特集 「個別最適な学び」を進める指導体制と授業づくり

学校マネジメント

2021.11.15

「個別最適な学び」を実現させる授業づくり

 「個別最適な学び」を実現させるための目的は一人一人もれなく全ての児童生徒の学力向上である。学力の三要素は、3つの内容を一つだけ取り出して育成していくものではない。それぞれを関連させながら、バランスのとれた学力の育成を目指すことが極めて大切である。私の経験では、「主体的に学習に取り組む態度」を計画的に育てていくことが、「基礎的・基本的な知識・技能」の習得や「思考力・判断力・表現力等」の育成の土台となると考えている。「個別最適な学び」を実現させる指導の視点について以下の3点をあげておきたい。

 第1に、「学び方を学ぶ教育プログラム」を作成することである。「学び方を学ぶこと」は全ての学習の基盤となるスキルであり、これからの社会を生きる子供たちに欠かせない能力の一つとも言える。

 「学び方を学ぶこと」は、自分の経験を刷新するための方法を知ることである。変化の激しい時代にあって、自分に合った学び方を追求する姿勢が必要である。

 学び方を学ぶプログラムの内容は

(1)学校での学習・家庭での学習を効率よく進める方法
 ①各教科等の学び方

・授業の受け方、ノートの取り方、教科書の読み方、予習・復習の方法、苦手な教科を克服する方法、得意な教科をさらに伸ばす方法等

 ②効率よく学ぶ方法

・家庭学習を計画的に進める方法、時間の使い方、各種試験勉強の取り組み方、読書習慣の付け方、問題や課題を克服する方法、情報を収集するなどのネット環境を効率よく使い学習に役立てる方法、言語活動の様々なスキルを学習に生かす方法、学習につまずいた場合の解決方法等

(2)素直に学び合える関係づくり
 アクティブ・ラーニングの技法を取り入れた授業を行うためには、児童生徒が相互に学び合える関係が必要となってくる。私の経験では「人間関係づくりの授業プログラム」と、失敗を恐れずに発表や説明ができるようにするために「教室はまちがうところだ。まちがいを恐れてはいけないという意識を育てるプログラム」を作成して取り組んだところ、児童生徒に、相互に学び合うことや、間違って当たり前、間違うことを率直に認めて、それをきちんと分かるようにすることが大切だという意識が育ち、発言や発表が活発になってきた。

 第2に、児童生徒の実態にあった「学力向上プログラム」を作成することである。

(1)目標設定と計画
 目標設定としては、卒業まで、1年間、学期ごと(3〜4か月間)の期限を区切り、それぞれの期間の到達目標を具体的な数値にして表す。計画立案については、卒業時の到達目標から逆算して達成するための細かい計画を作成する。

(2)評価と改善
 分析チームの分析結果を全教職員が共有し、課題を明確にする。その結果、必要に応じて、基礎力診断テストの実施、基礎基本事項の定着の確認、自己評価カードを使った学習の振り返り、学力カルテの作成などより、学力の状況を可視化することである。

 第3に、指導体制の工夫や学習方法・教材の工夫をすることである。

(1)指導体制の工夫
 少人数指導、ティーム・ティーチング、合同授業、小学校高学年での教科担任制などの指導体制を工夫する。また、一人一人の到達状況に応じた個別教材(ドリル等)や学習状況の履歴を記入した学力カルテなどを教職員が共有してデジタルまたは紙媒体で活用できる体制をつくる必要がある。

(2)学習方法・教材の工夫
 授業では、学習単元において達成すべき目標を明らかにし、学力の三要素の達成基準を明確にし、達成状況を形成的に評価し、一人一人の能力や適性に応じた教材選択や教材開発を進めていくことが大切である。今後その主なツールとして期待されるのがICT機器である。GIGAスクール構想により1人1台の端末と高速通信環境の整備をベースとして、Society5.0の時代を生きる子供たちのために「個別最適化され、創造性を育む教育」を実現していくことが期待されている。特に、ICTは主体的・協働的で深い学びを実現するなど、学びを活性化するツールである。例えば、自分の意見と友達の意見を画面上で比較対照しながら思考・分析を深めたり、自分の考えを分かりやすくプレゼンテーションしたりすることが可能となる。また、1人1台端末を持つことで、興味・関心を持ったことをその場で調べて、記録・整理したり、友達と共有・協働したりすることが容易となる。ビッグデータや人工知能の発達により、児童生徒の習熟度が分析・可視化され、それに応じた課題が出されるなど、学びを個々の児童生徒にとって最適化することができる。このことにより、可視化された学習記録データを学校・家庭で共有し、教職員や保護者によるきめ細やかな指導・助言へとつなげることもできる。そして、地理的、身体的、経済的などの様々な障害や困難を抱える児童生徒の学び(学習の個性化)を支援することもできる。

 

Profile
高橋正尚 たかはし・まさなお
 大学卒業後、民間企業を経て千葉市・横浜市で公立小中学校教員を務め、横浜市公立中学校校長、横浜市教育委員会学校教育部首席指導主事を経て、横浜市立南高等学校附属中学校校長。2016年より鎌倉女子大学教授、2019年より初等・中等教育統括部長。2020年より鎌倉女子大学理事。

この記事をシェアする

  • Facebook
  • LINE

特集:令和の「 個別最適な学び・協働的な学び」 〜学びのパラダイムシフト〜

最新号

新教育ライブラリ Premier IIVol.2

2021/6 発売

ご購入はこちら

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツが満載!

ライブラリ・シリーズの次回配本など
いち早く情報をキャッチ!

無料のメルマガ会員募集中