解決!ライブラちゃんのこれって常識?学校のあれこれ

ライブラリ編集部

解決!ライブラちゃんのこれって常識?学校のあれこれ 「単」と「元」が合わさるとどうして「ひとまとまり」になるの?[前編]

トピック教育課題

2019.11.12

解決!ライブラちゃんの
これって常識?学校のあれこれ

「単」と「元」が合わさるとどうして「ひとまとまり」になるの?[前編]

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.4 2019年8月

最近、ライブラちゃんの学校の職員室では、よく「タンゲン」という言葉を聞きます。担任の先生に聞いてみたところ、「単元」といって、勉強のひとまとまりをいうそうです。そこで、ライブラちゃんは疑問がわいてきました。「単」って一つのこと。「元」は元素とか、おおもととかのこと。どちらも小さいのに「単元」となるとひとまとまりって、どういうこと? そこで、教育実践史という何やら堅そうな研究をされている宮城教育大学教授の吉村敏之先生を訪ね、「単元」についていろいろと聞いてみることにしました。

単元はもともと子供の都合でつくられた!?

 なぜ、「単」と「元」でひとまとまりの意味になるのか―。なるほど、面白い質問ですね。虚を突かれました(笑)。次回までに調べておきましょう。

 はい。ともかく、単元という言葉は、英語でユニット(unit)、ドイツ語でアインハイト(Einheit)といって、元々ひとまとまりという意味があります。これを教授理論として初めて提起したのは19世紀ヘルバルト派のチラーであるとされています。その当時は、子供の側からみた学習のまとまり、つまり、子供中心の学習のまとまりが単元と考えられていたのです。その後様々な経緯を経て、日本に入ってきたのは明治30年頃といわれます。

 しかし、当時の日本は富国強兵の時代で、教育も天皇の臣民を育てるという考えがあったことから、単元は子供中心のものではなく、教師が教える単位となっていきました。つまり、教材のひとまとまりが単元と捉えられるようになり、そのために固定化した形式的な授業となっていきます。単元は「教える」システムとして根付いていったのです。今の、「導入・展開・まとめ」という授業の形式はその名残です。

昭和26年学習指導要領(試案)が子供中心の単元を提唱した

 そうした中、戦後の1951(昭和26)年に学習指導要領(試案)が出されます。そこには、単元についての考え方や作り方などが詳しく記され、単元の原点に返る子供中心の考え方が示されました。

 例えば、単元という言葉に対して、「従来意味していたものは(略)教材の一区分」であったとして、「学習者の経験の成長を重んじ、その総合的な発展を目指す」「経験単元」を提唱しています。そして、単元学習の特質について、①児童・生徒の必要・関心・目的・問題などに基づいた意味ある問題解決学習であること、②教師と児童・生徒との協力によって計画が立てられること、③多様な学習活動が行われることなどが示されました。

 昭和26年は、日本が主権を回復した年で、この学習指導要領(試案)は、新国家建設のために、イデオロギーを越えて、様々な知見が結集したものでした。そこに子供中心の学習観が唱えられたことは注目に値しますね。

試案と新学習指導要領は多くの共通点をもっている

 ところで、今回の新学習指導要領は、昭和26年版と符合するところがたくさんあります。

 例えば、「年間計画と週計画」の項目には、年間計画・数週間の計画・1週間の計画の三つについて、「互いに関連をもち、全体として児童生徒の経験の発展を期す」と書かれ、「カリキュラム・マネジメント」に通じる考えが示されています。また、「単元の作り方」では、「児童生徒が自ら、自主的に目的を立て、計画し、実施し、その結果を評価する(略)問題解決の活動」を促進することや、「児童生徒が(略)建設的に協力」することで問題解決をしていくことが述べられ、「アクティブ・ラーニング」による授業づくりを提案しています。「地域社会の人々の影響」では、「教育課程の編成に当たっては、地域社会の人々の教育に対する意見をきいたり(略)地域社会の人々を加える」といった、現在の「社会に開かれた教育課程」が提言されています。

 新学習指導要領に取り組むに当たって、昭和26年版の試案を読み返すことは意義のあることではないでしょうか。

子供の“学びたい”を大切にした単元づくりを

 単元学習は、国語の大村はま先生(故人)が有名ですが、多くの現場では当時新設された社会科を中心に広がっていきました。茨城県境町立静小学校、愛知学芸大学附属春日井小学校などが単元学習に取り組んだ学校として知られます。ここでは、作業室・飼育室・科学実験室・フリースペースなど、子供中心の活動を保証するための学習環境として施設・設備も数多く作られました。子供を中心に、どのような学習活動によって、どのような力を身に付けさせるのかという目標に即して、単元をデザインしていく取組がみられたのです。

 次回は、ご質問の答えと併せて、大村はま先生の実践などに触れてみたいと思います。

 

Profile
吉村敏之 先生
1964年生。東京大学大学院単位取得退学。宮城教育大学教職大学院・教員キャリア研究機構教授。日本の教師の実践史を踏まえ、「深い学び」が成立する授業の原理と方法を研究。編著に『教師として生きるということ』など。

この記事をシェアする

特集:働き方で学校を変える~やりがいをつくる職場づくり~

オススメ

学校教育・実践ライブラリVol.4

2019/08 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

ライブラリ編集部

ライブラリ編集部

閉じる