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授業力を上げるためにリーダーは?

寺崎千秋

授業力を上げるためにリーダーは?[第1回] 「使命感、熱意、感性」の涵養

NEWトピック教育課題

2020.08.30

授業力を上げるためにリーダーは?[第1回]
「使命感、熱意、感性」の涵養

一般財団法人教育調査研究所研究部長
寺崎千秋

『新教育ライブラリ Premier』Vol.1 2020年5月

若手教員育成の方向性

 「授業は命」「授業で勝負」「授業で子供を育てるのが本筋」などと言われてきた。授業は、教育課程に基づく指導計画に即して意図的、計画的、組織的、継続的、発展的に実施するものであり、教育活動の中核であり、教師の専門性の発揮の場である。

 平成27年の中央教育審議会答申「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」では、「学び続ける教員像の確立」を求めた。具体的には、「これからの時代の教員に求められる資質能力」として、「使命感や責任感、教育的愛情、教科や教職に関する専門的知識、実践的指導力、総合的人間力、コミュニケーション能力等」とともに、「自律的に学ぶ姿勢を持ち、時代の変化や自らのキャリアステージに応じて求められる資質能力を生涯にわたって高めていくことのできる力や、情報を適切に収集し、選択し、活用する能力や知識を有機的に結びつけ構造化する力」の必要性、等々を求めた。

 本連載では、様々な課題のうち、若手教員の授業力を高めるためにスクールリーダーは何をし、どうサポートしていけばよいかについてまとめ、提供したい。内容としては、今回の「使命感、熱意、感性」をはじめ、「児童・生徒理解」「統率力」「指導技術(授業展開)」「教材解釈、教材開発」「『指導と評価の計画』の作成改善」を取り上げる。

使命感、熱意、感性についての自覚、認識、意識を把握する

 これらについて“べき論”をいきなり説教するのではなく、まずは当人がどのように考えているか、受け止めているか、当人の自覚、認識、意識等の把握に努めるようにする。

 「使命感」とは「与えられた任務をやり遂げようとする責任感」、「熱意」とは「熱心な気持ち、意欲」、「感性」とは「外界の刺激に応じて、感覚・知覚を生ずる感覚器官の感受性」とある(『広辞苑』第7版)。これらを若手教員にどう育んでいくか。まずは、教育という専門職に対する「使命感、熱意、感性」の実態、状況の把握である。

 「あなたの教育に対する使命感はどのようなものか」「教育に対する思いや意欲、熱意はどれくらいのものと自覚しているか」「子供に対する感性は鋭いと思うか鈍いと思うか」などと問い掛けてみよう。これらをどう思っているか考えているか引き出してみよう。また、これまでに出会った教師からこれらについて影響を受けたことがあるかも聴き出してみよう。自分なりにモデルや模範を持っているかを把握することである。こうして聴き出した思いや考えのよさに共鳴し、認め褒めて、それを大切にするように伝える。課題がある場合には、即指導するのではなく、後日、観察で得た事実を通してアドバイスするようにする。若手を十把一絡げにせず、それぞれにこれまでの人生があり経験があることを大切にし、一人一人のよさや特色は何かを聴きながら把握してみよう。

スクールリーダーが考える「使命感、熱意、感性」について話して聞かせる

 若手から聴き出すだけでなく、その後に「私の場合は……」とスクールリーダーの考えや経験を伝えてみる。特に任務については、公務員として法規にその使命が定められ身分が保証されていること、国民等の税金によって給与等があること、教育活動も様々な法規で定められていること、授業は学習指導要領等に基づいていること等々を話し、自分の認識や経験も交えて伝え、使命の重大さについて共通理解することを大切にする。

 熱意については、熱心な気持ちや意気込みは大切だが、子供という相手(発達段階)があること、全ての子供に一様に伝わるとは限らないこと、時には押しつけを感じたり嫌がられたりすること等もあること、さらに、熱意は熱い思いであっても外には出さず、地味な地道な指導で継続することで発揮することもあること等々を伝えておくようにする。

 感性は、子供の声や行動から感じるものであり、自分の中にあるアンテナを高くし磨いておくことが必要であること。常にキャッチしようとする気持ちや構えをもつように努めることでアンテナが磨かれ、子供の発信するものをキャッチすることができるようになること。それだけに感性を研くのには時間がかかること等を伝える。まずは、子供の目を見て、声を聴いて、動きを捉えるように努めることを忘れずに続けることを伝える。

授業観察からよさを認めて褒め、課題を引き出し解決策を共に考える

 使命感、熱意、感性が発揮されている姿は日々の教育活動、授業において自ずと滲み出てくるものである。特に子供たちは正直であり、教師の熱意の有る無し、感性の鋭さ・鈍さなどは敏感に感じ取っている。その状況をしっかりとキャッチすることが大切である。

 授業の導入での学習への興味・関心の引き出し方、学習課題づくりへの子供の参加・参画状況、発問の分かりやすさや次につなげる意図、発問を発した後の待ち方・待ち時間、その際の子供たちの様子を見回す教師の目、指名した後のさらなる教師の応答と他の子供への配慮やつなぎ等々、この時間のねらいや内容を一人一人が確かに学ぶようにしようとする意図が丸見えのはずである。そして教材研究や板書の工夫を十分に行っているかなど授業の背景が見えてくる。そこに現れ見えるよさや課題を事実で把握し、授業後の指導において「この場面の子供がよかったけど、どんな工夫をしたの?」などと若手教師の考えや工夫のよさを引き出し、その熱意や感性のよさを認め褒めるようにする。課題がある場合は「この場面は気になったのだけど、何が足りなかったのかな?」などと投げかけ、ファシリテーター的関わりで本人自身が考えるようにする。共に学ぶ関わりを大切にする。

 

Profile
寺崎千秋(てらさき・ちあき)
 全国連合小学校長会会長、東京学芸大学教職大学院特任教授等を歴任。現在、一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長、教育新聞論説委員、公立小学校2校の学校運営協議会委員、小中学校の校内研究・研修の講師、教育委員会主催の教員研修講師等を務めている。

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一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長

全国連合小学校長会会長、東京学芸大学教職大学院特任教授等を歴任。現在、一般財団法人教育調査研究所評議員・研究部長、教育新聞論説委員、公立小学校2校の学校運営協議会委員、小中学校の校内研究・研修の講師、教育委員会主催の教員研修講師等を務めている。

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