「平成30年度 国語に関する世論調査」の調査結果発表を受けて ―我が国の読書の現状

トピック教育課題

2019.10.30

 文化庁は2019年10月29日、「平成30年度 国語に関する世論調査」の調査結果を発表した。それを受け、(株)ぎょうせいは調査結果をまとめた『平成30年度 国語に関する世論調査 表記・読書・言葉遣い』を刊行した。ここでは、本書の制作・編集担当者(株式会社ぎょうせい)が日本の読書の現状を考察し、本書について内容の一部とともに紹介する。

「国語に関する世論調査」とは

 「国語に関する世論調査」は、国語施策の立案に資すると共に、国民の国語に対する興味・関心を喚起することを目的として、平成7年度から毎年文化庁が実施しているものである。変化する社会における日本人の国語に対する意識の現状を捉えるため、その年ごとに調査内容を少しずつ変えている。今年は、《国語や言葉への関心、表記の在り方、 読書の在り方、 慣用句等の意味・言い方》をメインテーマに、「国語にどの程度関心があるか」「常用漢字表の存在を知っているか」「1か月に大体何冊くらい本を読むか」「ふだん電子書籍を利用しているか」など表記、読書、言葉遣いについて調査している。

約半数の人は、1か月に1冊も本を読まない

 1か月に読む本の冊数について、「読まない」と答えた人は、全体の47.3%という結果だった。過去の調査結果(平成20、25年度)と比較すると、平成25年度調査では47.5%、平成20年度調査では46.1%とあまり変化は見られない。一方、1か月に読む本の冊数について、「1,2冊」が37.6%、「3,4冊」が8.6%、「5,6冊」と「7冊以上」がそれぞれ3.2%となっており、1か月に1冊以上読むと答えた人の割合は、全体の52.6%であった。

 1か月に本を1冊以上読むと答えた人(全体の52.6%)の読書の仕方については、「その時々の興味や関心に合わせていろいろな本を読む」が42.0%で最も高く、次いで「好きな作家や著者の本を中心に読む」(24.3%)という結果だった。

約6割が「読書量を増やしたい」との意向

 読書量については、「読書量は減っている」と答えた人が67.3%、「読書量はそれほど変わっていない」と答えた人が24.3%、「読書量は増えている」と答えた人が7.1%という結果だった。過去の調査結果(平成20、25年度)と比較すると、「読書量は減っている」と答えた人の割合が、平成25年度調査では65.1.%、平成20年度調査では64.6%と増加傾向にある。
 読書量が減った理由については、「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」が49.4%で最も高く、次いで「視力など健康上の理由」が37.2%、「情報機器(携帯電話,スマートフォン,タブレット端末,パソコン,ゲーム機等)で時間が取られる」が36.5%となっている。過去の調査結果(平成20、25年度)と比較すると、「情報機器(携帯電話,スマートフォン,タブレット端末,パソコン,ゲーム機等)で時間が取られる」が平成20年度調査では14.8%だったのが、平成25年度調査では26.3%となっており、増加傾向にある。
 一方、読書量を増やしたいと思うかという調査項目に対し、「そう思う」と答えた人が28.0%、「ややそう思う」と答えた人が32.4%で、両方を合わせた「そう思う(計)」は60.4%だった。
 様々な理由から読書量は減少傾向にあるが、約6割の人が読書量を増やしたいと思っているという結果となった。

電子書籍利用は8%増(前回比)

 電子書籍の利用は前回(平成25年度調査)に比べて8%ほど伸長する結果となった。
 すなわち、電子書籍の利用について、「よく利用する」と答えた人が8.0%、「たまに利用する」と答えた人が17.2%で、両方を合わせた「利用する(計)」は25.2%という結果となった。一方、「紙の本・雑誌・漫画しか読まない」が38.7%という結果だった。
 過去の調査結果(平成25年度)と比較すると、「よく利用する」「たまに利用する」共に増加し、「利用する(計)」は8ポイント増加している。「紙の本・雑誌・漫画しか読まない」は7ポイント減少している。
 電子書籍を「よく利用する」「たまに利用する」と答えた人(全体の25.2%)に対し、電子書籍(雑誌や漫画も含む。)と紙の本・雑誌・漫画のどちらを利用することが多いかを調査したところ、「紙の本・雑誌・漫画の方が多い」が43.0%と最も高く、「電子書籍の方が多い」が27.8%、「同じくらい」が21.9%、「電子書籍しか読まない」が6.7%となっている。
 過去の調査結果(平成25年度)と比較すると、「紙の本・雑誌・漫画の方が多い」は18ポイント減少している。一方、「電子書籍しか読まない」は4ポイント、「電子書籍の方が多い」は10ポイント、「同じくらい」は4ポイント、それぞれ増加している。

『平成30年度 国語に関する世論調査 表記・読書・言葉遣い』の刊行

 さて、(株)ぎょうせいはこのほど、「平成30年度 国語に関する世論調査」の調査結果をまとめた『平成30年度 国語に関する世論調査 表記・読書・言葉遣い』を刊行した。毎年、テレビ・新聞・ニュースで話題になる世論調査の結果を収録した唯一の書籍である。ここではその一部を紹介し、読書の現状について見てきた。本書では、他にも国語や言葉への関心、表記の在り方、慣用句等の意味・言い方など全ての調査項目と結果を収録している。国語教育に関わる学校教育関係者にとって活用シーンの多い一冊になることだろう。

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国語に関する世論調査(文化庁)の結果を収録した唯一の書籍!

オススメ!

平成30年度 国語に関する世論調査 表記・読書・言葉遣い

2019年10月 発売

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