特集 2022年 最強の学校組織をつくろう 予測可能な未来と学校経営戦略

トピック教育課題

2022.04.27

特集 2022年 最強の学校組織をつくろう
第1部 VUCA時代の組織経営
予測可能な未来と学校経営戦略

横浜市立日枝小学校長
住田昌治

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.5 2022年1月

学校がWell-Beingであるためには

 皆さんにとってWell-Being(ウエルビーイング)とはどのようなことでしょうか。「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、全てが満たされた状態」などと訳されます。2030年の社会では、Well-Beingな生活に貢献していくことが、教育のあるべき姿として取り上げられています。また、学校がWell-BeingであるためにはSDGs(持続可能な開発目標)の理念「だれ一人取り残さない」を意識していなければなりません。自分にとって居心地が良くても、他の人にとって居心地が悪いようでは学校がWell-Beingとは言えません。そして、Well-Beingな状態を持続させることも大切です。指示や命令のもとに成り立つ学校では、Well-Beingは長続きしません。

 「学校の持続可能性」は、これまでのような画一的で強制的な教育を脱し、ケアを中心とした教育に変えていくことで実現します。ケアの時代の教育で大切にしたいことは、世代を越えた互いのリスペクトだと思います。

挑戦的なテーマ

 「予測可能な未来と学校経営戦略」とは、何と挑戦的なテーマなのでしょうか。「予測“不可能”な未来」と読み違えてしまいそうです。

 漠然とした不安や違和感、排他的な自己中心主義、対話力の不足、多様性への非寛容な社会が広がってきていると感じることが多い世の中です。また気候変動、生物多様性、持続可能な生産と消費、少子高齢化……山積する問題がもたらす不安は、未来を創る子供たちへの負債となります。持続不可能な社会システムを子供たちに引き継ぐのか? いや、持続可能で明るく豊かな未来を創る子供を育みたいものです。今こそ私たちが目の前の問題に真剣に向き合い、より持続可能な学校へと主体的に変えていかなければ、持続不可能なままの社会を子供たちに担わせることになるのです。

 そうならないためにも、覚えたことをはき出すような「再現の教育」から、自ら考え問題解決する「変容のための教育」への転換が求められます。批判的思考力を高め、すぐに答えを求めることなくゆっくり考え、多様な考えを尊重し合う学校文化に変えていかなければなりません。授業に主体性・多様性が求められているのに、学校そのものが受け身・画一的で変わろうとしないのであれば、益々体質は悪化します。先生が変わらなければ、授業も変わりません。それどころか、主体性のない、疲れ果てた先生を毎日見続けなければならない子供たちは、こんな大人になりたくないと思うでしょう。

子供の目線で考えて

 これまでは“大人の目線からの”未来を創る学校教育について考えてきました。しかし、未来の創造者、持続可能な社会の創り手となる若者や子供の目線で考えたらどうでしょう。私はESDに取り組んできたので、若者の話を聞き、取組を見る機会が多くありました。また、コロナ禍における子供たちの強靭さと成長も見てきました。未来社会の主人公である若者や子供の声に耳を傾けてみることで、希望の兆しも見えてくるかもしれません。

 本校では、今年の運動会も2学年ずつ、3日間にわたって分散で行いました。子供たちは、分散であっても、運動会のできる喜び、保護者に見てもらえる嬉しさを感じながら、楽しい時間を過ごしました。そして全校放送で行った閉会式、5年生代表児童がこのような言葉で締めくくりました。「これまでのような得点争いや応援合戦、順位を競い合うことはありませんでした。しかし、みんなで一つの目標に向かって頑張り、一つの作品を完成させるために、一人一人が自分の頑張りを表現しました。『競い合う運動会』から『協力する運動会』になったと思います。来年も、みんなで協力して楽しい運動会をつくっていきたいと思います」と。いかがでしょうか? 子供たちは気付いているのです。コロナ禍において今までどおりにできない代わりに、協力して一つの目標を実現するという「新しい価値」を生み出したことに。「全校で2000回」を目指した長縄チャレンジ。自分のタブレットのプログラミングアプリによって、運動会で仲間が頑張った姿を廊下や天井に映し出したプロジェクションマッピング。子供たちだけでなく、教職員や来校者、YouTubeで見た保護者も大変な喜びと満足感を得ることができました。

 また、昨年度は、神奈川県SDGs甲子園の実行委員長を務めました。神奈川県内の高校生のSDGsチャレンジ動画には、多くの人を巻き込み、目の前にある課題解決に真剣に取り組む様子が映し出されていました。アイデアを出すだけでなく、行動に移していることも多く、審査員も学ぶことが多かったです。大人は意見を言うばかりで行動を起こすことは少ないのですが、若者は行動を起こし、仲間を増やして行動の輪を広げようとしていました。

 この二つの例からも、子供や若者に学ぶことで未来への希望と期待が持てると思いませんか。このような例は、きっと日本にも海外にもたくさんあるのだと思います。「予測可能な未来」の主役は、次世代を担う若者や子供たちであり、教職員はそのファシリテーターやサポーターに徹することです。

 

 

Profile
住田昌治 すみた・まさはる
 1958年生まれ。玉川大学卒業後、横浜市立小学校に勤務。2010年〜17年度横浜市立永田台小学校長。18年度〜現職。ホールスクールアプローチでESD/SDGsを推進。「円たくん」開発者。ユネスコスクールやESD・SDGsの他、学校組織マネジメント・リーダーシップや働き方等の研修講師や講演を全国各地で行う。元気な学校づくり・自走する教職員集団づくりで知られる。SDGs達成の担い手育成事業アドバイザー、神奈川県ユネスコスクール連絡協議会会長、所沢市ESD調査研究会指導者、全国小中学校環境教育理事、オンラインサロン「エンパワメント」講師他。主な単著『カラフルな学校づくり〜ESD実践と校長マインド〜』(学文社、2019年)、『「任せる」マネジメント』(学陽書房、2020年)。その他、多くの教育雑誌や新聞等で記事掲載。

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