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若手の増加による新たな学校経営課題 大脇康弘(関西福祉科学大学教授)

NEWトピック教育課題

2019.05.16

『リーダーズ・ライブラリ』Vol.5 2018年

教員の年齢構成の変動

(1)「フラスコ型」教員構成へ

 教員の世代交代が急速に進んでいる。年長教員が定年退職し若手教員が大量採用されることによって、20代30代の教員が半数を超える学校が一般的となっている。2000年代初頭には、40代50代の年長教員が大半を占めて、20代30代教員が少数である「ワイングラス型」の年齢構成であった。教員採用数が少ないため、30代後半、教職経験10年を超える教員でも当時は「若手」と呼ばれていた。学校は落ち着いてはいるが、若さと活気に欠ける面があった。

 2005年以降、大都市部を中心に教員の大量採用時代が始まり、年々新任教員が職場に入ってきた。このため、50代教員の塊りと、20代30代教員の塊りに挟まれて、30代後半から40代が少数である「ふたこぶラクダ型」(「ダンベル型」)となってきた。その後も、若手教員が増加することによって、現在は、20代30代教員が6割を超えるほど若年化が進んできた。つまり、若手教員の大きな塊りと年長教員の塊りに挟まれて、40代の薄さが目立つ「フラスコ型」へと変化してきた。


表 X市の小学校教員の年齢構成

 表は、関西の大都市部に位置するX市における小学校(特別支援学校を含む)教員の年齢構成を示したものである。「フラスコ型」の年齢構成といえよう。なお、同市の小学校教員の平均年齢は39.6歳、中学校教員のそれは41.2歳である。男女比をみると、小学校は38:62、中学校は58:42となっている。

(2)人材育成のアポリア

 こうした教員の年齢構成の変動は、次のような人材育成の難問を教育行政や学校現場に迫ってきた。
 第一に、大量に採用した新任教師の研修と職場への定着という問題である。教育改革が急激に幅広く進展する中で、学校現場は教員を育てる条件を失いつつある。若い教師同士が切磋琢磨して新しい風を学校現場に起こすことを期待したいが、それを支える仕掛けや支援策が求められる。
 第二に、不足するミドルリーダーの人材育成と研修体制を整える問題である。これまでの中堅教員層は絶対数が少なく、若年教員の登用と年長教員の活用が必要不可欠である。特に、若年教員の中で潜在力のある教員にリーダーシップ経験を積ませ、リーダー登用後も指導支援することが必要である。
 第三に、校長・教頭の絶対的不足という最も深刻な問題である。適齢層が薄いことに加えて、学校管理職が従来より激務となり、権限が少ない一方で責任が重いため、志願者は著しく減少している。学校づくりの核となるスクールリーダーの養成を組織的に行うことが緊急の最優先課題となっている。

(3)若手教員の育成

 さて、X市立M小学校(仮称)をのぞいてみると、全校26学級(通常学級22学級、特別支援学級4学級)、児童数約700名を超える大規模校である。校区は、都市部にあって商工業地域と大規模集合住宅があり、多様な職業・階層から構成されている。教員数は39名で、内訳は20代11名、30代14名、40代5名、50代8名(校長・教頭を含む)、60代1名(再任用)である。20代30代が6割を占め、40代が少ない状況にある。初任者研修の拠点校であるため、毎年度新規採用教員が2〜4名配属されている。今年度も新任教員が4人赴任し、2年、3年、4年、5年の学級担任となった。

 こうした教員の年齢構成の変動は、学校経営上、教員の人材配置と人材育成、組織運営の管理、危機管理にわたって校長・教頭が配慮し対応すべき課題をもたらす。具体的に列挙すると、次のようになる。①新任教員の職場適応を図り、授業づくり・学級づくりを指導し支援する。②学年団の編成を工夫し、学年経営を支援指導する。③ミドルリーダー層を育成し、人材登用する方策を打つ。④指導主事や管理職の候補者を見定めて育成していく。⑤産休・育休、病休教員の代替講師を確保する。

 ここでは、若手教員が増加し多数を占める時代において、学校の人材育成という視点から短期的課題とともに、中長期的課題について考えてみたい。

教師のライフコースからみた若手教員

(1)若手教員とは

 教師は年齢・教職経験年数を手がかりに、一般に若手教員、中堅教員、年長教員と区別される。また、役割・機能別には、一般教員、ミドルリーダー、スクールリーダーとも呼称する。しかし、教員の年齢構成の変動によって、この概念は大きく変化している。特に、中堅教員、中堅リーダー、ミドルリーダー(以下、中堅リーダーと総称)の変容が大きい。2000年代前半までは、中堅リーダーといえば、教職経験20年、40歳以上、主要な主任を2〜3種経験していることが常識であった。リーダー経験を積み重ね、同僚教員から実践力、指導力、人物ともに認められている存在であった。「同僚性・水平性」が強い横並び組織の中で、影響力を発揮するリーダーたる条件は高かったのである。

 ところが、近年はミドルリーダー層が多様化し、若年化する一方で、年長教員を含み込み、概念は拡充されてきた。教職経験10年未満、20代の教員でも、学年主任はもちろん、研究主任、生徒指導主事の役割を担わせることが少なくない。

 若手教員に着目すると、これまでは20代から30代前半、教職経験1年〜10年未満の教員を総称していたといえる。中学校・高校では、1学年〜3学年までの担任持ち上がりを2回以上経験することになる。しかし現在は、若手教員といえば、教職経験1年〜5年程度、20代の教員を意味するように、限定されてきた。

 例えば、グループメンタリング制度を組織的に導入している大阪市では、教職経験5年目には2校目に人事異動し、メンター教員となって若手教員を育成支援する立場へと役割が変化する。つまり、教職経験5年目になると、経験年数が若い教員の相談相手、支援役となるのである。同様な例として、ミドルリーダーの育成・拡充方針が打ち出される地域では、教職経験10年未満、20代であったとしても、主要な主任に登用し、時には指導主事に抜擢するケースも出てきている。ここでは、ミドルリーダーを促成せざるを得ない困難が横たわっている。リーダーとしての未熟さだけではなく、教育実践者として確かな指導経験を培う時期でもあることを確認しておきたい。

 こうした変化は、教員政策においてもうかがうことができる。中央教育審議会答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について〜学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて〜」(2015年12月21日)は、教師の養成・採用・研修をトータルに把握し、教員育成指標を策定し、教員の学びを支援することを提言している。

 この答申では教師のライフステージを次の三段階に分けている。①1〜数年目:教師の基礎を固める時期、②中堅段階:「チーム学校」の一員として専門性を高め、連携・協働を深める時期、③ベテラン段階:より広い視野で役割を果たす時期(研修リーダーとして、管理職としてを例示)。新たな教員政策の展開を踏まえて、教師の役割と時期区分を設定する動きとして注目されるが、第一段階が比較的短期間に設定されているのである。

(2)教育実践者としての基盤形成期

 教育実践者としての実践様式、協働スタイルは、どんな初任校に勤務し、どんな教師に出会い、どんな教育実践を行うかが大きく影響する。このことは、いくつもの実証的研究で明らかにされてきた。例えば、藤沢伸介による「経験の蓄積による教師の指導態度・技術の変化」(跡見学園女子大学紀要第18号、1985年)をみると、初期、前期、中期、後期の四つに区分されている。

  • a.初期…手探り、試行錯誤を通して授業や学級経営をどうにかこなす。学級の規律維持の方法を獲得し、理想を現実に合わせて再編成することが課題となる。
  • b.前期…授業や学級経営の基本パターンを獲得(教師主導型で指導する方法・技術のまとまりができてくる、カン・コツ)、仕事(教務・校務分掌)が能率的となり、学級以外にも視野を拡大し、活動を広げる。
  • c.中期…教育実践のスタイル(基本パターン)を生徒(集団)等の実情に応じて柔軟に適用し、必要に応じて修正する。
    →安定期:自信・満足を得る。教育実践や力量形成における自己の課題を探求し、実践を対象化する。そうでない場合は、停滞やマンネリ化に直面する。
  • d.後期…パーソナリティを生かした独自の実践スタイルを獲得し完成する。少数者は状況に応じて変幻自在にこなす。指導よりも経営管理的業務を重視するようになり、管理職へと進む。

 一般に教師は経験を重ねることによって授業を円滑に進められるようになるが、授業がマンネリ化したり仕事に対する熱意が失われることもある。極く一部の資質ある教師は、独自の授業スタイルを紡ぎ出し、生徒に意義深い授業を提供できるようになる。他方、適性を欠く教師は、授業を工夫する意欲を失い、生徒に高圧的になったり無関心になったりするのである。

 各段階への移行は、教職経験年数1年、3〜5年、10年、15年という目安を挙げることもできるが、個人差が大きい。力量を広げていくことは容易だが深まりを出していくことは難しく、創意工夫がいる。また、学級・教科レベルから学年レベルまでの関心はあるが、学校レベルの問題意識は持ちにくく、組織リーダーの視野と役割が持ちにくいのが現実である。

 ここでは、教育実践者として初期を経て、前期をいかに形づくるかに注目したい。教員としての基盤を形成する大事な時期である。若手教員として、子供と向き合い、授業づくり、学級づくりを通してどのような教育経験を積むのか、子供の変容を肌で感じ教師としてのやりがいを感じ取るのかである。それは教師として順調なスタートを切るよりも、むしろ壁にぶつかりそれを乗り越えて初めて得られる「情動」が大きいのかもしれない。スクールリーダー、ミドルリーダーはこのことを踏まえて、若手教員に対して助言・援助・支援することが大事である。

若手教員が「経験を通して学ぶ」

 教員の大量採用時代に入職した若手教員には、いくつかの特徴がみられる。まず、教員を積極的に志望し教員採用試験を突破してきており、真面目で素直な者が多い。「ゆとり世代」に当たり、いわれたことには真摯に取り組むが、「指示待ち」で自主的に動きにくいと指摘される。情報化社会に育ち、社会経験、生活体験が少なく、対人関係、対自己、対課題に向き合い、揉まれる経験はあまりない。生徒・保護者との人間関係づくりが苦手で、同僚とのコミュニケーションがとりにくい者もいる。

 こうした若手教員が、教育実践者としてどのように基盤を築いていくのか、社会人としてどう成長するのかは、たやすい問題ではない。初任者としての1年目、初任校で仕事の仕方を体得し、同僚と協働し、職場にいかに適応するかは、教師人生の分かれ目である。その際、初任者としての失敗は次のステップにつながり、乗り越えるべき壁は成長のカギでもある。学級づくりがうまくいかない、授業が思うようにつくれないことを、同僚、先輩教員に相談し、助言、支援を得ながら乗り越えることが、次のステップにつながる。

 教育実践者として成長する要因を挙げると、①経験を通しての学び、②役割モデル(先輩教員)との交流、③チームでの学習会(学年・教科、若手教員)、④公式の研修会などである。特に、①の影響が大きい。

 経営学者の松尾睦著『「経験学習」入門』(ダイヤモンド社、2011年)は、民間のマネージャーに対する実証的研究・事例研究を行い、「経験を通して学ぶ」には次の三つが大事だと指摘する。「適切な『思い』と『つながり』を大切にし、『挑戦し、振り返り、楽しみながら』(ストレッチ、リフレクション、エンジョイメント)仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができる」。ここでいうストレッチは「高い目標に向かって挑戦する姿勢」を、リフレクションは「何かアクションを起こしている最中やアクション後に、何が良くて何が悪かったかを振り返ること」を、エンジョイメントは「やりがいや意義を見いだして、仕事を楽しむこと」を指している。マネージャーは職場で経験を通して学びながら成長することが、端的に表現されている。

 この言葉を、若手教員、特にミドルリーダーとしての役割を期待される教員に伝えたい。

 

関西福祉科学大学教授
大脇康弘
Profile
おおわき・やすひろ 教育経営学・教師教育学専攻。大阪教育大学夜間大学院を拠点に15年間スクールリーダー教育を構築する。大学・教育委員会連携の「スクールリーダー・フォーラム事業」で日本教育経営学会「実践研究賞」受賞。編著著に『「東アジア的教師」の今』(東京学芸大学出版会)、『学校をエンパワーメントする評価』(ぎょうせい)、『学校を変える 授業を創る』『学校評価を共に創る』(学事出版)。

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