなかったりしては意味がない。児童生徒を支援するネットワークとして、「横」は、学校、保護者をはじめ、教育委員会、教育支援センター、医療機関、児童相談所、警察などの関係機関、「縦」は幼稚園(保育所)、小学校、中学校、高等学校等で情報を共有して、広く組織的・計画的な支援ができるようにすることが求められている。なお、支援に関するアセスメントのための資料として、「児童生徒理解・教育支援シート」には、別に「ケース会議・検討会等記録」用のシートもあるので参考とされたい。

(2)不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保

 不登校児童生徒一人一人の状況に応じて、不登校特例校、教育支援センター(適応指導教室)、フリースクールなどの民間施設やNPO、あるいは、夜間中学などを活用して多様な学習機会を確保する必要がある。更には、ICT を活用した学習支援の実施など環境整備を図る必要がある。

(3)教育支援センターを中核とした体制整備

 教育支援センターは、不登校児童生徒への支援に関する知見や技能が豊富であり、学校復帰を支援する機関として、全国で整備されてきた。しかしながら、依然として、設置していない自治体の数は、730にものぼり、全体の約40%は未設置である。

 不登校は、特定の児童生徒にのみ起こるものではなく、どの児童生徒にも起こり得るものであるといった認識の下、学習支援などの無償の学習機会を保障する上で、一層の整備を行う必要がある。

 併せて、これまでの教育支援センターは、不登校児童生徒のうち、通所希望者への支援が中心であったが、今後は、通所を希望しない不登校児童生徒に対する訪問支援などを実施し、学校外における支援の中核となることが期待されている。

 

明海大学副学長・教職課程センター長・明海大学地域学校教育センター長
高野敬三
Profile
たかの・けいぞう 昭和29年新潟県生まれ。東京都立京橋高校教諭、東京都教育庁指導部高等学校教育指導課長、都立飛鳥高等学校長、東京都教育庁指導部長、東京都教育監・東京都教職員研修センター所長を歴任。平成27年から明海大学教授(教職課程担当)、平成28年度から現職。平成27年から「不登校に関する調査研究協力者会議」委員(文部科学省)、平成28年から「教職課程コアカリキュラムの在り方に関する検討会議」委員(文部科学省)。

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特集:カリキュラムからみる不登校対応

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