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「社会に開かれた教育課程」の成立条件とは 佐藤晴雄(日本大学文理学部教育学科教授 )

NEWトピック教育課題

2019.05.16

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.2 2018年

「社会に開かれた教育課程」とは

 「社会に開かれた教育課程」は、平成27年8月の中央教育審議会教育課程企画特別部会「論点整理」で取り上げられ、その後、平成27年12月の三つの答申でもその理念が重視された。その答申の一つである「チーム学校」答申は、「社会に開かれた教育課程」を「社会の変化に向け、教育が普遍的に目指す根幹を堅持しつつ、社会の変化を柔軟に受け止めていく」ものと定義して、その実現のためには、①学校の組織や文化の在り方を見直し、コミュニティ・スクール等の仕組みを活用すること、②多様な専門性や経験を持つ地域人材等との連携・協働により家庭や地域社会を巻き込み、教育活動を充実していくことが大切だと提言した。この答申は「チーム学校」を提言したことから、「社会に開かれた教育課程」実現のための体制づくりに焦点を当てているわけである。
 同時にまとめられた「新しい時代の教育や地方創生」答申(以下、「地方創生答申」)は、地域が学校支援を超えた体制を整備して「学校のパートナー」として、「広く子供の教育に関わる当事者として、子供たちの成長を共に担っていくことが必要」だと述べて、地域による積極的な学校参画を求め、結局はコミュニティ・スクールと地域学校協働本部との一体的運用を提言した。
 そして、平成28年12月の中教審答申「学習指導要領等の改善及び必要な方策」(以下、「学習指導要領答申」)は、「学校を変化する社会の中に位置付け、学校教育の中核となる教育課程について、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な教育内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを明確にしながら、社会との連携・協働によりその実現を図っていくという『社会に開かれた教育課程』を目指すべき理念」だと位置付けて、より具体的な定義を示したところである。
 同答申は、その教育課程にとって重要な点を以下の3点にまとめている。

① 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
② これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切り拓いていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
③ 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。

 この答申を受けて改訂された新学習指導要領は、「総則」の前に新設された「前文」の中でも、その答申の定義を踏まえた記述を盛り込んだ。そこで本稿では、まず、「社会に開かれた教育課程」の考え方で重要な点である以下の3点に絞って、その実現の在り方について述べてみる。すなわち、①学校教育を通じた地域社会づくりにも目を向け、その目標を学校と地域社会で共有し、②社会や世界と向き合い、人生を切り拓く資質・能力を育成し、そのためには、③地域の人的・物的資源の活用や社会教育との連携を図ることを従来よりも重視している点である。
 最後に「社会に開かれた教育課程」実現に有効だと考えられるコミュニティ・スクールの活用の在り方について提言的に述べておきたい。

実現のための成立条件

 「社会に開かれた教育課程」を目指す学校とは、オープンシステムによる学校にほかならない。伝統的な自己完結的学校は、学校に在籍する児童生徒に対して学校に勤務する教職員が学校の施設設備を用いて教育活動を展開するというクローズドシステムを採っていた(図)。教育活動は学校内で巡回し、内部にとどまる態様にあった。


 これに対して、オープンシステムの学校は、クローズドシステムのような教育を展開しつつも、人的資源・情報資源・物的資源等を学校外からも取り入れ、その成果を地域住民や社会教育にもアウトプットしていくようなシステム態様になる。これは開かれた学校の在り方を意味する。学校支援ボランティアなどの学校外の人的資源が教育活動等に参画し、学校運営に多様な意見やアイデアなどの情報資源を反映させ、さらに地域社会の物的資源を活用しながら教育活動を展開するのである。そして、地域学校協働活動によって、地域づくりや家庭教育支援などにも学校が関わることが期待されている。
 そこで、学校の成果を地域や社会教育にアウトプットしていくという方向は、地域社会づくりにつながることになる。まずこの点について述べておこう。

(1)学校教育を通じた地域社会づくりと目標の共有化
 ー地域学校協働活動の工夫ー
 前述の「地方創生答申」は、地域社会と学校との連携・協働によって、「子供の教育という共通の旗印」の下に地域住民がつながり、地縁に限らず新たな人的つながりも生まれ、また、学校も地域社会の課題解決に関わっていくことにつながると述べる。そのために、「真の意味で地域と学校が連携・協働することを目標としていく」よう求めた。
 そこには、学校と地域社会との連携を学校内に閉じ込めずに、広く地域社会のための活動にまで広げ、その過程を通じて、子供の「主体的・対話的で深い学び」を実現する共に地域づくりを図ろうとする発想がある。要は、学校が「社会に開かれた教育課程」に取り組むためには、地域社会にも成果を及ぼす形で連携することが必要条件になる。
 そのための目標の共有化について、「学習指導要領答申」は、学校が「地域と対話し、地域で育まれた文化や子供たちの姿を捉えながら、地域とともにある学校として何を大事にしていくべきかという視点を定め、学校教育目標や育成を目指す資質・能力、学校のグランドデザイン等として学校の特色を示し、教職員や家庭・地域の意識や取組の方向性を共有していくことが重要」だと述べる。しかし、対話や説明等だけでは「共有化」は困難である。「共有化」は少なくとも、「説明→理解→受容」という過程を要するからである。
 そこで求められるのは、地域住民等による学校参画である。その参画は「学校行事」⇒「会合」⇒「支援」⇒「運営」という段階をたどるのが望ましい。「運営」参加はまさにコミュニティ・スクールのねらいにほかならない。地域住民等はそうした参画過程を通じて、目標に関する説明を受け、「対話」によって目標を理解しつつ受容していくことになる。

(2)社会や世界と向き合い、人生を切り拓く資質・能力の育成
 注目すべきは「地域学校協働活動」である。これは、前述の「地方創生答申」で提言された活動で、「地域の高齢者、成人、学生、保護者、PTA、NPO、民間企業、団体・機関等の幅広い地域住民等の参画を得て、地域全体で子供たちの学びや成長を支えるとともに、『学校を核とした地域づくり』を目指して、地域と学校が相互にパートナーとして連携・協働して行う様々な活動」(1)だと定義される。
 地域社会と学校の関係性を、従来の地域による学校支援に留めず、両者双方向の「連携・協働」を推進し、個別の活動から「総合化・ネットワーク化」へ発展させることを意図している。地域学校協働活動は、学校支援活動のほかに土曜日の教育活動や放課後子供教室、家庭教育支援活動、地域活動、まちづくりなどの社会教育活動等も含む営為とされる。このように、「学び」の場を地域社会に求めるとともに、地域社会を「学び」に取り込むという発想が鍵になる。

(3)地域の人的・物的資源の活用や社会教育との連携
 「新学習指導要領」が示す学びの在り方、すなわち「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」という視点にとって、教員による机上学習に加えて、実生活で多様な経験を積んだ地域人材や特色ある地域教育資源、さらに土曜日の教育活動など社会教育の場を活用することが効果的である。その場合、二つの視点に注目する必要がある。これら資源や場の活用によって学校の通常授業を「量的」に補うのか、あるいは「質的」に補うのかという支援方法の二つの視点である。これは、子供を「どのように支援するか」というねらいによるであろう。
 ただし、「量的」視点ばかりに傾き、地域人材を下請けにしてはならない。ボランティアには「量的」支援活動を好む者もいるが、学校としては「深い学び」を取り入れるためには、教職員にとって実施困難な教育内容(例: 医療・戦争体験・郷土史・地場産業など)を採り入れることが欠かせない。そこで、外部の関係者が一堂に会する場(学校運営協議会)を制度として持つコミュニティ・スクール(CS)の活用が有効だと思われる。

コミュニティ・スクールの活用

 カリキュラム・マネジメントとは単なる教育課程の編成とは異なり、PDCAサイクルによる取組のこととされるが、そうした時系列の視点に加えて、各過程におけるヒト・モノ・カネ・情報という四つの資源(2)の適切かつ有効な活用という視点も重視される。「社会に開かれた教育課程」のマネジメントを実現するためには、4資源を地域社会にも求めていくことが不可欠になる。
 しかし、資源調達を要するP段階で担当教員がそれぞれ資源の情報を把握し、活用することになれば、負担が重くなるばかりでなく、限界がある。Dの実施段階でも地域人材の効果的な活用を図るためには工夫を要し、C段階やA段階で評価や改善を図る場合にも学校内だけでは一元的レベルに留まりがちになる。ある小学校低学年の公開授業で担任は児童が課題に集中していたので良い出来だと自己評価を行ったが、参観した保護者・住民は児童が活発な態度を見せなかったので芳しい評価を下さなかった。一見、その担任の評価が正しいようにも思われるが、アクティブ・ラーニングの要素がその授業に欠けていたのかも知れない。一つの授業でも立場によって評価が異なることを象徴する事例になる。
 筆者らの調査(3)によると、教育課程を議事にした学校運営協議会は約78%で、その成果として教育課程の改善・充実が図られたと回答した校長は約60%である。学校運営協議会は「承認」に至るPの段階で教育課程の在り方を議論し、広く地域社会や識者からアイデアや専門的情報を得ることによって、効率的に教育課程を社会に開くことができる。特に大切なのは、委員以外であっても教育課程担当教員が臨席し、意見を述べ、委員の意見を傾聴することである。
 以上のように、「社会に開かれた教育課程」とは教育課程や授業だけを開くことに留まらず、学校運営全体を外部に開き、資源や情報などを地域社会と相互活用していくオープンシステムによってこそ、最も効果的な実践的戦略になると言えよう。スクール・リーダーにはそのための地域社会との交渉スキルが強く求められるのである。

[注]
 文部科学省「地域学校協働活動の推進に向けたガイドライン」2017年4月
 牧昌見は、ヒト・コト・カネ・組織運営(組織マネジメント)を4M 条件と名付けた(牧昌見著『学校経営の基礎・基本』教育開発研究所、1998年)。
 佐藤晴雄編『コミュニティ・スクールの全貌』(風間書房、2018年所収)「コミュニティ・スクールの実態と校長の意識に関する調査」

 

日本大学教授
佐藤晴雄
Profile
さとう・はるお 日本大学文理学部教育学科教授。東京都大田区教育委員会、帝京大学助教授などを経て2006年から現職。中央教育審議会専門委員(初等中等教育分科会)、文部科学省コミュニティ・スクール企画委員などを歴任。博士(人間科学)大阪大学。日本教育経営学会理事、日本学習社会学会会長など。主な著書に、『コミュニティ・スクール』(エイデル研究所)、『コミュニティ・スクールの成果と展望』(ミネルヴァ書房)、『教育のリスクマネジメント』(時事通信社)、『新・教育法規解体新書』(東洋館出版社)ほか多数。

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