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学校の教育相談活動と教育支援センターの役割機能 有村久春(東京聖栄大学教授)

NEWトピック教育課題

2019.05.21

新教育課程ライブラリ Vol.9 2016年

多様化する教育支援センターの機能

 今回の特集テーマである不登校の問題を考えるとき、学校外の施設である教育支援センターの存在は大きい。なかなか学校に足の向きにくくなっている子供にとっては、頼りになる居場所になっている。

 そこに通う子供の気持ち(本心)はどうであろうか。複雑多岐な〈こころ模様〉が描かれるところである。安心感や充実感だけでは片付かない。通いつつも、これでいいのだろうか、学校の友だちはどうしているだろう、いつまで頼りにできるのだろう、などと子供自身にも説明できない思いもあろう。

 文部科学科省の協力者会議の報告書(1)によると、教育支援センターは平成26年度に全国の1,324か所に整備され、小中学校の不登校児童生徒の12.1%が利用している状況にあるという(発足当時の平成5年度は8.0%:当時は「適応指導教室」)。

 この活用状況は、不登校にある子供の個々の事態を考慮し、居場所を提供するとの発想から、その子の生き方や学習を促すプログラム(例:時間割(図1))開発などを充実させる方向にある。具体的には、そこに通いつつ子供自身が自らのペースで学ぶこと(通所希望者支援)を中心にしている。これとともに、学校や教育支援センターなどには行けていないが、自宅での学びを欲している子供の学びを支援する在り方の工夫が求められている。いわゆる「訪問型支援」の充実である。これからの通常の学校教育で期待されるT<Lの発想を重視する方向とも重なるであろう(21 世紀コンピテンシー(2))。教師が「T:教える(teaching)」ことから、子供自らが「L:学ぶ(learning)」ことを拡大していくことである。


図1 教育支援センターにおける時間割 (例:A 市「ひまわり教室」)

 さらには、教育支援センターが中核的な構想を担い、地域ボランティアなどを活用した多様な支援をすることが不登校の子供の生き方や学びを支える力になる。そこには、自治体による行政的援助の一つとして、スクールカウンセラーや地域コーディネーターなどがその専門性を十分に発揮できうる人的・物的・財政的な整備も求められる。

学校の教育相談活動の充実

(例)SCの役割と活動

 すべての子供が自ら求める充実した豊かな学びを獲得できる学習援助が欠かせない。教育の基本原理に照らしても疑う余地のない至極当然の論理である。この意味において、上記の教育支援センターの存在は、不登校にある子供たちはもとよりその保護者や家族、学校関係者、地域の人々にとって大切な役割と機能を有しているといえよう。

 そのよりよきあり様を考えるとき、各学校は〈教育の場〉としてどのような相談活動を行うのであろうか。一般にこの社会には多様な組織や団体等があり、それら個々における相互連携のあり様がそのニーズに即応して柔軟に展開されているところである。

 本稿で考える学校の教育相談と教育支援センターの活動においても、双方の専門性(立場・役割)をそれぞれが十分に発揮するところに、子供個々が自らの存在や生き方を実感し、その場所での学びの事実や自己成長を獲得していく。双方が各々の役割を活かせない状況では、組織間相互の依存度に偏りが生じ、〈もたれ合い〉の事態も起きかねない。

 とりわけ不登校の子供のサポートにあっては、とくにスクールカウンセラー(SC)の活用を考えた学校・教職員の協働態勢が不可欠である。ある小学校のK校長からSCのあり様に関して、興味深い話をお聞きした。以下にその具体例を示す。その役割や活用の在り方・課題などが読み取れよう。

 本校のSCの勤務は、毎週火曜日である。この日は、一日(8時間)の仕事である。自らも好きなコーヒーを入れて、校長室でSCを待つ。K校長はここでの15分ぐらいの日常的な情報交換を大切にする。SCは、市の教育支援センターのカウンセリング室の仕事もしており、校長として多様な情報を共有できると考えている。

 一昨年の苦い経験が忘れられない。6年生のM男がいじめられていた。その事実を担任や学年では、ふざけごっことして受け止め、特段の対応をしなかった。中学生になったM男はその事態を引きずり、他の小学校からきた同級生からもからかいや悪口、しかけケンカなどの対象になった。9月からは登校できなくなった。このとき、母親は心配のあまり市の相談室を訪ねて、本校のSCに相談をしている経緯がある(いまも相談中)。

 このケースのことを小中の連絡協議会の席で知ったK校長は、6年生のときのM男の笑顔を思い出しつつ、自責の念を隠せなかった。「ふざけっこ」のとき、何かの対応はできなかったのか? と。

 この反省から、今年度からSCが来校する火曜日に〈教育相談委員会〉を開催している。毎月の偶数週の火曜日の放課後1時間程度を充てている。内容は、SC からの気になる子の情報提供や学校・教師への要望など。また、教職員からSC へのお願い、ケース理解の助言などである。メンバーは管理職、SC、生徒指導主事、学年主任、コーディネーター、養護教諭などである。ここ数回は参加希望の担任も少しずつ増え、互いの学びを深めている。教職員の多忙性を考え、基本的に出入り自由の学び合いの場にしている。

 先日の委員会でも、SCが「5年のY子の母親が来室。Y子が男子数人に足をかけられたり筆箱を隠されたりする。Y子が担任に訴えたがうまく取り合ってくれないようだ」と報告した。その後ただちに担任が母親と連絡を取り合い、翌日には担任が面談をした。母親も安心した様子で、Y子にも明るい笑顔と学習活動が少しずつ戻りつつある。母親はその後SCとも話し合っているという。

 K校長はこのようなやり取りが、SCと教員および他機関等を〈つないでいる〉と実感する。その流れをスムーズにするのが自らの役割であると考えている……。

 承知のように、とくに今日の国や各教育委員会の生徒指導(含む:教育相談)における施策は、「いじめ総合対策」をテーマに掲げ、そこに子供の生き方に関する問題性、とりわけ執拗ないじめを要因とする不登校への取り組みを重視している。そこには、例えばいじめ予防対策推進法(平成25年6月成立)や今回の不登校支援の報告書などに示される防止的な取り組みの具体化が連関している。

 このような動きに呼応して、SCの存在がクローズアップしている。文部科学省の施策でも、各教育支援センターと連携・協力を強化し、全公立中学校へのSCの配置や課題のある学校にSCの週5日相談体制導入、SCを活用した教員研修やストレス対処等のプログラムの実施などに取り組んでいる。また、各学校ではSCが小5と中1対象に個人面接を行う、SCと一緒に「いじめを学ぶ授業」を行うなど、いじめや不登校の未然防止に努めている例も少なくない。

不登校を予防する教育相談活動

組織援助の在り方と工夫

(1)学級担任へのサポート

 教師とりわけ担任にとって、子供が学校に来られなくなることほどつらいことはない。その子供自身学校に行かなくてはならないと思いつつも、登校できない事態に本人なりに苦しむ。前の日までは平静を装いつつも、朝になると頭痛や吐き気、発熱などの身体不調を訴えることになる。学習用具を整え、登校の準備をすっかり済ませているのに朝になるとグズグズしてしまう。このような不登校の心理(図2)を教育者として理解しているだけに、その子との距離の取り方や指導援助の具体策が見えにくくなる。ここにあっては、例えばSCが担任の悩みや不安、いまの援助の実情などをよく聴き受け一緒に考えることである。また、担任が指導する際に役立ちそうな資料や他の教員から情報を提供することも有益であろう。


図2 不登校の子の心理

(2)教職員の情報共有及び管理

 相談活動の実効を挙げるためには、校内の組織(図3)が各々の担当が把握した状況や日頃の教育活動の事実を情報提供することである。教員の役割が機能化・態勢化する(柔軟に動く)ことを重視したい。例えば、外部の研修会等で得た情報や専門機関の発達検査の活用・理解などを生徒指導部会で学び合うことである。また、「教育相談だより」を発行して、共有したい相談の知識や情報を掲載する。SCや養護教諭・栄養教諭など特異な立場で子供とかかわる教員の声を紹介する。その際に、これらの活動で得られた子供の個人情報や各種データについては、その有効活用のためにも守秘義務に徹し、その管理・保管(含:廃棄)に努める必要がある。

(3)校内及び関係諸機関との連絡調整

 日々の組織的活動としては、担任・学年教員をはじめ管理職、生徒指導担当、特別支援教育コーディネーター、不登校問題の担当、養護教諭、スクールカウンセラーなどが協働して子供に向き合う(図3参照)。また、不登校の事態が学校教育の範疇を超えて地域の医療や福祉などの専門機関と連携協力する場合、とくに教育相談所(室)、児童相談所、家庭支援センター、保健所、図書館など子供が安心して過ごせる場所をすすめることである。


図3 校内組織の例

(4)ケース研究による不登校理解

 教員自らがケース対応力を身に付けることである。とくに不登校の場合、その子の内なるこころの辛さを的確に理解したい。例えば、担当者(担任)がその子供を援助するプラスエネルギーを校内研究会で学び合うことである。このことで苦しんでいる、こんな思いでいるのでは? 担任としてこのように進めてはどうか? などの視点から検討する。

 また、全教職員が自己関与する研究組織でありたい。例えば、経過説明の後、①ケースからの学びを記述する、②グループで個々の学びを理解し合う、③その学びを発表する、④提供者からの学びを聞く、⑤校長・教頭がコメントするなどの場面を構成し、ケース研究の学びを実効性あるものにする。

 

[注]

(1) 「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」文部科学省:不登校に関する調査研究協力者会議、平成28年7月

(2) OECDの提唱する「21st Century Competencies」(2015. 5)である。知識(knowledge)、スキル(skills)、エモーショナルクオリティ(emotional qualities)、ウェルビーイング(well-being)、メタコンピテンシー(meta competencies)などの能力を指している。

 

東京聖栄大学教授
有村久春
Profile
ありむら・ひさはる 東京都公立学校教員、東京都教育委員会勤務を経て、平成10年昭和女子大学教授。その後岐阜大学教授、帝京科学大学教授を経て平成26年より現職。専門は教育学、カウンセリング研究、生徒指導論。日本特別活動学会副会長。著書に『改訂二版:改訂版:キーワードで学ぶ特別活動 生徒指導・教育相談』『カウンセリング感覚のある学級経営ハンドブック』など。

 

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