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「社会に開かれた教育課程」づくりにおけるリーダーの役割 寺崎千秋(一財・教育調査研究所研究部長)

NEWトピック教育課題

2019.05.16

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.2 2018年

社会に開かれた教育課程の意義の理解

 小学校において平成32年度(中学校は33年度)全面実施となる新教育課程の編成は現在進行形である。新教育課程は従来のものを単に引き継いだり改善したりするのではなく、新教育課程の理念である「社会に開かれた教育課程」となるようにする必要がある。そのため、学校長等のリーダーは「社会に開かれた教育課程」の理念を正しく把握し、新学習指導要領に基づいて新教育課程の編成・実施をリードすることが求められる。

 「社会に開かれた教育課程」は平成28年12月21日の中央教育審議会答申においてその趣旨やポイントが示されている。これを受けて新学習指導要領(平成29年3月31日)の前文に以下のように示されている。

 教育課程を通して、これからの時代に求められる教育を実現していくためには、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有し、それぞれの学校において、必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にしながら、社会との連携及び協働によりその実現を図っていくという、社会に開かれた教育課程の実現が重要となる。

 中央教育審議会の答申の関連する内容を踏まえ、「社会に開かれた教育課程」について本前文の当該文のポイントとして以下の4点を挙げることができる。
① これからの時代に求められる教育を実現する。
② よりよい社会を創るという理念を学校と社会とが共有する。
③ 必要な学習内容をどのように学び、どのような資質・能力を身に付けられるようにするのかを教育課程において明確にする。
④ 社会との連携及び協働によりその実現を図る。
 これらに関する具体的な内容は、教育課程編成の基準である新学習指導要領の総則等に具体的に示されている。学校の教育課程編成に際しては、特に全教職員が総則の具体的な内容を踏まえて編成計画の作成や編成作業に当たることが大切である。

校長の役割と取組

 校長は学校の最高責任者として新教育課程編成の前提となる学校づくりのビジョンを示さなくてはならない。「これからの時代」とはどのような時代なのか、中央教育審議会答申などに示されている時代や社会の激しい変化、これに対応して生きる人づくり、子供たちの教育はどのようにあるべきなのかを把握する。また、これからの時代の教育課程である「社会に開かれた教育課程」の意義・意味についても十分な理解が必要である。さらに、これらを踏まえた、自らの教育への識見や豊かな経験も発揮するときでもある。「これからの時代」を受け止めこれからの時代に生きる子供たち、未来を創る子供たちに求められている生きる力、これを実現する「社会に開かれた教育課程」により「資質・能力の三つの柱」を育む学校とはどのような学校なのか、これをどのように創っていくのか、その展望と計画を示すことである。少なくとも小学校では2020年、新教育課程全面実施までの中期的なビジョンを示し見通しがもてるようにすることが責務である。

 新学習指導要領に基づく新教育課程の編成は、10年に一度の学校改革、学校リニューアルのチャンスである。学校がその歴史の中で育んできた伝統、特色ある教育活動などや家庭や地域も含めて受け継がれてきた学校文化などから、これからも大切にすべき不易の部分として何を引き継いでいくのかを明らかにする。一方、時代や社会の要請に応じて改訂された新学習指導要領の趣旨を把握し、これを流行の部分として確かに教育課程に位置付けていく。この両面を踏まえて、2030年を目途にし2020年に向けてどのような学校を創っていくのか、新たな教育の出発となる学校経営ビジョンを示すことである。

 新たに打ち立てた学校づくりのビジョンを今後どのように実現していくか、教職員はもとより保護者や地域の人々にビジョンの説明とともに実現に向けた年次計画を示す。その際、計画を示すに止まらずに、これについての意見聴取、意見交換を行うなど計画や実現に向けて参画してもらい、以後の協働の取組を依頼する。移行期間にまず実行しなくてはならないことは「学校教育目標の見直し」である。2030年ごろに生きる子供たちの未来を見据え、これまでの学校教育目標がこれからの時代に十分な目標となっているかを原点から見直すということである。今回の学習指導要領の改訂において、教育課程は学校教育目標を実現するためのものであることを一層強調している。当然のことであるが、学校教育目標と教育課程が乖離したものとならないよう、教育課程は学校教育目標を実現するためのものであることを教育目標の見直しや新教育課程の編成さらにはカリキュラム・マネジメント等を通じて教職員、保護者、地域の人々、そして子供たちの意識が深まるように努める必要がある。

 一方、校長は、県市等の学校を設置する教育委員会が学校に示すこれからの時代に向けた教育目標や教育方針を踏まえることも大切である。県市等の教育委員会が示すこれからの時代の教育目標や教育方針は、言うまでもなく県民・市民等の願いであり要望である。学校教育目標の見直し、教育課程編成の重点や方針を定める際にこれらの理解に十分に努めてそれとの関連や位置付けに配慮する。また、その在り方についても教職員、保護者や地域の人々等に説明し、理解と協力を得るようにする。

 学校の教育目標が決まれば、新学習指導要領に基づく教育課程の編成の重点と方針を決定する。学校の実態、教職員の実態、子供の実態、家庭や地域の実態などを踏まえて、教育目標のどの目標を重視するのか、学校文化や特色ある学校づくりの視点は何か、学習指導や生徒指導、道徳教育等々の諸教育活動で重点とすることは何かなどを明らかにする。次いで、これらにどのような方針で取り組むのかを明示する。ここで重要なことは、あれもこれもと欲張る八ヶ岳型の示し方ではなく、重点とルーチンを区分けする富士山型で示すことである。全員が一致協力・団結して取り組むべきことは何か、その頂上がよく見えるようにすることである。そのためにも繰り返すが、教職員はもとより保護者、地域の人々などと十分に連携・協力し、協働が円滑に行われるよう配慮することを大切にする。

 新教育課程編成は校長を中心にして全教職員の協力、さらには、保護者や地域の人々の参画を得て、協働作業で行う。そのために組織的な取組と年度計画や工程表を明確にした取組が必要となる。教務主幹・主任を中心に全教職員等が組織と自己の役割を認識し、意図的、計画的、組織的に取り組むことができるよう方針を示し、組織編成と計画表・工程表の作成や執行管理を副校長・教頭や教務主幹・主任等に委ねるようにする。

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特集:「社会に開かれた教育課程」のマネジメント

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