解決!ライブラちゃんのこれって常識?学校のあれこれ

ライブラリ編集部

解決!ライブラちゃんのこれって常識? 学校のあれこれ 会社ではないのにどうして学校「経営」と言うの?[前編]

トピック教育課題

2020.01.31

解決!ライブラちゃんの
これって常識? 学校のあれこれ

会社ではないのにどうして学校「経営」と言うの?[前編]

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.6 2019年10月

ライブラちゃんは、職員室に行くと校長先生が「ガッコウケイエイ」という言葉を何度も口にするのを耳にしました。「ケイエイ」といえば、本屋さんではたいていビジネスの棚にあるようです。テレビでも、「ケイエイ」の話になるとほとんど会社の社長さんが登場します。「なぜ、会社でもないのに『ケイエイ』というんだろう」。ライブラちゃんは、『リーダーズ・ライブラリ』というシリーズ本で、学校経営に詳しい天笠茂・千葉大学特任教授を知り、先生に疑問をぶつけてみることにしました。そこでは、「ガッコウケイエイ」にまつわる、結構深い話を聞くことに......。

学校運営と学校経営の違い

 学校はかつてお上のもとに教育を行う場だったと言えます。教育の目標・計画などが国や教育委員会によって決められ、学校はそれに即して日々の教育活動を行うところでした。そうした姿を学校運営と言っていたわけです。ですから、国や教育委員会が作成する文書には「運営」という言葉が用いられていたと考えられます。一方、校長が自主性・自律性をもって、主体的に目標を策定し、計画をつくって教育活動を行っていく姿を表したのが「経営」となります。ですから、「運営」は行政用語、「経営」は現場用語という見方もできますが、その一方で、決められた方針等に即して学校を動かしていくのか、あるいは自ら目標、計画を策定し、実践におろしていくのか、ということがその違いになるかと思います。

 さらに言えば、運営には「管理」という考えも深く位置付いていると思われます。むしろ、かつての日本の教育システムの中では、管理が重視されてきたきらいもありました。

 その意味で、管理、運営、経営が混在しつつ営まれ、時代の流れの中でその様相を変えながら現在に至っていると言えると思います。

 そして現在では、近代経営の発想から「マネジメント」と表現することが多くなってきました。これはPDCAという計画・実施・評価・改善といったサイクルをもち、人を組織し目的を達成するという考えの広まりによるものでしょう。

 もちろん、経営もマネジメントも、それが無意識に行われてきた面もあります。

 古くは、ピラミッドや古墳の造営なども、マネジメントによるものと言えますし、戦国武将の中にも経営を見ることができます。

 その意味で、管理、運営、経営、マネジメントは意図的・無意図的にしろ、それぞれの時代に混在した形で存在していたと言えるのです

 ただ、今の教育を考える上でポイントとなるのは、経営もマネジメントも自覚的かつ意図的に行っていくことが求められる時代となっているということなのですね。

「学校経営」のルーツは大正時代!?

 管理があり、運営があって、その後、経営という考えが出てきたとも言えますが、実は「学校経営」という言葉は古くからあります。

 それは、大正期にまでさかのぼります。師範学校やその附属学校では、大正時代にすでに、意図的・意識的に「学校経営」という言葉を使うようになります。それは昭和初期に『学校経営新研究』(小林佐源治著、目黒書店、1929年)や『学校経営言論』(北澤種一著、東洋図書、1931年)といった著作が公刊されたことなどに見られます。

 大正自由教育がうたわれたこの時代は、教師中心の授業から子供中心の学びへの転換を目指されましたが、現場の自主性・自律性を求めた学校経営もこの時代を映すものであったかと思われます。

 ただ、この時代には、明治後期からいわれた「学級経営」の方が注目度は大きかったようです。大正元年に当たる1912年には、茨城県女子師範学校附属小学校による『学級経営』(澤正著、弘道館、1912年)が刊行されています。

 この時代は学級経営を束ねたものとして学校経営があったと思われます。つまり、学級経営と学校経営は同義のものとして捉えられており、授業と経営は密接な関係であったのですね。

 これは昭和の時代になっても引き継がれていきました。斎藤喜博や伊藤功一などは、授業論を語れる校長であり、授業をベースにした学校づくりを行った人たちです。

 ただ、こうした流れは、もともと師範学校の文化によってもたらされた部分が強く、一般の学校では、学級経営が中心であり、それを下支えとして管理・運営を行うというのが、多くの姿でありました。その意味で、現在のような学校経営を執り行っていく発想には乏しかった時代と言えるかもしれません。

 次回は、平成の校長の群像を少しひも解きながら、これからの校長のあり方について考えてみたいと思います。

 

Profile
天笠 茂 先生
昭和25年生。筑波大学大学院博士課程単位取得退学。千葉大学教授を経て平成28年より現職。専門は学校経営学、教育経営学など。中央教育審議会をはじめ各種委員等を務める。主著に『学校経営の戦略と手法』など。

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