特集 2022年 最強の学校組織をつくろう 大規模校に「推進力」を生み出す組織マネジメント

トピック教育課題

2022.04.25

特集 2022年 最強の学校組織をつくろう
第2部 「令和の日本型学校教育」を実現するこれからの組織マネジメント

私の未来志向型学校経営
大規模校に「推進力」を生み出す組織マネジメント

京都府木津川市立城山台小学校長
竹花裕子

『新教育ライブラリ Premier II』Vol.5 2022年1月

 京都府の最南端に位置する木津川市の新興住宅地に、平成26年4月に開校した本校は、当初69名だった児童数が、8年目の現在約1200名(46学級)にまで急増した。今後も毎年約100〜200名のペースで増え続けると試算されたことから、ピークとなる約5年後の児童数約1800名という規模に、地域や保護者の方々の関心が高まり、安心安全で円滑な学校運営の実現に向けて、市を挙げて取り組んでいる。学校敷地内に新校舎が完成したばかりで、現在は、第2体育館を建設中である。

約100名の「組織を動かす」ために

 開校4年目に教頭として本校に赴任し、3年間の教頭経験を経て、昨年度から校長を拝命した。常勤・非常勤を合わせて約100名という教職員数は、小学校では類を見ない規模である。そのため、「組織を動かす」ことを常に意識していると言っても過言ではない。

 学校という大型船が、「今どこへ向かっているのか」が明確であり、各持ち場が、「役割」をはっきりと自覚できていれば、それぞれが十分に機能を果たし、大きな「推進力」を得て、目的地にたどり着くことができる。

 そのため、校長として明確なビジョンを示し、求められる方向性を教職員に向けて分かりやすく発信できるよう日々心がけている。その上で、「迅速な情報共有」と「役割の明確化」が、「推進力」を生み出すポイントであると考え、この2点を両立できる「仕組み」づくりに取り組んできた。

 本稿では、特異な学校組織の紹介と、その組織に「推進力」を生み出す本校ならではの「仕組み」についてお伝えしたい。

2つの学舎による「GS(Group Synergy グループシナジー)式」組織運営

 児童数の増加に伴う教職員数の増加を受け、組織体制の質的・量的充実が図れるよう市や府からも多大な協力をいただいている。5年後を見据え、本校舎と新校舎の2つを「学舎」と呼び、各学舎が独立した組織運営が行えるよう体制を整えた。令和3年度からスタートしたこの仕組みを「GS(Group Synergy グループシナジー)式教職員組織」と市が命名している。

 2つの学舎名は、「よつば学舎」と「ふたば学舎」。「よつば学舎」は、第1・4・5・6学年の約750名が、「ふたば学舎」は、第2・3学年の約450名が使用している。各学舎の「学年の数」と「葉の枚数」がリンクする覚えやすい名称は、児童の明るい未来や健やかな成長を願って命名された。次年度、さらに「ふたば学舎」を増築して、試算される児童急増に対応していく。


図1 教職員組織体制の質的・量的充実「城山台小GS式教職員組織」

 「GS式教職員組織」とは、グループ同士の「相乗効果」や「協働」を目的とした組織体制を指し、図1がその具体の様子を表している。学年の在籍児童数が約200〜300名(6〜9学級)という大学年団を有する上、特別支援学級も8学級(5種の障害種別)ある本校ならではの、「協働」を目指した方式である。

 その特徴として、学舎を分けることに加えて、「各学年を2グループに分ける」工夫が挙げられる。各グループの「リーダー」を「学年主任」と「副主任」が務め、その立場を担う中核教員2名が、協力しながら学年団をまとめている。「副主任」の役割を明らかにしたのは、7学級の学年団を一人の学年主任に任せていた昨年度の反省を受けた改善点である。

 各学舎を管理し、適切にリードする体制づくりも行っている。管理職(校長・副校長・教頭)と主幹教諭、教務主任2名の計6名を「ライン」と呼び、3名ずつを各学舎に配置して、2つある職員室の体制を整えている。

 また、学舎それぞれに設置した図書室・保健室・配膳室等にも各専門分野の教職員を配置している。

 さらに、学校経営・いじめ生徒指導・学力向上の各領域の専門顧問として3名の大学教授(兵庫教育大学 浅野良一特任教授、佛教大学 原清治教授、関西大学 黒上晴夫教授)にご着任いただき、それぞれ専門的な知見から支援や指導を得られることも教職員の意欲向上につながっている。

整った組織を機能させる「定例会議」

 「GS式」として整った組織の「協働」を機能させるために、「学校組織のリーダー」「学年組織のリーダー」「担任教員で構成する学年組織」のそれぞれに「定例会議」を設定している。学年組織を活用した「迅速な情報共有」と各々の「役割の明確化」が目的であるが、毎年4名程度の初任者を受け入れている本校は、若手教員が非常に多く、学級経営や学習指導、生徒指導、保護者対応等に支援を要する。担任教員の3割以上が経験年数3年未満という実態から、「役割の明確化」だけでは「推進力」の実現は叶わない。そのため、「人材育成」の視点を学校体制で大切にしている。

(1)ライン会議
 「ライン会議」は、前述した学校組織のリーダー計6名で、毎週月曜に定例化している。レジュメは、最新情報を踏まえて校長が作成し、最近では、「コロナ関連」「GIGAスクール構想」「学期末評価」「学校行事」「働き方改革」「第2体育館建設工事」「サポートが必要な学級」等の項目が並ぶ。週ごとに情報を更新し、「学年主任会」のレジュメ案としている。

 各役職からも提案があり、互いの役割を確認し合い、常に課題が共有できている意義は大きい。それぞれの一週間の業務の充実を意図しながら、学舎が分かれても、学校が向かうべきベクトルがそろうよう努めている。

(2)学年主任会・副主任会
 「学年主任会」「副主任会」は、月1回、同時間帯に定例化している。2名の主任の学校運営に参画する意識を高めるとともに、学年組織の活性化を図っている。「ライン」の6名が分散して司会・記録等を務める。

 「学年主任会」は、一般的な「企画会議」を指し、特別支援学級主任、初任者指導教員も参加する。「ライン会議」で検討済みのレジュメを用いて重要事項についてはかる場であり、職員会議前の大切な過程といえる。学年の意見や初任者教員の実態を踏まえた協議が可能な上、学年組織を活用して決定事項の伝達も速やかに行える。

 「副主任会」は、学年の実態を交流する場としている。この役割が、副主任は学年主任をサポートするだけでなく、生徒指導の責任ある立場として、学年全体を捉えたり、支えたりする姿につながっている。

 なお、「学年主任会」「副主任会」の存在が、学年間の「縦の連携」を図る定期的な場となり、学校全体のベクトルをそろえるために功を奏している。今後は、「主任の在り方」についても交流できる場としていきたい。

(3)学年会
 「学年会」は、基本毎週月曜に定例化され、学年主任を中心に学級間の歩調を合わせる重要な場である。週指導案の確認や各教科担当教員からの授業の提案、行事に向けた打合せなど、案件は多岐にわたり、学級数の多さからも時間を要する。

 「情報共有」といえども、経験が浅い教員は、もらった情報を「実践に移す力」が十分でなく、「かみ砕いて丁寧に伝える支援」や、「指導方法を具体的に伝える支援」が必要となる。学年主任・副主任を中心に、学年全体で相談しやすい雰囲気をつくり出し、心身をサポートする様子もうかがえ感謝しかない。学年組織による「人材育成」は、本校の「協働」を支える大切な「仕組み」である。

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