Q&Aスクール・コンプライアンス
【新刊紹介】『最新 Q&Aスクール・コンプライアンス 120選』(菱村幸彦/著)―学校でもコンプライアンスが問題となるのですか。
トピック教育課題
2020.10.14
『最新 Q&Aスクール・コンプライアンス 120選 ハラスメント、事件・事故、体罰から感染症対策まで』(菱村幸彦/著)がこのほど発売開始されました。管理職だけでなく、現場の先生方も知っておきたい代表的なトラブルの解決策を【QA形式】でわかりやすく法的根拠も交えて解説しています。ここでは本書からポイントになる部分を厳選してご紹介いたします。(編集部)
【Q】
学校でもコンプライアンスが問題となるのですか。
【A】
○法律で定めるコンプライアンス
行政におけるコンプライアンスは、民間企業のそれと大きな違いがあります。それはコンプライアンスが、服務上の義務として、法律で定められていることです。
コンプライアンスは法令遵守を意味しますが、公務員の法令遵守義務は、地方公務員法に規定されています。すなわち、地方公務員法32条は、「職員は、その職務を遂行するに当って、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない」と定めています。
また、前述のように、コンプライアンスは、法令遵守のみならず、倫理的行動をとることを求めていますが、この点について、地方公務員法33条は、「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」と定めています。加えて、平成11年に国家公務員倫理法と国家公務員倫理規程(政令)が定められました。同倫理規程では、①職員は常に公正な職務の執行に当たること、②公私の別を明らかにし、職務や地位を私的利益のために用いないこと、③贈与を受けるなど国民の疑惑や不信を招く行為をしないこと、④公共の利益の増進を目指し、全力を挙げてこれに取り組むことなどが定められています。
この方針は地方公務員にも及んでいます。すなわち、地方公共団体においても、国家公務員倫理法に準じて、条例や規則などで公務員倫理に関する規定が制定されています。これらは公務員のコンプライアンスの重要な内容となっています。
○学校で問われるコンプライアンス
行政におけるコンプライアンスの重要性は、当然、学校にも及びます。思わぬ形で学校のコンプライアンス違反がニュースとなったケースがありました。平成18年に富山県の高校で必修科目の「世界史」を履修させていないことがローカルニュースで取り上げられたところ、あっという間に全国に飛び火して、社会問題になりました。
当時、粉飾決算や耐震設計偽装など世間を欺く「偽装」によるコンプライアンス違反が続いていたこともあって、高校の必修科目の未履修問題も「教育偽装」と呼ばれて批判されました。
教職の倫理性にかんがみ、教職員には一般の公務員に比べて、より高いレベルでコンプライアンスが求められるといえましょう。このため、多くの教育委員会は、教職員に向けた「コンプライアンス・マニュアル」等を作成してその徹底を図っています。
一般に学校でコンプライアンス違反が問われる事例には、次のようなケースがあります。
〔服務上の問題〕
交通違反、贈収賄、わいせつ行為、セクシュアル・ハラスメント、パワーハラスメント、秘密漏えい、違法な兼業、利害関係者からの利益供与、政治的行為など。
〔教育指導上の問題〕
学習指導要領違反、教科書不使用、偏向教材使用、内申書偽造、人権侵害、国旗国歌拒否、著作権侵害、学校事故など。
〔生徒指導上の問題〕
体罰、不当な懲戒、個人情報漏えい、いじめ・不登校・校内暴力への不適切対応など。
本書では、こうした諸問題を取り上げて、学校におけるコンプライアンスの在り方について考察します。