講座 単元を創る

齊藤一弥

講座 単元を創る[第4回]見方・考え方を働かせた学習活動

授業づくりと評価

2019.11.11

講座 単元を創る
[第4回]見方・考え方を働かせた学習活動

島根県立大学教授
高知県教育委員会事務局学力向上総括専門官
齊藤一弥

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.4 2019年8月

■summary■
単元のゴールと見方・考え方の成長を意識しながら、学習活動を組織していくことが大切である。学習活動における思考・判断・表現の一連のプロセスに、資質・能力の育成を支える見方・考え方が位置付いており、これを基軸に据えて単元を創ることが期待されている。

見方・考え方を働かせた学習活動を描く

 前号までに、単元づくりの出発点が学習指導要領の解釈にあることを確認した。これにより、教科等指導の目的や価値を基盤に据えて、教科書等を有効に活用した単元づくりを進めていくことができるからである。しかし、その一方で、これではこれまでの内容ベイスの単元づくりと何ら変わらないのではないかという疑問の声も聞こえてくる。新教育課程に基づく単元づくりには、これまでのものに加えて何が求められているであろうか。

 今回の改訂では、幼稚園から高等学校までの学びの連続を図るために、目標や内容等の連続性が重視され、見方・考え方の成長と関連させながらグレーデングされた資質・能力が示された。つまり、資質・能力ベイスの単元を創るには、資質・能力を段階的に高めていくための筋道を用意することが必要になる。これまでの連載でも、これからの単元づくりでは見方・考え方を基軸に据えることが大切あることを話題にしたが、その成長過程を意識しながら、いかに三つの柱の資質・能力の育成を目指していくのかが鍵になる。

見方・考え方を働かせた学習活動の具体

 高知県四万十市立中村中学校では、各教科等の見方・考え方を基軸に据えた授業づくりに取り組んでいる。

 社会科の教科会では、地理の学習における見方・考え方を明確にするとともに、「日本の地域的特色と地域区分」を実践するにあたり、次のような資質・能力(【単元ゴール】)の育成を目指して「30年後の自分の生活の様子を考えてみよう」という単元を貫く学習問題を設定した。

【見方・考え方】

・地域がもつ共通点や差異から傾向性を見いだし地域区分して捉えること。

・特定の地域的特色をもつ範囲を一つのまとまりとして、その範囲がもつ働きや他の範囲との関係などを捉えること。

【単元ゴール】

・「自然環境」「人口」「資源・エネルギー」「交通・通信」の4つの項目について、我が国の特色を捉えている。

・4つの項目を関連付けたり、どれか一つを取り上げたりして、自分の考えを表現している。

・資料を基に、将来自分たちが生活していく社会を想像し、これからどうしていかなければならないかを考えていこうとしている。

 そして、4つの分野から日本国内の地域間、また世界と日本との共通性や地域的特殊性などについて多面的かつ多角的に考察することを目指した。地元の自治体が作成した「四万十市総合計画」を踏まえて、自分たちの住んでいる街の30年後の様子を予測するとともに、そこに生じていると予想される課題を見いだし、その解決策を検討しようとした。

 学習活動を構想するに当たっては、単元(全12時間)を3段階に分けて構成し、生徒が常に見方・考え方を働かせて学び進む展開を用意した。

導入:急速に少子高齢化が進む四万十市の現状を人口ピラミッド(2000年、2020年及び2050年)の変化の様子から見つめ、地域の特徴や将来の姿を予測しながら、想定される課題の解決に向けた取組を選択・判断することを目指す。

中盤:4つの項目に関する資料を読み取ったり比較したりすることで、四万十市の特殊性や同様な課題を抱える地域との共通性を見いだし、将来に想定される課題の発見と自分なりの課題解決方法を考える(図1)。

終末:単元を通しての学びを踏まえて、四万十市の空間的位置や他地域との関わりに着目しながら、温暖化等が与える悪影響、超少子高齢化及び急激な過疎化、4Rの推進、交通インフラ整備等といった社会が抱える課題を考察するとともに、自らが生きていくこれからの社会への関わり方を選択及び判断して、対話を通して自分なりの考えをまとめる(図2)。

 このように、それぞれの段階において単元ゴールと見方・考え方の成長を意識しながら、各時間の学習活動を組織していくことが大切である。また、それぞれの学習活動における思考・判断・表現の一連のプロセスに、資質・能力の育成を支える地理的な見方・考え方が位置付いており、これを基軸に据えて単元を創ることが期待されている。

見方・考え方を働かせた学習活動は「新しいことではない」こと

 しかし、その一方で、教科における見方・考え方をどのように捉えたらよいのか、いかに単元づくりと関連させていくのか等については、今後の実践研究によって検討されていく部分が大きい。

 この見方・考え方は決して新しいものではなく、これまでの授業づくりにおいても、教科の本質を追究する実践においても重視されてきたが、内容ベイスの教育課程においてはそれを明確に位置付け、授業で意図的・計画的に指導されてきたとは言い難い。まずは、見方・考え方の主旨理解とともに教科の学習活動にいかに組織していくかが急務である。また、教科によっては「見方・考え方」が指導方法や教材分析、評価の観点等でそれぞれ固有に使用されており、このような従前のものとの差異を確認することなども必要になる。

 教科の本質を確実に学ぶために、見方・考え方を基盤に据えて単元づくりを進めることは不可欠であり、これが教科指導の土台を支えることになる。

[引用・参考文献]
齊藤一弥・高知県教育委員会編著『新教育課程を活かす能力ベイスの授業づくり』ぎょうせい、2019年

 

Profile
島根県立大学教授
高知県教育委員会事務局学力向上総括専門官
齊藤一弥
さいとう・かずや 横浜国立大学大学院修了。横浜市教育委員会首席指導主事、指導部指導主事室長、横浜市立小学校長を経て、29年度より高知県教育委員会事務局学力向上総括専門官、30年10月より現職。文部科学省中央教育審議会教育課程部会算数・数学ワーキンググループ委員。近著に『新教育課程を活かす能力ベイスの授業づくり』。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

特集:働き方で学校を変える~やりがいをつくる職場づくり~

お役立ち

学校教育・実践ライブラリVol.4

2019/08 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

齊藤一弥

齊藤一弥

島根県立大学人間文化学部教授

横浜国立大学大学院修了。横浜市教育委員会首席指導主事、指導部指導主事室長、横浜市立小学校長を経て、29年度より高知県教育委員会事務局学力向上総括専門官、30年10月より現職。文部科学省中央教育審議会教育課程部会算数・数学ワーキンググループ委員。近著に『新教育課程を活かす能力ベイスの授業づくり』。

閉じる