特集 「令和」の日本型学校教育に向けた協働的な学び これまでと何が同じで何が異なるか

授業づくりと評価

2021.11.10

特集 令和の「 個別最適な学び・協働的な学び」 〜学びのパラダイムシフト〜
「令和」の日本型学校教育に向けた協働的な学び これまでと何が同じで何が異なるか

国士舘大学教授
澤井陽介

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.2 2021年6月

 令和3年1月に中央教育審議会から「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」が答申(以下、「答申」)された。サブタイトルは「全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現」である。この答申で求められている「協働的な学び」とは、従来から求められている協働的な学び、対話的な学びとどのように異なるのだろうか。本稿では、そこに焦点を絞りつつ、これからの学校教育で求められる学びの方向、その実現のための具体策について考えてみたい。まずは前提としての答申を踏まえる。

答申の背景

 この答申の特徴は、検討過程で日本をコロナ過が襲い、より一層予測困難な時代となったことを背景にして求められる資質・能力が議論されたり、遠隔・オンライン授業の必要性が強調されたりして、それらが盛り込まれていったことである。

 前者については、次代を切り拓く子供たちに求められる資質・能力として、文章の意味を正確に理解する読解力、教科等固有の見方・考え方を働かせて自分の頭で考えて表現する力、対話や協働を通じて知識やアイディアを共有し新しい解や納得解を生み出す力などと表現された。概ね平成29年告示の学習指導要領(以下、「学習指導要領」)の趣旨を踏まえたものである。一方で、後者についてはGIGAスクール構想を背景にした新たなICT環境の下での指導の在り方が表現されている。

個別最適な学び

 新たなICT環境の下での教育の在り方として、あらためて求められているのが、「個に応じた指導」である。「あらためて」としたのは、これまでも学習指導要領で児童生徒や学校の実態に応じ、個別学習やグループ別学習、繰り返し学習、学習内容の習熟の程度に応じた学習、児童生徒の興味・関心等に応じた課題学習、補充的な学習や発展的な学習などを通した個に応じた指導の重視が求められてきたからである。

 この「個に応じた指導」を学習者の視点から整理した概念が「個別最適な学び」である。答申では、この「個別最適な学び」について次の2つの方向を説明している。

(1)指導の個別化

・基礎的・基本的な知識等を確実に習得させるため、ICTの活用や専門性の高い教師による支援が必要な児童生徒へのより重点的な指導などによる効果的な指導

・子供たち一人一人の特性や学習進度等に応じ、指導方法・教材等の柔軟な提供・設定を行うとともに、自らの学習を調整しながら粘り強く取り組む態度を育成

(2)学習の個性化

・基礎的・基本的な知識・技能や情報活用能力等の学習の基盤となる資質・能力等を土台として、専門性の高い教師による個々の子供に応じた学習活動の提供

・自ら学習を調整するなどしながら、その子供ならではの課題の設定、子供自身による情報の収集、整理・分析、まとめ・表現を行う等、主体的に学習を最適化する

 これらの説明からこれまでとの違いを見いだすとすれば、

①「自らの学習を調整」という文言から分かるように、学習評価の観点「主体的に学習に取り組む態度」の趣旨として描かれている学力の育成が求められていること

②それを新たなICT環境の下で効果的に実現することが求められていること
と受け止めることができそうである。

協働的な学び

 個別最適な学びと並び立つ概念としてとして説明され、求められているのが「協働的な学び」である。答申では次のように説明している(関係部分を抜粋)。

○ 「個別最適な学び」が「孤立した学び」に陥らないよう、これまでも「日本型学校教育」において重視されてきた(中略)子供同士で、あるいは地域の方々をはじめ多様な他者と協働しながら、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう(後略)

○ 集団の中で個が埋没してしまうことがないよう(中略)子供一人一人のよい点や可能性を生かすことで、異なる考え方が組み合わさり、よりよい学びを生み出していくようにすることが大切である。

○同じ空間で時間を共にすることで、お互いの感性や考え方等に触れ刺激し合うことの重要性について改めて認識する必要がある。

○教師と子供の関わり合いや子供同士の関わり合い、自分の感覚や行為を通して理解する実習・実験、地域社会での体験活動、専門家との交流など、様々な場面でリアルな体験を通じて学ぶことの重要性が、AI技術が高度に発達するSociety5.0時代にこそ一層高まるものである。

 これらの説明をみると、「協働的な学び」で求められているものは、「主体的・対話的で深い学び」の対話的な学びで求められる交流、相互作用に通じるものであると受け止めることができる。また、答申の概要版で下記のような図が示されているのは、個別最適な学びにおける「個・ICT」と協働的な学びにおける「多様性・交流」の相乗効果を期待しているものと受け止めることができる。


図1

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