ユーモア詩でつづる学級歳時記

増田修治

ユーモア詩でつづる学級歳時記[第1回]

特別支援教育・生徒指導

2020.09.16

ユーモア詩でつづる学級歳時記[第1回]

白梅学園大学教授 増田修治

『学校教育・実践ライブラリ』Vol.1 2019年5月

笑顔で子どもを育てる秘訣が満載!子どものココロが見えるユーモア詩の世界 親・保護者・教師のための子ども理解ガイド』(ぎょうせい、2020年9月刊)の著者 増田修治氏が、埼玉県の小学校教諭時代から長年取り組んできた「ユーモア詩」。珠玉の75編と増田氏の的を射たアドバイスは、笑いながら子どもの思い・願い・成長が理解でき、今日からの子育て、保育、教育に生かせること請け合いです。ここでは、『学校教育・実践ライブラリ』(2019-2020年)の連載「ユーモア詩でつづる学級歳時記」をご紹介します。(編集部)

■今月の「ユーモア詩」

ぼくのひみつ
永田 優介(4年)

ぼくは将来、
世界を守る人になりたい。
この前主人公が悪いやつをたおして、
世界を守る映画を見た。
ぼくは、
「かっこいいなぁ。」
と思った。
でもこのことは、
はずかしいからないしょだよ。

■年相応の自己認識も

 「ぼくは......世界を守る人になりたい」。こんな夢は、子ども時代にだれもが見たはずです。私があこがれたスーパーマンたちも「悪いやつをたおして、世界を守る」正義のヒーローでした。あこがれるあまり、小学校の4年生のときに、スーパーマンの真似をして、滑り台のてっぺんから風呂敷のマントをつけて跳んでみたことがあります。もちろん、そのまま落下して、手ひどい目に会いましたけどね。

 こんな正義の味方は、子どもの遊びにしっかり組み込まれています。幼稚園や保育園では、ヒーローやヒロインをイメージした「たたかいごっこ」は、定番です。

 「たたかい」ですから、一人ではできません。身体をぶつけ合う中で、時には泣いたり、泣かしたり、あるいは痛い思いをしたり......。エスカレートしてケガをしないか、と心配した教師や親も少なくないはずです。

 でも子どもはそんな遊びを通して、相手への思いやりや、「ここまでは大丈夫だ」という手加減を学んでいくのです。ヒーローになりきってポーズを決める子どもの姿が頭に浮かびますが、本気で遊ぶからこそ身につくのです。

 優介はヒーロー映画を見た後この詩を書いていますが、よほど気分が高揚していたのでしょう。しかし4年生ともなると、だんだん仮想と現実との差がはっきりしてヒーローも色あせてきます。

 優介が最後に「このことは、はずかしいからないしょだよ」と書いているのは、友達にばれたら幼稚園児みたいで恥ずかしいという年齢相応の自己認識がしっかり育っているからなのだと思うのです。

■学期始めの学級づくり・学級経営のポイント

子どもは日々、ばかばかしいことを考える存在

 4月、子どもたちとの新しい出会いです。子どもだけでなく、教師もドキドキしながら迎える始業式。「どんな子どもたちだろうか?」「今年は、うまくいくだろうか?」などと考えながら、子どもと出会います。

 そして、学級づくりが始まります。ここで気を付けなくてはいけないのは、同じ学年であったとしても、前に通用したことが通用するとは限らないということです。「○年生なんだから、出来て当たり前」というのが通じないし、ますます通じなくなっているのが現状です。

 しかしながら、子どもの本質は変わっていません。子どもは、日々くだらないことやバカバカしいことを探して笑い合う存在だということです。

 私たちは、子どもたちを小さな大人として見てはいけないし、早く大人になることを求めてもいけないのです。子どもには、子どもである時代を存分に楽しむ権利があるのです。

 私たち大人は、気がついたら1か月経っていたとか、いつの間にか12月になっていた、などという経験があるはずです。大人は時間を短く感じることが多いのですが、子どものころは長く感じていたはずです。時間は同じなのに、子どもと大人の時間の感じ方には違いが出るのです。なぜなのでしょうか。

 大人は、それまでの過程で様々な知識と経験を積んでいます。ですから、何か出来事に遭遇しても、過去に得た知識と経験に照らし合わせて、対応することが出来るのです。つまり、出来事に対して、「新しい体験」と感じないのです。そのため、時間の感覚があまり鋭敏ではなくなってしまうのです。

 子どもは、実に多くの出来事がありますし、毎日が新しい出来事の連続なのです。新しい出来事が多いため、情報が多く入ってきて時間の密度が高くなるのです。だからこそ、時間が長く感じられるのです。

 こうした時間の感じ方の違いを、「知覚時間差異」と言います。子どもにとっての初体験の事柄には、時間を長く感じさせる効果があるのです。

 子どもたちは、まだまだたくさんの新しい出来事に遭遇していきます。新しい先生との出会いも、その一つです。子どもの時間感覚が違うからこそ、学校や学級でたくさんの新しい出来事に出会わせてほしいと思います。それこそが、まさに子どもにとって刺激的であり、子どもが子どもらしく成長する力の源になるのです。

 こうした経験をさせていくためには、教師が子ども心を取り戻していく必要があります。自分が子どもだったときの思いを込めて、子どもの行動を見つめてあげてください。子どもがヒーローに憧れる気持ちも大事にしてあげてください。子ども時代をしっかりと生きる時間を確保してあげてほしいと心から思うのです。

 

Profile
増田修治 ますだ・しゅうじ
1980年埼玉大学教育学部卒。子育てや教育にもっとユーモアを!と提唱し、小学校でユーモア詩の実践にチャレンジ。メディアからも注目され、『徹子の部屋』にも出演。著書に『話を聞いてよ。お父さん!比べないでね、お母さん!』『笑って伸ばす子どもの力』(主婦の友社)、『ユーモアいっぱい!小学生の笑える話』(PHP研究所)、『子どもが伸びる!親のユーモア練習帳』(新紀元社)、『「ホンネ」が響き合う教室』(ミネルヴァ書房)他多数。

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白梅学園大学教授

1980年埼玉大学教育学部卒。子育てや教育にもっとユーモアを!と提唱し、小学校でユーモア詩の実践にチャレンジ。メディアからも注目され、『徹子の部屋』にも出演。著書に『話を聞いてよ。お父さん!比べないでね、お母さん!』『笑って伸ばす子どもの力』(主婦の友社)、『ユーモアいっぱい!小学生の笑える話』(PHP研究所)、『子どもが伸びる!親のユーモア練習帳』(新紀元社)、『「ホンネ」が響き合う教室』(ミネルヴァ書房)他多数。

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