特集 2022年 最強の学校組織をつくろう 大規模校に「推進力」を生み出す組織マネジメント
トピック教育課題
2022.04.25
目次
リーダーを信頼して任せる管理職からの発信
「定例会議」の設定による「迅速な情報共有」を可能にする「仕組み」は、日常の学校運営に活かされ、緊急を要する場面においても、強みを発揮する。
例えば、「コロナ感染症」において児童の陽性が判明し、明日の学校運営に影響を及ぼすような緊急事態にも、安定感ある情報伝達が可能となる。まず、「ライン」で共有し、速やかに各学年主任に伝えるルートを大切にしている。学年主任を放送で招集したり、学年主任の教室へ管理職が走ったりと手法は様々ながら、臨時の「学年主任会」を設け、学年組織を活用して方針を伝達している。休日であっても必要と判断すれば、このルートを活用して周知を図る。学年主任が不在の場合は、副主任が代役を務める。
「迅速な情報共有」は、責任ある立場の者と管理職との信頼関係を構築できる上、学年主任として組織を動かすための「準備」の時間確保につながる。未来を見通せてこそ、仕事を段取ることができ、組織が大きくなればなるほど、そのために時間を要する。各持ち場の「動きやすさ」をイメージしている。
このように「ライン」を尊重しながら、学年主任や副主任を「信頼して任せる」という校長からのアプローチは、「重要な情報を速やかに伝える」という姿勢からも相手に伝わると考えている。
あわせて、週1回(火曜)定例の終礼で、会議室に全教職員が一堂に会する機会を大切にしている。校長から直接メッセージを伝えられると同時に、職員室が異なる教職員同士が顔を合わせる貴重な機会である。その場で、多岐にわたる案件の中から「学校の今」を感じられる最新情報を校長が端的に伝えることを心がけ、学校組織全体でベクトルをそろえている。
「変化に対応できる組織」を動かす温かなコミュニケーション
現在の学校現場は、常に情報が変化していくだけでなく、取り組むべき内容が非常に多い。さらに、コロナ禍においては、決定事項が変更になることも茶飯事である。
このような時代の組織マネジメントとは、「変化に対応できる組織をつくる」ことが何より重要であると痛感している。また、その組織を「信頼」し、最新の情報を速やかに伝えて「任せる」働きかけが、各持ち場にリーダーを中心とした「主体性」を生み出し、組織の活性化につながると実感する。
「GIGAスクール構想」により、児童のみならず教職員の情報伝達の仕方は、大きく様変わりしている。校内でオンライン会議も可能となった。集合することに労力を費やさずに済むよう、職員朝礼も廃止し、各職員室に大型テレビ画面を設置して、スタッフ間の掲示板として活用している。
また、本校は、「思考ツールを活用した授業改善」をテーマにした研究活動を大切にしている。7年間にわたる研究活動は、「授業改善」を軸に教職員のベクトルをそろえ、本校の学校運営を支えている。互いの「授業力」を高め合う「人材育成」が、重要な取組として本校に根付き、学年組織の支援にもつながっている。
このように、「組織を動かす」ために、「方向性」と「役割」を意識した取組を今日も継続し、試行錯誤しながら進んでいる。ただし、いかに「体制」や「仕組み」を整えても、その「組織を動かす」ために何より大切なことは、その場で働く教職員間の「温かなコミュニケーション」であることは、間違いない。本校教職員の児童への温かな関わりと、日々の多大な苦労に、「敬意と感謝を伝える姿勢」を今後も持ち続けたい。
Profile
竹花裕子 たけはな・ゆうこ
京都府木津川市立城山台小学校長。京都教育大学卒。平成3年4月から京都府小学校教諭。京都府山城教育局派遣社会教育主事、京都教育大学特任准教授、京都府山城教育局指導主事等を経て、平成29年4月から城山台小学校教頭、令和2年4月から現職。木津川市及び木津川市教育委員会とともに同校児童急増対策に臨む。