AI時代「教師」考 [第2回]「オンライン教育」が、「教師」の役割を変える!

トピック教育課題

2021.11.24

「オンライン」によって、「教育」が変わる!

 現在、大学などの高等教育機関において実施されている「オンライン教育」が小中高等学校における普段の授業にまで普及したならば、「学校」や「教師」の役割を根本的に考え直す必要が生じてくるだろう。

 まず、これまでMOOCにおいて試みられてきたように(サンノゼ大学の「反転授業(反転学習)」のように)、他の教育機関が作成した「オンデマンド授業」のコンテンツやNHKなどがネットで配信しているコンテンツ5を教育現場で活用することになれば、教師の役割は「知識を教える」という役割から「個々の子どもたちの学習をサポートする」という役割に大きくシフトすることになる(渡部 2021刊行予定参照)。例えば、『NHK for School』では10分(あるいはその前後)の様々な動画(国語、算数・数学、理科、社会、英語など)が多数ネット上に用意されており、YouTubeなどで面白い数分の動画に慣れている子どもたちにとっては効果的な学習教材になるだろう(参照)。


図 『NHK for School』の「ばんぐみ一覧」5

5 ネットで配信されているコンテンツの例「NHK for School」
https://www.nhk.or.jp/school/(最終閲覧日2021年3月11日)
「テンミニッツTV」
https://10mtv.jp/(最終閲覧日2021年3月11日)

 私たちを取り巻く社会に目を向ければ、コロナ禍の中で企業では「テレワーク」や「オンライン会議」が一般的になりつつある。そして、それを契機にして「働き方改革」が叫ばれ「新しい生活スタイル」に関する議論が広まっている。そのポイントは、『「集団(会社や学校)」から「個」へ』である。今後、コロナ禍が続くにせよ(withコロナ)、ある程度は収まるにせよ(afterコロナ)、どちらにしても時代の大きな流れは会社や学校という「集団」から「私(個)の働き方」や「私(個)の学び方」への関心という流れになるだろう。そして、「学校教育」というシステムや「教師」の役割自体に対する考え直しが求められることになる。

 さらに、生まれたときからすでにスマートフォン(常にネットにつながっている端末)が身体の一部になっている今の子どもたちにとってはもはや、「オンライン教育」を受けることに対しては何の抵抗もない。そして逆に、不登校になる可能性を持つ子どもたちにとっては、はるかに「自分に合った学びのスタイル」であると感じるだろう。つまり今後「オンライン教育」は、誰もがもし望むのであれば自由に選択することができる学習スタイルになるのである。

 「オンライン教育」が急速に教育現場に普及しようとしている今、「教師」の役割に関する再検討が強く求められている。

 

[引用・参考文献]
・金成隆一『ルポMOOC革命─無料オンライン授業の衝撃─』岩波書店、2013年
・渡部信一『超デジタル時代の「学び」─よいかげんな知の復権をめざして─』新曜社、2012年
・渡部信一『AI×データ時代の「教育」戦略』大修館書店、2021年7月刊行予定

 

Profile
渡部 信一 わたべ・しんいち
 1957年、仙台市生まれ。東北大学大学院教育学研究科博士課程前期修了。博士(教育学)。福岡教育大学助教授、東北大学大学院教育情報学研究部教授及び同研究部長・教育部長(5期・10年)などを経て、現在、東北大学大学院教育学研究科教授。主な著書に『鉄腕アトムと晋平君─ロボット研究の進化と自閉症児の発達─』『ロボット化する子どもたち─「学び」の認知科学─』『AIに負けない「教育」』などがある。

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